KHA 2022|第6回韓国ヒップホップアワーズ

深掘り

2023年3月、힙합플레이야ヒプハププレイヤ/Hiphopplaya主催「한국ハングッ 힙합ヒプハッ 어워즈オウォジュ/KHA」の第6回授賞式が行われた。
この年はまさに「창모チャンモの年」と呼ぶにふさわしい結果となり、창모チャンモ(Changmo)が「올해의オルヘエ 아티스트アティストゥ」「올해의オルヘエ 힙합ヒプハッ 앨범エルボン」「올해의オルヘエ 힙합ヒプハッ 트랙トゥレッ」「올해의オルヘエ 뮤직비디오ミュジクビディオ」の4冠を達成する圧倒的な存在感を示した。
新人賞には신스シンス/Synthが輝き、프로듀서プロデュソ 부문ブムンでは토일トイル/Toilが初受賞を果たすなど、新世代の台頭も印象的な回となった。
KHA史上、1人のアーティストが4部門を独占した例は창모チャンモが初であり、その圧倒的な受賞ぶりは2022年のシーンを象徴する出来事として記録に残っている。
批評家票(70%)とネット投票(30%)の両面から揺るぎない支持を集めた창모チャンモの受賞は、単なる人気の高さではなく、音楽的な実力の確かさを証明するものでもあった。


目次

  • 受賞結果
  • 注目受賞
  • この年のシーン
  • KHA 2022が示したもの
  • 창모チャンモチャンモのキャリアとAmbition Musik
  • Dejavu Groupとクルー文化の重要性
  • コロナ禍後のシーン回復と2022年
  • 이하이イ・ハイイ・ハイの2年連続R&Bトラック賞が持つ意味
  • Toil(토일)のプロデュースワークとその特徴
  • マルのひとこと

受賞結果

部門 受賞者 / 作品
올해의オルヘエ 힙합ヒプハッ 앨범エルボン/ヒップホップ・アルバム・オブ・ザ・イヤー UNDERGROUND ROCKSTAR / 창모チャンモ
올해의オルヘエ 아티스트アティストゥ/アーティスト・オブ・ザ・イヤー 창모チャンモ
올해의オルヘエ 힙합ヒプハッ 트랙トゥレッ/ヒップホップ・トラック・オブ・ザ・イヤー 태지テジ / 창모チャンモ
올해의オルヘエ R&B 트랙トゥレッ/R&Bトラック・オブ・ザ・イヤー ONLY / 이하이イ・ハイ/Lee Hi
올해의オルヘエ R&B 앨범エルボン/R&Bアルバム・オブ・ザ・イヤー DON’T DIE COLORS / 따마ッタマ/THAMA
신인상シンインサン/ニュー・アーティスト・オブ・ザ・イヤー 신스シンス/Synth
올해의オルヘエ 프로듀서プロデュソ/プロデューサー・オブ・ザ・イヤー 토일トイル/Toil
올해의オルヘエ 뮤직비디오ミュジクビディオ/ミュージックビデオ・オブ・ザ・イヤー 태지テジ / 창모チャンモ
올해의オルヘエ 레이블レイブル/크루クル/クルー・オブ・ザ・イヤー 데자뷰デジャビュ 그룹グルッ/Dejavu Group

注目受賞

창모チャンモ:圧巻の4冠達成とUNDERGROUND ROCKSTARの軌跡

2022年のKHAは창모チャンモによる独占状態となった。
本名ソン・チャンモとして知られる彼は、Ambition Musikに所属し、独特の低音ボイスとメランコリックなメロディラインを融合させたスタイルで知られている。
2021年11月にAmbition Musikからリリースされたアルバム『UNDERGROUND ROCKSTAR』は、アンダーグラウンドヒップホップへの敬意とメインストリームでの圧倒的な実力を融合させた作品として高い評価を受けた。
アルバムのタイトル自体が彼の音楽的アイデンティティの宣言であり、「地下(アンダーグラウンド)から這い上がったロックスター」というセルフイメージが全編を通じて貫かれている。
収録曲「태지テジ」は先人への敬意を込めた一曲で、서태지ソ・テジ(Seo Taiji)の音楽的遺産を引き継ぎながら現代のヒップホップに昇華させた野心作だ。
リード曲「태지テジ」は大衆性と芸術性を兼ね備えたトラックとして、トラック・オブ・ザ・イヤーとミュージックビデオ・オブ・ザ・イヤーをダブル受賞した。
ミュージックビデオは映画的なビジュアルと重厚なナラティブで高く評価され、音楽と映像の完璧な融合として批評家・ファン双方から絶賛された。
さらにアルバム部門とアーティスト部門もあわせて4冠という、KHA史上でも際立った快挙を成し遂げた。
창모チャンモは2020年にもトラック「METEOR」でトラック賞を受賞しており、2年連続で主要部門に名を連ねるという安定した実力が、2022年の4冠という結果につながっていた。

