Hash Swanと僕。 해쉬스완과 나

韓国ヒップホップシーンに、独自の世界観と繊細な感性で静かに、しかし確実に存在感を刻み込んできたラッパーがいる。
해쉬스완ヘシュスワン 、日本語表記でHash Swan。
本名ハン・ドクグァン (한덕광ハン・ドクグァン)。
1995年3月12日生まれのソウル出身で、現在はIllionaire Records傘下のAmbition Musikに所属するラッパーだ。

高校1年の頃からヒップホップに傾倒し、2年の時には韓国ヒップホップ界のレジェンド的存在であるBILL STACKSからレッスンを受けるほど、早い段階から本気でこの道を歩んでいた。
その後、Show Me The Money 5への出演を経て2016年10月にAmbition Musikと契約。
以来、「Hash X Kash」「Shangri-La」「Alexandrite」「Peridot」という4枚のEPと、2020年の初フルアルバム「Silence of the REM」を発表し、韓国アンダーグラウンドヒップホップシーンを代表するアーティストの一人として確固たる地位を築いてきた。

ZicoやDeanとのコラボレーション「요즘것들ヨジュムゴットゥル (Yozm Gang)」が韓国チャートで5位を記録するなど、メインストリームでの実績も持ちながら、徹底的に自分のスタイルを貫くその姿勢は多くのヒップホップファンから支持されている。
身長158cmという小柄な体から繰り出すラップは、繊細さと力強さを兼ね備え、聴く者の心に深く響く。
本記事では、Hash Swanの生い立ちから音楽スタイル、ディスコグラフィーに至るまで、その全貌を詳しく紹介する。


目次
1. アーティスト概要
2. 主要ディスコグラフィー
3. 経歴 – ヒップホップとの出会いからAmbition Musik入りまで
4. Show Me The Moneyという転機
5. 音楽スタイルと世界観
6. 主要コラボレーション
7. Ambition Musikとクルー活動
8. マルのひとこと


アーティスト概要

項目内容
アーティスト名Hash Swan (해쉬스완ヘシュスワン)
本名한덕광ハン・ドクグァン (ハン・ドクグァン)
生年月日1995年3月12日
出身地韓国・京畿道金浦市
身長158 cm
血液型B型
MBTIINFP
所属事務所Ambition Musik (Illionaire Records傘下)
所属クルーHolmes、Wayside Town
学歴김포제일고등학교キンポ第一高等学校卒業、상명대학교サンミョン大学校 경영학과キョンヨンハクカ卒業
活動期間2016年~現在
ジャンルヒップホップ、R&B
兵役社会服務要員として服務 (2022年7月21日除隊)

主要ディスコグラフィー

タイトル種類発売年備考
Hash X KashEP2016年2016年9月28日発売、デビューEP
Shangri-LaEP2017年Ambition Musik移籍後初EP
AlexandriteEP2018年韓国チャート38位
PeridotEP2019年–
Silence of the REM正規アルバム2020年初フルアルバム
Ayシングル2016年–
MA$HIMAROシングル2017年–
No Switchin’ Sides (협곡ヒョプコク)シングル2017年–
What Time Is It Now?シングル2018年–
손바닥ソンバダク 위ウィシングル2018年–
스도쿠スドクシングル2019年–
요즘것들ヨジュムゴットゥル (Yozm Gang)コラボシングル2017年Zico、Dean参加、韓国チャート5位
도깨비トッケビ (Dokkaebi)コラボシングル2016年Flowsik、Boi B、₩uNo参加、チャート25位
Moderatoコラボシングル–MAMAMOOのWheeinとのコラボ

経歴 – ヒップホップとの出会いからAmbition Musik入りまで

Hash Swanがヒップホップと出会ったのは高校1年のことだった。
韓国の若者がヒップホップにのめり込む年齢として決して珍しくはないが、彼の場合はその熱量が普通ではなかった。
高校2年になると、韓国ヒップホップシーンで長きにわたり活躍するBILL STACKSに師事し、本格的にラップを学び始めた。
この早い段階での本格的なトレーニングが、後の彼のラップスタイルの基盤を形成したと言えるだろう。

高校は김포제일고등학교キンポ第一高等学校 (キンポ第一高等学校)を卒業後、상명대학교サンミョン大学校 (상명サンミョン大学校)の経営学科に進学した。
音楽活動と大学生活を両立しながら、着実にスキルとキャリアを積み上げていった彼は、2016年のShow Me The Money 5への出演で大きな転機を迎えることになる。
番組への出演は単なるチャンスではなく、Hash Swanが自分の実力を広く世に示す舞台となった。

