新しい顔たちが台頭した年、第2回KHAは群雄割拠の2018年シーンを総括した。
新人からベテランまで、世代を超えた活躍が評価された授賞式となったことで、韓国ヒップホップシーンの層の厚さが改めて世に示された。
2018年の韓国ヒップホップシーンは、前年からの盛り上がりをさらに加速させた時期だ。
SMTM7の放送が多くの新顔をシーンに送り込み、既存のアーティストたちも負けじと質の高い作品をリリースし続けた。
DPR LIVEのような、MVのビジュアルから音楽まで一貫したコンセプトを持つアーティストが国際的な注目を集め始めたのも2018年のことだ。
ストリーミング再生数がアーティストの知名度を計る重要な指標として定着し、音楽の作り方や届け方が変わり始めた年でもあった。
この年のKHAで特筆すべきは、Jay Parkが2年連続でアーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞したことと、GroovyRoomが同じくプロデューサー賞を連覇したことだろう。
また部門数が多く、それぞれの部門で異なるアーティストが評価されたことは、シーンの幅の広さを証明していた。
継続的な活動の質の高さが改めて証明された一方で、Legit GoonsやDPR LIVEといった新勢力が受賞台に立つことで、シーンの層の厚さも浮き彫りになった。
- 目次
- 受賞結果
- 今年のヒップホップアルバム:리짓군즈「Junk Drunk Love」
- 今年のヒップホップトラック:우원재ウ・ウォンジェ「我 (We Are)」
- 新人賞:DPR LIVE
- 今年のR&Bアルバム:Hippy was Gipsy「Tree」
- 今年のR&Bトラック:offonoff「gold」
- 今年のコラボレーション:Samuel Seo & Isle Qim「Mango」
- 今年のアーティスト:박재범パク・ジェボム (Jay Park) 2年連続受賞
- 今年のプロデューサー:그루비룸グルビルム (GroovyRoom) 2年連続
- 2018年を彩った注目アーティストたち
- 2018年のシーン総括
- 2018年のシーンを支えた人々
- 第2回KHAが示したシーンの連続性と変化
- マルのひとこと
目次
- 受賞結果
- 今年のヒップホップアルバム:리짓군즈「Junk Drunk Love」
- 今年のヒップホップトラック:우원재「我 (We Are)」
- 新人賞:DPR LIVE
- 今年のR&Bアルバム:Hippy was Gipsy「Tree」
- 今年のR&Bトラック:offonoff「gold」
- 今年のコラボレーション:Samuel Seo & Isle Qim「Mango」
- 今年のアーティスト:박재범 (Jay Park) 2年連続受賞
- 今年のプロデューサー:그루비룸 (GroovyRoom) 2年連続
- 2018年を彩った注目アーティストたち
- 2018年のシーン総括
- 2018年のシーンを支えた人々
- 第2回KHAが示したシーンの連続性と変化
- マルのひとこと
受賞結果
| 部門 | 受賞作品 / アーティスト |
|---|---|
| 올해의 아티스트/今年のアーティスト | 박재범 / Jay Park |
| 올해의 힙합 앨범/今年のヒップホップアルバム | Junk Drunk Love / 리짓군즈/Legit Goons |
| 올해의 힙합 트랙/今年のヒップホップトラック | 我 (We Are) / 우원재/Woo Won Jae |
| 신인상/新人賞 | DPR LIVE |
| 올해의 R&B 앨범 | Tree / Hippy was Gipsy |
| 올해의 R&B 트랙 | gold / offonoff |
| 올해의 프로듀서/今年のプロデューサー | 그루비룸/GroovyRoom |
| 올해의 콜라보레이션/今年のコラボレーション | Mango / Samuel Seo & Isle Qim |
今年のヒップホップアルバム:리짓군즈「Junk Drunk Love」
리짓군즈(Legit Goons)は、더 콰이엇(The Quiett)、Dok2、Lil Boi、Reddyの4人からなるクルーだ。
ILLIONAIRE RECORDSを中心とした面々が集い、それぞれのソロキャリアを持ちながらクルー名義でアルバムを制作するというスタイルは、韓国ヒップホップのクルー文化の成熟を示していた。
「Junk Drunk Love」は、タイトルが示す通りガラクタに酔いしれるような享楽的なムードを持ちながら、4人それぞれのスタイルが衝突することなく融合した稀有なアルバムだ。
The Quiettのクールな存在感、Dok2の誇示するスタイル、Lil Boiの器用なフロウ、Reddyの鋭い言葉が一枚に収まり、バラバラな個性が相乗効果を生み出している。