신스シンス:신인상シンインサン 受賞

신인상シンインサンを受賞した신스シンスは、独自のスタイルとリリカルなアプローチで2022年のシーンに新鮮な風を吹き込んだアーティストだ。
2022年にデビュー作をリリースした신스シンスは、内省的なリリックと実験的なサウンドメイクで、批評家たちの耳を早速捉えた。
KHAの新人賞はそのアーティストの長期的なポテンシャルを見据えて選ばれる傾向があり、신스シンスの受賞もまた「このアーティストの将来が楽しみだ」という期待を込めた選択だった。
評論家・ネット投票双方から支持を集め、次世代のシーンを担う存在として注目を集めた。
KHAの新人賞受賞者が後にシーンの主役となることは珍しくない。
2017年の저스디스ジャスティスが2023年にアーティスト賞を受賞したことはその好例であり、신스シンスもまた同様の軌跡を描く可能性を秘めている。

토일トイル:プロデューサー・オブ・ザ・イヤー

2022年のプロデューサー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのは토일トイルだ。
토일トイルは2010年代後半から韓国ヒップホップシーンでビートメイカーとして活動を続け、独特のダークで実験的なサウンドで知られている。
2022年は複数のアーティストへのビート提供やプロデュースワークが多数リリースされ、年間を通じてシーンに大きな影響を与えたビートメイカーとして認定された。
토일トイルのビートは独特のテクスチャーとムードを持ち、ラッパーたちがそのビート上で自然とベストパフォーマンスを引き出されるような磁力がある。
KHAのプロデューサー賞は過去にGroovyRoom(2017・2018)、Giriboy(2019・2020)、Code Kunst(2021)と継続的に実力者が選ばれてきており、토일トイルの受賞もシーンの次世代ビートメイカーとしての地位を確固たるものにした。

따마ッタマ「DON’T DIE COLORS」:R&Bアルバム・オブ・ザ・イヤー

R&Bアルバム部門では따마ッタマの『DON’T DIE COLORS』が受賞した。
THAMAとしても知られる彼女は、ソウルを拠点に活動するシンガーソングライターで、柔らかくも芯のある歌声と繊細な感情表現で多くのファンを持つ。
アルバムタイトル「DIE COLORS(色は死なない)」が示すように、色彩豊かなサウンドスケープと深みのあるリリックが融合した意欲作だ。
ネオソウル・オルタナティブR&BとK-POPの要素が絶妙に混ざり合い、韓国R&Bの成熟を示す一枚として評論家から高い支持を受けた。
R&Bトラック部門では2年連続で이하이イ・ハイが「ONLY」で受賞しており、2021年の「ALONE」に続く連続受賞は、R&Bシーンにおける絶対的な存在感が改めて示された。
이하이イ・ハイの2年連続受賞と따마ッタマの受賞が示すように、2022年の韓国R&Bシーンは女性アーティストが牽引する形で進化していった。

데자뷰デジャビュ 그룹グルッ:クルー・オブ・ザ・イヤー

レーベル/クルー部門ではDejavu Group(데자뷰デジャビュ 그룹グルッ)が受賞した。
Dejavu Groupは複数のアーティストが集まる音楽コレクティブで、2022年にグループとして精力的なリリース活動を展開した。
前年2021年にH1GHR MUSICがクルー賞を受賞したのに対し、2022年はDejavu Groupというより小規模な組織が受賞したことは、大手レーベルの独占ではなく多様なコレクティブがシーンを活性化している実態を示している。
韓国ヒップホップにおけるクルー文化は、互いを鼓舞し合いながら音楽的な進化を促す重要なエコシステムであり、KHAがこれを毎年顕彰することはその文化を継承する意義深い取り組みだ。


この年のシーン

2022年の韓国ヒップホップシーンは、コロナ禍の影響が徐々に薄れ、ライブシーンが少しずつ復活し始めた年でもあった。
2022年4月からは韓国でも大型ライブイベントの開催が段階的に再開され、アーティストたちがファンと直接つながる機会が戻ってきた。
창모チャンモの圧倒的な受賞ぶりが象徴するように、単なるバズ頼みではなく、アルバム全体のクオリティで勝負するアーティストが高く評価される流れが定着しつつある。
デジタルシングルの乱立が目立つ中で、アルバムという形式にこだわりクオリティコントロールを徹底したアーティストが批評家から高く評価される傾向がより明確になってきた。
レーベル部門では데자뷰デジャビュ 그룹グルッが受賞し、既存の大手レーベルに加えて多様なレーベルがシーンを盛り上げる構図が生まれていた。
R&B部門の充実は顕著で、ヒップホップとR&Bを横断するアーティストが増え、ジャンルの境界がより流動的になっていった。
Spotifyをはじめとする音楽ストリーミングサービスの普及が、韓国国内だけでなく海外リスナーへのリーチを飛躍的に拡大し、K-HIPHOPという言葉が徐々に世界的な認知を得始めた年でもある。
신스シンスのような個性的な新人の台頭もあり、世代交代と実力主義が同時進行する、韓国ヒップホップの豊かな成熟期がここから本格化していく。