2016年10月、Hash SwanはIllionaire Records傘下のレーベル、Ambition Musikとの契約を締結した。
Illionaire Recordsといえば、The Quiett、Dok2という韓国ヒップホップを代表するアーティストが設立した、韓国で最も影響力のあるヒップホップレーベルの一つだ。
その傘下レーベルへの加入は、Hash Swanのキャリアにとって大きな意味を持つ出来事だった。
同年9月28日にはデビューEP「Hash X Kash」を発表し、アーティストとしての本格的な歩みをスタートさせた。

「Hash X Kash」は彼のアーティスト名と「キャッシュ (現金)」を掛け合わせたタイトルで、韓国ヒップホップシーンに蔓延する拝金主義的な価値観への皮肉とも、自分自身の野望の宣言とも取れる複層的なメッセージが込められている。
このデビュー作から、Hash Swanが単なる「ヒップホップが好きな若者」ではなく、言葉を武器として使いこなすラッパーであることが明らかになった。

Ambition Musik加入後は、Changmo、Ash Island、Leellamarzといったレーベルメイトや、シーンで活躍する多くのアーティストとの交流を深めながら、着実に自分の音楽世界を広げていった。
2018年には、大学経営学科を卒業。
アーティストとしての活動に専念できる環境が整い、その後の充実したディスコグラフィーへとつながっていく。

Show Me The Moneyという転機

韓国ヒップホップシーンにおいて、Mnetのラップサバイバル番組Show Me The Moneyは単なるバラエティ番組ではない。
多くのアーティストにとって、全国の視聴者に自分の実力を示す絶好の機会であり、番組での活躍がそのままキャリアの転換点となってきた。
Hash Swanも例外ではなく、この番組を通じて大きな注目を集めることになった。

2016年、Hash SwanはShow Me The Money第5シーズンに出演した。
番組内では、後にシーンを代表するラッパーとなるJUNO FLOを下すなど実力を見せつけた場面もあったが、チーム選択の過程で脱落することになった。
しかし、番組での活躍は確実に彼の名前を韓国ヒップホップファンの間に広めるきっかけとなった。
この経験が直接のきっかけとなったかどうかは定かではないが、同年10月にはAmbition Musikとの契約を締結しており、タイミング的に無関係とは言えないだろう。

翌2017年には、Show Me The Money第6シーズンにも挑戦した。
このシーズンで彼は、音源ミッション曲「요즘것들ヨジュムゴットゥル (ヨジュムゴットゥル、最近のもの/最近の連中)」に参加し、その才能を改めて示した。
この曲にはZicoとDeanというビッグネームも参加しており、韓国の音楽チャートで5位という驚異的な成績を収めた。
しかし番組自体では、マイク選択でKilagramに敗れ、惜しくも脱落することになった。

この2度のShow Me The Money出演を通じて、Hash Swanは単なるアンダーグラウンドの実力者という枠を超え、より広い層のリスナーに知られる存在となった。
特に「요즘것들ヨジュムゴットゥル」での存在感は大きく、この曲を通じて彼のラップスタイルに魅了されたファンも多い。
Show Me The Moneyは優勝することだけが目的ではなく、自分の音楽を世に出す場としての意義も大きい。
Hash Swanにとっても、この番組は自分の価値を証明するための舞台として十分に機能したと言えるだろう。

さらに時を経て、2024年には別のラップサバイバル番組RAP:PUBLICにも出演している。
長年にわたるキャリアを持つアーティストが改めてこういった番組に挑戦するという姿勢に、Hash Swanの音楽への真剣な向き合い方がよく表れている。
新たな世代のリスナーとの接点を求め、常に自分をアップデートしようとする意欲は、ベテランアーティストとしての余裕と貪欲さを同時に感じさせる。

音楽スタイルと世界観

Hash Swanの音楽を語る上で欠かせないのが、その独特の世界観と言葉の使い方だ。
韓国ヒップホップシーンには強靭なフロウと攻撃的なリリックで勝負するラッパーが数多く存在するが、Hash Swanはむしろ繊細さと内省的な視点を武器にする。
MBTIがINFPという内向型の感受性の強い人格タイプであることも、彼の音楽の性質に通じるものがある。

