▶ アーティストページ:Giriboyと僕。
2016年5月17日リリース。
「官能的」の次が「成人式」、その次が「機械的」。
アルバム名の系譜だけで、すでに面白い。
「機械的なアルバム」と言いながら、その内容は機械とは最も遠いところにある。
全15曲、このキャリア最大規模のアルバムで、ギリボイはすべての感情を詰め込んだ。
2016年は、ギリボイにとって大きな転換点だった。
Show Me The Moneyシーズン3に出演し、広い層に名前が知られるようになった。
パニック障害を公表し、それを音楽に込めた。
宇宙飛行というクルーとの絆も深まり、そのメンバーが複数この作品に参加した。
そのすべてが詰まっているのが、この3rdアルバムだ。
- 目次
- 作品概要
- アルバムの背景
- アルバムの流れ
- 各曲紹介
- 01 YOU’RE A MEDICAL
- 02 I’M IN TROUBLE feat. Loco
- 03 우주비행ウジュビヘン1 (宇宙飛行1)
- 04 LO:OP feat. Samuel Seo
- 05 말하자면マルハジャミョン 길어ギロ / 다운ダウン (言えば長くなる)
- 06 공황ゴンファン (パニック)
- 07 아침アチン (朝)
- 08 ZOA feat. Hanhae
- 09 우주비행ウジュビヘン2 feat. Choi LB (宇宙飛行2)
- 10 하루종일ハルジョンイル feat. DJ SQ, Han Yo-han (一日中)
- 11 예쁘잖아イェップジャンア ★タイトル曲 (かわいいじゃないか)
- 12 그グ 정도ジョンド 쯤이야ッチュンイヤ (そのくらいのことだよ)
- 13 2000/90
- 14 우결ウギョル feat. Fromm (我々結婚した)
- 15 새벽セビョッ 4시シ (夜明け前4時)
- 総評
- 個人的ランキング
- パニック障害と音楽
- 宇宙飛行というクルーについて
- 全15曲の意義
- 「機械的」というタイトルの謎
- 「一日中」について特別に
- 2ndから3rdへの変化
- 聴き直す楽しさ
- 「タイトル曲」の選択について
- 3rdアルバムの位置
- マルのひとこと
目次
- 作品概要
- アルバムの背景
- アルバムの流れ
- 各曲紹介
- 総評
- 個人的ランキング
- パニック障害と音楽
- 宇宙飛行というクルーについて
- 全15曲の意義
- 「機械的」というタイトルの謎
- 「一日中」について特別に
- 2ndから3rdへの変化
- 聴き直す楽しさ
- 「タイトル曲」の選択について
- 3rdアルバムの位置
- マルのひとこと
作品概要
| 発売日 | 2016年5月17日 |
| 形態 | 3rdフルアルバム(全15曲) |
| ジャンル | ヒップホップ / R&B |
| 所属 | Just Music |
| タイトル曲 | 예쁘잖아/かわいいじゃないか |
| 客演 | Loco / Samuel Seo / Hanhae / Choi LB / DJ SQ / Han Yo-han / Fromm |
アルバムの背景
ギリボイは2015年末から2016年にかけて、パニック障害と向き合っていた。
ステージに立つことへの恐怖、人混みの中でのパニック発作。
そういった経験を、このアルバムでは包み隠さず音楽にしている。
機械的というタイトルは、機械のように感情を切り離したい、という願いかもしれない。
でも実際には、そうできなかった。
だからこのアルバムは、機械的とは正反対の人間くささに満ちている。
우주비행というクルー、WYBH(We Young Bad Hoz)のメンバーが複数参加している。
ギリボイを中心に集まった個性的なラッパーたちで、宇宙を旅するような自由なスタイルが特徴だ。
このクルーへの所属感と誇りが、このアルバムの随所に現れている。
アルバムの流れ
「機械的なアルバム」と言いながら、全然機械的じゃない。
むしろ、このキャリアで最も感情の種類が多いアルバムかもしれない。
全15曲。
宇宙飛行(우주비행/WYBH)のクルー曲が2曲入り、パニック障害をテーマにしたトラックがあり、朝の静けさを描いた曲があり、同居した恋人の思い出を歌った曲がある。
その振れ幅が、機械とは正反対だ。
ギリボイ本人が「最も愛着のある曲」として挙げる「하루종일/一日中」もここにある。
自分が最も愛着のある曲をアルバムに入れられるアーティストは、信頼できる。
そういうアルバムだ。
各曲紹介
01 YOU’RE A MEDICAL
アルバムの掴みとして、実験的な幕開け。
タイトルの意味をあえて曖昧にしたまま、聴く者を引き込む。
「あなたは医療的だ」という意味にも読めるし、「あなたは僕の薬だ」という意味にも聴こえる。
このアルバムのテーマ、パニック障害と恋愛の交差点に立つような一曲として、開幕に相応しい。
サウンドは実験的で、ぼんやりとした夢の中にいるような浮遊感がある。
02 I’M IN TROUBLE feat. Loco