KHA 2022が示したもの

第6回KHAの最大のテーマは「圧倒的な実力による独占」だった。
창모チャンモの4冠は、批評家票とネット投票の双方から支持を集めたという意味で、韓国ヒップホップコミュニティ全体が一つの作品に感動した証だと言える。
これほどの集中的な受賞が起きるには、アルバム・トラック・ビデオのすべてが高いレベルでそろっている必要があり、창모チャンモはそれを見事に体現した。
一方で토일トイルのプロデューサー賞、신스シンスの新人賞、따마ッタマのR&Bアルバム賞が示すように、창모チャンモ以外の部門でも確かな実力者が認められていた点がシーンの健全さを証明している。
2年連続でR&Bトラック賞を受賞した이하이イ・ハイの存在は、R&Bパートがヒップホップと対等な評価を受けるシーンへの進化を示す指標でもある。
KHA 2022は「一強時代の到来と多様性の共存」という、韓国ヒップホップの新たなフェーズの幕開けを告げる授賞式だった。


창모チャンモのキャリアとAmbition Musik

창모チャンモがここまでの評価を受けるに至った背景には、Ambition Musikという卓越したレーベルの存在がある。
Ambition MusicはSwingsが設立したレーベルで、창모チャンモ、Jvcki Wai、Oxygenなど個性豊かなアーティストを擁している。
創モは2016年のデビュー当初からその低音ボイスと独特のメランコリックなメロディラインで注目を集め、徐々にシーンでの地位を確立してきた。
2020年には「METEOR」でKHAトラック・オブ・ザ・イヤーを受賞し、翌2021年の「UNDERGROUND ROCKSTAR」での4冠へとつながる助走期間を作った。
アルバム制作に先立って창모チャンモは、韓国ヒップホップの先人たちへのリスペクトを深く研究したと語っており、「UNDERGROUND ROCKSTAR」はその研究の結晶だ。
アルバムのサウンドプロダクションは、1990年代のUSヒップホップから受けた影響とK-HIPHOPの現代性を独自に融合させており、そのハイブリッドな音楽性が批評家に高く評価された。
4冠という結果は、창모チャンモ個人の才能だけでなく、彼を育てたAmbition MusicというレーベルとSwingsというプロデューサーの功績でもある。
レーベルメイトたちとの切磋琢磨が창모チャンモの音楽に深みをもたらし、それがKHA史上最多冠という形で結実した。

Dejavu Groupとクルー文化の重要性

2022年のクルー・オブ・ザ・イヤーを受賞したDejavu Group(데자뷰 그룹)は、韓国ヒップホップにおけるクルー文化を体現する存在だ。
クルーとは、血縁でも所属契約でもなく、音楽的な志とスタイルを共有するアーティストたちが緩やかに集まったコレクティブのことを指す。
Dejavu Groupはそのような有機的な結びつきから生まれたグループで、2022年に多数のコラボレーション作品を発表し、グループとしての存在感を高めた。
韓国ヒップホップにおけるクルー文化は、SMTMが個人の才能を競わせる形式とは対照的に、集団的な創造性と相互扶助の精神を重んじるものだ。
大手レーベルへの所属ではなく、クルーという形で集まり音楽を作るスタイルは、インディペンデントな精神とヒップホップの本質的なコミュニティ文化を体現している。
KHAがクルー・オブ・ザ・イヤー部門を設けていることは、そうした文化をシーンの重要な要素として認める姿勢の表れだ。
H1GHR MUSICが2021年に受賞し、Dejavu Groupが2022年に受賞したことで、この部門が特定の大手だけではなく多様な規模と形態の集団を評価する場として機能していることがわかる。