クルー名義でありながら全体に統一感があり、プロデューサーチームとの連携も含めて「集団制作」のレベルを一段引き上げた作品として評価された。
アルバムリリース後には各メンバーがSNSで積極的にプロモーションを行い、ファンとのコミュニケーションを大切にする姿勢も好感を呼んだ。
クルーとしての連帯感と個人としての自立が両立した「Junk Drunk Love」は、2018年を代表するヒップホップアルバムとして記憶されている。
今年のヒップホップトラック:우원재ウ・ウォンジェ「我 (We Are)」
우원재(Woo Won Jae)はSMTM6への出演で一躍シーンの注目を集めた若手ラッパーだ。
番組を通じて披露したリリックの鋭さと独自のフロウスタイルはシーンに強烈なインパクトを残し、SMTM終了後も精力的な活動を続けた。
「我 (We Are)」は中国語のタイトルが印象的で、世代や出自を超えた連帯感と、自分たちの時代を切り拓くという意思が込められた一曲だ。
トラックの中では若い世代が感じる閉塞感と、それでも前に進もうとするエネルギーが交差しており、多くのリスナーが自分の感情を重ねた。
SMTMで注目を集めたラッパーがアワードのトラック部門で評価されるというのは、地上波番組とアンダーグラウンドの評価が交差した象徴的な受賞でもあった。
この曲はSMTMを出口として地下シーンへの関心を持ち始めた多くのリスナーにとって、入門的な一曲ともなった。
新人賞:DPR LIVE
DPR LIVEはDream Perfect Regimeというクリエイティブ集団のフロントマンとして、2017年にデビューEP「Coming To You Live」を発表した。
Jay Park、DEAN、Crushら豪華フィーチャリング陣を迎えたそのEPは、韓国内外から注目を集め、2018年のKHAで新人賞を受賞するに至った。
洗練されたビジュアルと音楽が一体となったアーティシズムが評価されての受賞だ。
DPR LIVEが特異だったのは、音楽だけでなくMVやアートワークのクオリティにまで徹底してこだわる姿勢だ。
韓国産の音楽であることを感じさせないグローバルな感覚と、それでも韓国語で語られる感情の真実性が共存している。
デビュー作から完成されたビジョンを持つアーティストの登場は、シーンに新鮮な衝撃を与えた。
その後もDPR LIVEは継続的に質の高い作品を発表し続け、韓国を代表するアーティストの一人へと成長していく。
今年のR&Bアルバム:Hippy was Gipsy「Tree」
Hippy was Gipsyは、韓国オルタナティブR&Bシーンの中でも特に個性的な存在感を放つアーティストだ。
「Tree」はそのタイトル通り、根を張るような深みと枝葉を広げるような多様性を持ったアルバムで、R&B/ソウルの文脈でも独自の立ち位置を確立した。
商業的な成功よりも音楽的な実験を優先する姿勢は、KHAの批評的選考と相性が良く、満場一致に近い評価を得た。
DEANやCrushらとは異なる方向性で、よりソウルフルで内省的なR&Bを体現した「Tree」は、シーンの幅の広さを示す一枚だ。
当時の韓国R&Bが単なるポップ寄りの甘いサウンドに収まらない多様な表現を持っていたことを証明し、後進のアーティストたちにも影響を与えている。
Hippy was Gipsyは、アーティスト名からすでに従来の韓国音楽の枠に収まらない姿勢を感じさせる。
「Tree」に収録された楽曲たちは、自然や生命といった普遍的なテーマを現代的な音楽語法で表現しており、一度聴いただけでは全体像がつかみきれないほどの奥行きを持っていた。
こうした作品が批評的に評価される環境が韓国に生まれていたことは、シーンの知的成熟を示している。
今年のR&Bトラック:offonoff「gold」
offonoffはChancellor(보이프렌드/Boyfriend)とOliveからなるR&Bデュオで、その薄暗くセクシーなサウンドは韓国オルタナR&Bの一つの極点を示している。
2017年のDEANに続き、R&Bトラック賞を受賞した「gold」は、退廃的な美しさと中毒性の高いメロディが組み合わさった作品だ。
「gold」が持つ独特の質感は、打ち込みのビートと生楽器のような温もりが絶妙に混在しており、単純なジャンル分けを拒む。
offonoffはDEAN周辺のシーンと重なりながら独自の世界観を維持しており、この受賞によって「チームDEAN」とも言うべき韓国オルタナR&Bムーブメントの存在感が改めて確認された。
今年のコラボレーション:Samuel Seo & Isle Qim「Mango」
Samuel Seo(サミュエル・ソ)はソウルフルなシンガーとして韓国R&B/ゴスペルシーンで独自の地位を持つアーティストだ。
Isle Qimとのコラボ曲「Mango」は、甘くトロピカルな雰囲気とメロウなR&Bの質感が融合した、聴くだけで夏の空気を感じさせる一曲だ。