AOMGのLocoを迎えた一曲。
「困った状況」を軽快に歌うが、その軽さの裏に本気の困惑がある。
ふたりの声の対比が面白い。
LocoはAOMG所属のラッパーで、ギリボイとは仲が良い。
このコラボは、その関係の自然さがそのまま音に出ている。
「困ってる」と言いながら、どこか楽しそうなふたりの感じが、聴いていて心地いい。
困った状況でも軽やかでいられる、それ自体が一種のスキルだ。
03 우주비행ウジュビヘン1 (宇宙飛行1)
クルー名を冠したシリーズ曲の第一弾。
宇宙を漂う孤独と自由を同時に描く。
このクルーへの誇りと、その広さへの憧れが共存している。
宇宙飛行というクルー名は、地上にいながら宇宙を目指す、という矛盾を孕んでいる。
現実の重力から逃れたい、でも逃れられない。
その焦燥と自由への渇望が、このトラックのエネルギーの源だ。
パニック障害を抱えながら宇宙を目指す、というギリボイ自身の状況とも重なって聴こえる。
04 LO:OP feat. Samuel Seo
ソウルシンガーSamuel Seoの滑らかな歌声と組み合わせた一曲。
繰り返す感情のループ(出会い、離れ、また繰り返す)そのサイクルに名前をつけたような曲だ。
Samuel SeoはR&Bシーンで独自の地位を築いているシンガーで、ギリボイの繊細さとよく合う。
「LO:OP」というタイトルの中にLOVEとLOOPの両方が見える。
愛は繰り返す、終わってもまた始まる、そのサイクルをここまで美しいサウンドで包めるのは、ふたりの相性の良さだ。
05 말하자면マルハジャミョン 길어ギロ / 다운ダウン (言えば長くなる)
「言えば長くなる」。
それだけで十分なことが、たくさんある。
説明を省いたタイトルが、逆に全部語っている気がする曲。
言えば長くなるから、言わない。
その「言わない」の厚みが、この曲の質感だ。
ギリボイはよく「説明しない」ことで感情を表現する。
言いたいことを全部言わず、でも全部伝える。
その技術が、このタイトルに凝縮されている。
06 공황ゴンファン (パニック)
SMTM3で一気に注目を浴びた後、ギリボイはパニック障害(공황장애)を抱えることになる。
その実体験が、この曲の核にある。
「機械的」なアルバム名の裏に、これほど個人的な告白が入っている。
心臓が激しく打つ、息ができなくなる、自分が消えてしまうような感覚。
それをラップで語ることが、どれだけの勇気を必要としたか。
このアルバムでこの曲が6曲目にあることが重要だ。
アルバムの折り返し地点に、最も個人的な告白を置く。
その構成判断がギリボイらしい。
聴く側は、この曲の後から少し違う耳で後半を聴くことになる。
07 아침アチン (朝)
夜中の曲が多いギリボイの中で、珍しく「朝」を歌う。
深夜の孤独が、朝になっても続いている感じ、あるいは朝になってやっと落ち着いた感じ。
どちらにも聴こえる静かな一曲。
パニックの曲の次に「朝」が来る。
一夜を越えた後の静けさ、というアルバム内での位置が絶妙だ。
朝の光が、昨夜の重さを少し薄める。
それだけで十分なことがある。
この短くシンプルなトラックが、アルバムの呼吸を整える役割を担っている。
08 ZOA feat. Hanhae
Hanhaeとのコラボ。
ふたりの異なるアプローチが、一曲の中で面白い緊張を生む。
HanhaeはFee BrotherというクルーのラッパーでHip-hopシーンで独自の存在感を持つ。
ギリボイとのスタイルの違いが、このコラボを刺激的にしている。
ZOAという言葉は生命体を意味するギリシャ語から来ているとも言われる。
生命的、有機的なサウンドで、このアルバムの中で一種のアクセントになっている。
09 우주비행ウジュビヘン2 feat. Choi LB (宇宙飛行2)
「宇宙飛行」シリーズの続き。
前曲と対になって、クルーとしての連帯と、個人としての孤独を行き来する。
Choi LBはギリボイの宇宙飛行クルーの中心メンバーのひとり。
ふたりの声が重なると、このクルーの密度と愛着がそのまま伝わってくる。
宇宙飛行1と2を並べて聴くことで、このクルーがどういう関係性にあるかが音で語られている。
言葉より音が雄弁な、そういうトラックだ。
10 하루종일ハルジョンイル feat. DJ SQ, Han Yo-han (一日中)
ギリボイが「最も愛着のある曲」と語る一曲。
好きな人のことを、一日中考えてしまう。
その高揚感と、じれったさと、幸福感が詰まっている。
シンプルなテーマが、こんなに豊かになる。
DJ SQのプレイとHan Yo-hanの歌声が組み合わさって、この曲の温かさを作っている。
「一日中」という言葉の中に、誰かを思う喜びと苦しさが両方ある。
止まらない思考、繰り返すメロディ、その感覚がサウンドと完全に一致している。
ギリボイが愛着を持つ理由がわかる。
聴くたびに、今日も誰かのことを一日中考えてしまった誰かの、側に立てる気がする。
11 예쁘잖아イェップジャンア ★タイトル曲 (かわいいじゃないか)