彼のリリックには、日常の断片を詩的に切り取る感覚がある。
ストレートな自慢話や批判ではなく、どこか哲学的な問いや、生きることへの複雑な感情が言葉の奥に潜んでいる。
それは「Shangri-La」という楽園を意味するタイトルのEPや、「Alexandrite」「Peridot」という宝石の名前を冠したEPのタイトルにも表れている。
単に格好いい単語を選んだのではなく、それぞれの石が持つ意味や性質を自分の内面と重ね合わせているのではないかと想像させる、詩的なセンスだ。

フロウの面では、柔軟性と多様性が特徴だ。
速いバースをこなしながらも、メロディアスなフックをスムーズに歌い上げる能力を持ち、ラッパーとしてだけでなくシンガーとしての側面も持ち合わせている。
身長158cmという、Ambition Musik内でも最小という体格だが、マイクの前に立つ時の存在感はその数字からは想像できないほどだ。

また、Hash Swanは日本語、英語、韓国語、スペイン語という4つの言語を話せるという特技を持っている。
多言語能力は音楽制作にも影響を与えており、英語フレーズの使い方や語感の選択に、一般的な韓国ラッパーとは異なる多角的な視点が感じられる。
言葉の持つ音とリズムへの感受性が、複数言語の習得とリリックライティングの両方に作用しているのだろう。

2020年に発表した初フルアルバム「Silence of the REM」は、彼の音楽的成熟を示す作品だ。
REMとは「Rapid Eye Movement (急速眼球運動)」の略で、夢を見ている時の睡眠段階を指す。
「REMの沈黙」というタイトルには、夢と現実の狭間、意識の境界線というテーマが込められており、Hash Swanが単純なヒップホップアーティストにとどまらない、より深い芸術的野心を持っていることを示している。

身体に刻んだ多くのタトゥーは、彼の音楽と同様に、内側にある何かを外側に表現しようとする衝動の現れかもしれない。
League of Legendsを趣味にし、猫2匹とチワワのCha Chaを溺愛するという日常的な一面と、詩的で哲学的な音楽の世界観。
その対比がHash Swanというアーティストの奥深さを作り出している。

主要コラボレーション

Hash Swanの音楽キャリアは、ソロ活動だけでなく、韓国ヒップホップシーンを代表する多くのアーティストとのコラボレーションによっても彩られている。
これらのコラボは単なる話題作りではなく、互いの音楽的ケミストリーが噛み合ったからこそ生まれた作品が多く、Hash Swanの人間関係の広さとシーンでの信頼の厚さを示している。

最もインパクトの大きいコラボレーションとして挙げられるのが、2017年のShow Me The Money 6の音源ミッション曲「요즘것들ヨジュムゴットゥル (Yozm Gang)」だ。
Zico、Deanという超一流アーティストと並んでフィーチャーされたこの曲は、韓国の音楽チャートで5位という記録を残した。
Hash Swanにとってのチャートアクションとしては最高位であり、これをきっかけに彼のことを知ったリスナーも多いはずだ。
Zicoの持つポップなセンスと、Deanのソウルフルな歌唱と、Hash Swanの独自のフロウが絶妙に融合した作品だった。

2016年には、Flowsik、Boi B、₩uNoとともに「도깨비トッケビ (Dokkaebi、お化け)」をリリースし、こちらも韓国チャートで25位を記録した。
「도깨비トッケビ」は韓国の妖怪・民間伝承にある存在で、このタイトルチョイスにも韓国文化への深い理解と愛着が感じられる。

Ambition MusikのレーベルメイトであるChangmoとAsh Islandとは2019年に「BAND」と「Beer」という2曲を共同でリリースした。
「Beer」はその名の通り、ビールを飲みながらの何気ない会話を想起させるリラックスした雰囲気と、しかし決して空虚ではないリリックの深さを持つ曲で、彼らの仲の良さと音楽的な相互理解が伝わってくる。

ガールズグループMAMAMOOのメンバーWheeinとのコラボレーション「Moderato」も注目を集めた作品の一つだ。
K-POPのメインストリームアイドルとヒップホップアーティストという、一見異質な組み合わせだが、Wheeinのアーティスト性の高さとHash Swanの音楽的柔軟性が見事にマッチした。
ジャンルの壁を越えたコラボレーションに積極的な姿勢は、彼が自分の音楽世界を常に広げようとしている証拠でもある。