コロナ禍後のシーン回復と2022年

2022年は韓国のコロナ規制が大幅に緩和された年であり、音楽シーンにとって特別な意味を持つ年だった。
2020年から2年間、ライブコンサートや大型フェスティバルが軒並み中止・縮小を余儀なくされた韓国の音楽シーンが、2022年に向けて復活の準備を整えていた。
4月以降の野外イベント解禁により、アーティストたちは待ちに待ったステージに立つ機会を取り戻した。
この「解禁」の空気感は、2022年の韓国ヒップホップのエネルギーにも直結しており、창모チャンモの「UNDERGROUND ROCKSTAR」が持つある種の解放感とも響き合っている。
スタジオ作業に集中できたコロナ禍の副産物として、アルバムとしての完成度が特に高い作品が2021〜2022年には多く生まれた。
창모チャンモの4冠はその象徴であり、じっくりと腰を据えて音楽を作ったアーティストが報われるという実例として、シーンに強い印象を残した。
ライブ再開後の창모チャンモのパフォーマンスも高く評価され、アルバムの完成度とステージでの存在感が相乗効果をもたらした。
2022年は韓国ヒップホップが「パンデミック期の沈黙」から「再起動」へと転換した年として、シーンの歴史に記録されている。


이하이イ・ハイの2年連続R&Bトラック賞が持つ意味

이하이イ・ハイが2021年「ALONE」に続き、2022年「ONLY」でR&Bトラック賞を連続受賞したことは、韓国女性R&Bシーンの象徴的な出来事だ。
「ONLY」はAOMG移籍後の彼女の音楽的進化を示す楽曲であり、プロデューサーとの共同制作によって以前よりも実験的なサウンドが実現されている。
歌詞は独占的な愛の感情を鋭く切り取ったもので、彼女の深みのある歌声と相まって聴く者の感情に直接訴えかける力を持っている。
YGエンタテインメント時代に「大ヒットを狙う」プレッシャーの中で制作していた時代とは異なり、AOGMでは自分の言いたいことを音楽にできるという自由がある、と彼女はインタビューで語っていた。
その自由が音楽の深みとなって結実した「ONLY」の連続受賞は、アーティストとしての環境が音楽の質に直結することを証明している。
2年連続での受賞は韓国のR&Bシーンにおける彼女の絶対的な地位を確立し、以降の韓国R&Bをめぐる語りの中で이하이イ・ハイの名前は欠かせないものとなった。

Toil(토일)のプロデュースワークとその特徴

토일トイルのビートは、ダークで内省的なムードと高い実験性が特徴だ。
ドラムパターンの独自性とサンプリングの選択眼が批評家から高く評価されており、単純に「気持ちいいビート」というだけでなく、聴くほどに発見がある複層的な構造を持っている。
2022年はZion.TやCodeKunstなど複数のメジャーアーティストとのコラボレーションに加え、アンダーグラウンドのアーティストへのビート提供も積極的に行い、シーン横断的な存在感を示した。
プロデューサーとしての토일トイルの強みは、アーティストの個性を引き出しながらも「토일のビートだとわかる」独自性を保つことだ。
それは最高のプロデューサーだけが達成できるバランスであり、2022年のKHAプロデューサー賞はその卓越性への評価だった。
Groovy RoomやCode Kunstといった先輩プロデューサーの流れを継ぎつつ、さらに独自の美学を打ち立てた토일トイルは、韓国ヒップホップのプロデューサー文化の新世代を代表する存在として確立した。
토일トイルのビートは聴くたびに新しい発見があり、リスナーに深く潜るほど豊かになるという体験を提供する。
それは音楽の本来の喜びを呼び起こすものであり、2022年のKHAプロデューサー賞はその音楽的な深みへの敬意だった。
韓国のビートメイカー文化全体が成熟している証として、토일トイルの受賞は長く語られるだろう。


マルのひとこと

창모チャンモの「태지テジ」を初めて聴いたとき、あのイントロのドラムが体に刺さるような感覚が忘れられない。
4冠という事実よりも、そのビートの存在感が2022年のKHAを僕の中で象徴している。
따마ッタマの「DON’T DIE COLORS」は、2022年の韓国R&Bシーンを語る上で欠かせない一枚で、色彩豊かなサウンドと深みのある歌詞が今でも耳に残っている。
KHA 2022はシーン全体のレベルが高く、どの部門もその年の最良を正確に捉えた選考だったと思う。
韓国ヒップホップを聴き始めた人には2022年のKHAのプレイリストから入ることを強くすすめたい。
창모チャンモの「태지テジ」から始まり、Lee Hiの「ONLY」、THAMAの「DON’T DIE COLORS」へと続くプレイリストを聴くことは、2022年の韓国音楽シーンを疑似体験することだ。
そしてその体験の先に、より深い韓国ヒップホップの世界への扉が開いている。
KHAの受賞歴を辿ることが、韓国ヒップホップという豊かな地図を手にすることだと、2022年の授賞式を振り返るたびに思う。
창모チャンモの「UNDERGROUND ROCKSTAR」を聴くたびに、アルバム全体に込められた一貫したテーマと音楽的な志の高さを感じる。
4冠という数字がその志の大きさを証明しているが、数字よりも音楽そのものの力を感じてほしい。
これほどの完成度を持つアルバムが生まれた2022年は、韓国ヒップホップ史に残る一年だ。

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