お互いの個性を引き出し合う化学反応がコラボレーション賞に相応しいと評価された。
Samuel SeoとIsle Qimという、主流から少し外れた位置にいるアーティスト同士の組み合わせが生み出した「Mango」は、ヒップホップシーンとR&Bシーンの垣根を超えたコラボレーションの可能性を示した。
コラボ賞の選考においても、話題性だけでなく音楽的な質が優先されるというKHAの姿勢がここにも表れていた。
今年のアーティスト:박재범パク・ジェボム (Jay Park) 2年連続受賞
Jay Parkは2018年もAOMGとH1GHR MUSICを率いて精力的に活動し、2年連続でアーティスト賞を受賞した。
レーベルオーナーとして多くのアーティストを輩出しながら、自身のパフォーマンスでもトップに立ち続けた。
2018年にはH1GHR MUSICからHaonやWooseokといった新人を次々とデビューさせ、次世代の育成にも積極的に動いた年だった。
ラッパーとしてのJay Parkはアンダーグラウンド的な誠実さを持ちながら、メインストリームでの成功も同時に掴む稀有な存在だ。
2年連続でアーティスト賞を受賞したことは、単純な人気や話題性だけでなく、シーンへの貢献度という総合的な評価がそこに込められていた。
AOMGとH1GHR MUSICという二つのレーベルを経営しながら自身も第一線のアーティストであり続けることは、並大抵の努力では不可能だ。
Jay Parkはその両立を体現することで、後進のアーティストたちに「独立しながらも第一線で活躍できる」という可能性を示し続けた。
2018年のKHAにおける2年連続受賞は、その積み重ねに対する評価でもあった。
今年のプロデューサー:그루비룸グルビルム (GroovyRoom) 2年連続
GroovyRoomが2年連続でプロデューサー賞を受賞したことは、この時期の韓国ヒップホップにおけるビートメイカーの役割の重要性を改めて示した。
ラッパーやシンガーが表舞台に立つ一方で、その背後でサウンドを作り上げるプロデューサーへの注目が高まっていたのがこの時代の特徴だ。
GroovyRoomの二人が音楽的な連携を保ちながら複数のアーティストとコラボレーションし続けた2018年の実績は、プロデューサー賞連覇という形で正当に評価された。
GroovyRoomのサウンドが多くのアーティストに支持された理由の一つは、汎用性の高さにある。
トラップ、R&B、ポップ、オルタナティブと、様々なジャンルのアーティストのニーズに応えるビートを制作できる幅広さが、この時期の韓国音楽シーン全体での需要を生んだ。
プロデューサーとして一定のスタイルを持ちながらも柔軟に変化できる点が、GroovyRoomの長期にわたる活躍の秘訣とも言える。
2018年を彩った注目アーティストたち
受賞者以外にも、2018年のシーンには注目すべきアーティストたちが多数いた。
빈지노(Beenzino)は2018年も独自のスタイルで活動を続け、韓国ヒップホップの先達としての存在感を示した。
SMTM7からは쿠기(Coogie)や머쉬베놈(Mushvenom)といった新顔も登場し、シーンの新陳代謝が続いていた。
また2018年は、韓国ヒップホップの女性アーティストたちの活躍も注目された時期だ。
女性ラッパーの存在感がじわじわと増し始め、男性主体だったシーンに新しい声が加わっていた。
この流れは翌年以降にさらに加速し、韓国ヒップホップの多様性をより豊かなものにしていくことになる。
ストリーミングプラットフォームの普及も2018年のシーンを語る上で欠かせない要素だ。
Melon、Bugs、Genie、Spotifyといったプラットフォームが浸透し、アルバムやシングルのリリース戦略に変化をもたらした。
より多くのリスナーがより多くの音楽にアクセスできる環境が整い、マイナーなアーティストでも優れた作品を作れば全国規模で聴いてもらえる可能性が生まれた。
2018年のシーン総括
2018年の韓国ヒップホップはSMTM7の放送とともに、前年からの盛り上がりをさらに加速させた時期だ。
DPR LIVEのような国際的な視点を持つ新人の台頭や、Hippy Was GipsyといったR&B/ソウルシーンの新鋭アーティストの活躍が目立ち、シーンの多様化は引き続き進んだ。
리짓군즈のような既存クルーが新作で質の高さを証明しながら、次世代への扉を開いた年でもある。
第2回KHAは世代交代の兆しをはらみつつ、前年からの連続性を示す受賞結果となった。
Jay ParkとGroovyRoomという「継続する実力者」がそれぞれの部門で連覇する一方で、DPR LIVEや우원재という新顔が各部門で受賞し、新旧の交代が進んでいることを数字で示した。
オルタナR&Bとヒップホップの融合が着々と進み、韓国の音楽シーン全体に影響を与えるほどの存在感を持つようになった時期でもある。