また、Keem Hyo-eun (김효은キム・ヒョウン)、Leellamarz (릴러말즈リルラマルズ)、The Quiettといった韓国アンダーグラウンドシーンの重要人物たちともコラボレーションを重ねており、シーン全体でのネットワークの広さと信頼の深さがうかがえる。
Hash Swanにとってコラボレーションは、単に楽曲を共同制作する行為ではなく、仲間との対話を音楽という形で記録することでもある。
その姿勢が、長年にわたって多くのアーティストから慕われている理由の一つだろう。

Ambition Musikとクルー活動

Hash Swanが所属するAmbition Musikは、Illionaire Records傘下のレーベルだ。
Illionaire Recordsは、韓国ヒップホップ界で絶大な影響力を持つThe Quiett (더콰이엇ザ・クワイエット)とDok2 (도끼ドッキ)が設立したレーベルで、韓国ヒップホップを語る上で避けて通れない存在だ。
その傘下レーベルであるAmbition Musikには、Hash Swanのほか、Changmo (창모チャンモ)、Ash Island (애쉬アッシュ 아일랜드アイランド)、Leellamarz (릴러말즈リルラマルズ)といった個性豊かなアーティストが名を連ねている。

Ambition Musikの特徴の一つは、所属アーティストが互いに頻繁にコラボレーションを行い、レーベル全体として一つの音楽的コミュニティを形成していることだ。
Hash SwanとChangmo、Ash Islandの「BAND」「Beer」はその好例で、レーベル内の化学反応が生み出した音楽の結晶と言える。
このような環境は、アーティストとして刺激を受け続け、成長し続けるために理想的な場所だ。

Hash Swanは、HolmesとWayside Townという2つのクルーにも所属している。
Wayside Townは韓国語で「길가의キルガエ 마을マウル」、直訳すると「道端の街」を意味する名前のヒップホップコレクティブで、主流から外れた場所で独自の文化を育てるという意志を感じさせる名称だ。
このクルーへの帰属意識は、Hash Swanが単にレーベルに所属するアーティストとしてではなく、音楽的な仲間との共同体の一員として自己を定義していることを示している。

2021年から2022年にかけては兵役のために活動を休止した。
社会服務要員として軍の義務を果たし、2022年7月21日に正式に除隊した。
長くなりがちな兵役期間を無事に終え、音楽活動に戻ってきたHash Swanは、ファンにとって待ちに待った帰還だったことだろう。
除隊後も精力的に活動を続け、2024年にはRAP:PUBLICへの出演も果たしている。

韓国ヒップホップシーンは移り変わりが激しく、新しいアーティストが次々と登場し、トレンドも目まぐるしく変化する。
そんな中で、2016年のデビューから一貫して自分の音楽スタイルを守りながら、それでも進化を続けてきたHash Swanの存在感は、改めてその音楽の本質的な強さを証明している。
小さな体に大きな音楽を詰め込んで、韓国のヒップホップシーンを歩み続けるHash Swan。
その旅はまだ続いている。

アーティストとしての現在と未来

2022年7月に除隊を果たしたHash Swanは、活動を再開し、着実に存在感を取り戻している。
2024年にはRAP:PUBLICへの出演を果たし、新たなファン層への訴求にも積極的だ。
韓国ヒップホップシーンでは新世代のラッパーたちが次々と登場しているが、2016年からコンスタントに活動を続け、EP4枚と正規アルバム1枚という充実したディスコグラフィーを積み上げてきたHash Swanの存在は、シーンの歴史を体現するものでもある。

彼の音楽が一貫して評価される理由は、流行に流されない独自の視点と、言葉への真剣な向き合い方にある。
ラップは言葉のスポーツであり、言葉はアーティストの内面を映す鏡だ。
Hash Swanが紡ぐ言葉には、その人の誠実さと深さが滲み出ており、一度その世界観に触れたリスナーはなかなかそこから離れられない。
これからも自分の音楽的探求を続け、韓国ヒップホップシーンに新たな言葉を刻み続けていくだろう。

マルのひとこと

「요즘것들ヨジュムゴットゥル」でZicoやDeanと並んでいるHash Swanのバースを初めて聴いたとき、この人の言葉の選び方には何か特別なものがあると感じた。
ただ格好いいだけじゃなくて、ちゃんと「考えて書いた」感じがするリリックで、韓国語がわからなくても声とフロウだけで引き込まれてしまう、そういうタイプのラッパーだと思う。
「Silence of the REM」というアルバムタイトルのセンスも本当に好きで、夢と現実の境界線に立ちながら音楽を作り続けているHash Swanの次の作品がとても楽しみだ。

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