2018年のシーンで特に印象的だったのは、アーティストたちが個人の表現を深めながらも互いにコラボレーションするという文化が定着してきたことだ。
Samuel SeoとIsle Qimのコラボ曲「Mango」がコラボ賞を受賞したことはその象徴で、大きなレーベルバックのない組み合わせでも最高の評価を得られることをシーンに証明した。
コラボレーション文化の成熟は、翌2019年の염따を中心とした「아마두」のような大型コラボへと発展していく。
振り返ってみると、2018年は韓国ヒップホップが「好きな人が聴くもの」から「誰でも知っている文化」へと変容していく過渡期の、最後の豊かさを持った年だった。
その後のK-POPグローバル化とヒップホップの融合、SNSの普及によるシーンの変化を前に、2018年の韓国ヒップホップはある意味で「最も豊かな時代」の一つを形成していた。
第2回KHAはその瞬間を克明に記録した証言として、今も色褪せることなく価値を持っている。
韓国ヒップホップの成熟を語る上で欠かせないのが、アーティストと批評家と一般リスナーの三者間の対話だ。
2018年はSNSの普及によってこの三者の距離がさらに縮まり、音楽の評価がよりリアルタイムで更新される環境が整ってきた年でもある。
KHAがこうした変化するシーンの中でも権威を保てたのは、選考過程への信頼と、毎年更新される受賞結果が実際のシーンの動向を正確に反映していたからだろう。
第2回KHAの8部門にわたる受賞結果は、ヒップホップとR&Bの両輪でシーンを動かした2018年を後世に伝える、大切な記録として今も価値を持ち続けている。
2018年のシーンを支えた人々
受賞者以外にも、2018年の韓国ヒップホップシーンを支えた重要な人物たちがいた。
ILLIONAIRE Recordsの닥투(Dok2)は2018年も旺盛な活動を続け、シーンのベテランとしての存在感を示した。
Hi-Lite Recordsからは複数のアーティストがリリースを重ね、独立系レーベルの充実がシーン全体に好影響を与えた。
SMTM7では新たなラッパーたちがシーンに参入し、視聴者層がさらに広がった年でもある。
番組を通じて韓国ヒップホップを知った新しいリスナーたちが、そこから deeper な探求を始めるというパターンが定着し、アンダーグラウンドシーンの聴衆層が厚くなっていった。
この流れはKHAの受賞結果に反映される「評価される音楽」の多様化にも貢献した。
2018年はまた、韓国ヒップホップのグローバルな広がりが意識され始めた年でもある。
DPR LIVEのような英語圏の感性を持つアーティストや、DEANやCrushが海外フェスティバルに出演するケースが増え、K-POPブームの陰で韓国ヒップホップも世界中のリスナーにリーチしていることが明らかになってきた。
KHAはあくまで韓国国内での評価を基準とするアワードだが、その選考結果が日本を含む海外でも注目される存在になっていった。
第2回KHAが示したシーンの連続性と変化
Jay ParkとGroovyRoomの連続受賞という結果は、第2回KHAが単なる一回限りのイベントではなく、年を追うごとに蓄積されていく評価の歴史として機能し始めていることを示した。
前年の受賞者が翌年も同じ水準を維持することで受賞を重ねるか、あるいは新たなアーティストに主役の座を譲るかという物語が、毎年のKHAを追う楽しみの一つになっていった。
第2回KHAでは第1回と同様、ヒップホップとR&Bの両部門が設けられ、シーンの多様性を公式に認める姿勢が維持された。
GroovyRoomのプロデューサー連覇は、一人のビートメイカーが複数のジャンルとアーティストに対応できる汎用性を持っている場合に、その功績がどれほど大きなものになるかを示している。
ヒップホップとR&Bの垣根を超えて活躍するプロデューサーへの評価は、KHAが音楽の全体像を見渡した賞であることの証だ。
2018年という年は、後から振り返ってみると韓国ヒップホップの「黄金期の助走」とも言える時期だった。
翌2019年には염따の2冠やChangmoのブレイクが起き、さらにその翌年には新型コロナウイルスの影響でシーンのあり方が大きく変わることになるが、2018年のシーンにはまだ変化前夜の豊かさがあった。
第2回KHAの受賞結果はその瞬間の豊かさを切り取った記録として、改めて価値を持っている。
マルのひとこと
DPR LIVEの新人賞は、音楽とビジュアルが一体になったアーティストが評価される時代の幕開けを感じさせた。
聴くだけじゃなくて「見る音楽」として韓国ヒップホップを楽しむスタイルが広がっていく予感を、この年の受賞結果はしっかり捉えていたと思う。
Legit Goonsの「Junk Drunk Love」は今でも聴き返すほど好きなアルバムで、あの4人が揃ったときの化学反応は本当に特別だった。



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