「だって可愛いんだから仕方ない」。
女性の前で萎縮してしまう、正直すぎる告白ソング。
ここまで直球に言えてしまうギリボイの素直さが、かえって武器になっている。
「예쁘잖아」は「かわいいじゃないか」という意味だが、「かわいいんだからしょうがないだろ」というニュアンスも含む。
言い訳めいた告白、という矛盾が可愛い。
タイトル曲として選ばれたのは、ギリボイの魅力が最もわかりやすく詰まっているからだと思う。
初めてギリボイを聴く人が、この曲で笑って、好きになってくれる。
その入口としての完成度が高い。
12 그グ 정도ジョンド 쯤이야ッチュンイヤ (そのくらいのことだよ)
「そのくらいのこと」と言いながら、全然そのくらいじゃない。
そういう強がりを歌う。
傷ついていることを認めたくない、でも「そのくらいのこと」と言い聞かせている。
その自分への嘘が、聴く側には完全に見えている。
ギリボイはこういう強がりを書くのが巧みだ。
言っていることと感じていることのズレを、音楽の中に透かして見せる。
それが共感を生む。
13 2000/90
보증금/保証金2000万ウォン、家賃90万ウォン。
一緒に住んでいた部屋の数字だ。
恋人と過ごした空間が、別れた後は数字だけになる。
この具体性がギリボイらしい。
感情を語るのではなく、数字を語る。
でも数字の中に、すべての感情が込められている。
2000/90という分数のようなタイトルが、もう二度と割り切れない関係を表しているようでもある。
このアルバムの中で、最も静かに刺さる一曲だ。
詩として読んでも十分に成立する歌詞だと思っている。
14 우결ウギョル feat. Fromm (我々結婚した)
人気番組「우리 결혼했어요/私たち結婚しました」をモチーフにした、フォーキーなボイスのFrommとの対話。
バーチャルな結婚生活を歌う、というコンセプトが可愛らしくも切ない。
Frommの独特の声とギリボイのラップが、不思議な家庭感を作り上げている。
テレビ番組のモチーフを使いながら、そこに本物の感情を込める。
バーチャルな関係の中に、リアルな孤独が潜んでいる。
「私たち結婚しました」という番組が、現実の孤独を映す鏡として機能している曲だ。
15 새벽セビョッ 4시シ (夜明け前4時)
1stに「새벽3시(夜明け3時)」があったが、今回は4時。
一時間後も、まだ起きている。
深夜から夜明け前の孤独を静かに抱えて、アルバムが幕を閉じる。
3時から4時へ。
このシリーズを通して、ギリボイは毎アルバムで一時間遅くなっている。
それだけ眠れない夜が増えているのか、それとも夜明けに近づいているのか。
どちらにも解釈できる、このアルバムの最後にふさわしい締めだ。
全15曲の旅が、静かな夜明け前の闇の中で終わる。
それが、このアルバムの正直な終わり方だ。
総評
「機械的なアルバム」というタイトルは、やはり嘘だ。
全15曲、これほど人間くさいアルバムはない。
パニックと恋愛と、クルーへの誇りと、朝と夜明け前と。
その全部が、同じ一人の中から出てきている。
ギリボイのディスコグラフィーの中でも、密度と多様性という点では屈指の一枚だ。
15曲、一曲一曲が明確な個性を持ちながら、全体として「機械的なアルバム」という嘘のタイトルの下に収まっている。
その統一感と多様性の共存が、ギリボイというアーティストの懐の広さを示している。
パニック障害を抱えながら、最も多くの曲を詰め込んだアルバムを作った。
その事実だけでも、このアルバムへの敬意は揺るがない。
ギリボイが「機械的」と名付けた理由を、聴くたびに考える。
たぶん答えはない。
でも考え続けることが、このアルバムを聴く理由のひとつになっている。
個人的ランキング
1位 예쁘잖아
2位 하루종일 feat. DJ SQ, Han Yo-han
3位 2000/90
パニック障害と音楽
ギリボイがパニック障害を公表したとき、多くのファンが驚いた。
あれだけエネルギッシュに見える人間が、人前に出ることへの恐怖を抱えていたという事実は、彼の音楽への向き合い方を一変させる。
パニック障害を経験している人にとって、「공황」という曲は特別な意味を持つ。
症状を正確に、詩的に言語化した曲として、韓国のメンタルヘルスの議論の中でも言及されることがある。
ただ、ギリボイはこの体験を「被害者の語り」として歌わなかった。
パニック障害という体験を音楽の素材として捉え、そこから美しいものを作った。
それが彼のアーティストとしての姿勢だ。
苦しみを開示することで共感を得るのではなく、苦しみを素材として新しいものを生み出す。
そのあり方が、このアルバムを聴く上で重要な視点だと思う。
宇宙飛行というクルーについて
우주비행、英語でWYBH(We Young Bad Hoz)。
ギリボイを中心に集まった、個性的なラッパーたちのクルーだ。
このアルバムで2曲の宇宙飛行シリーズが収録されたことで、クルーとしての活動が本格的になった。
宇宙飛行というクルー名には、地上にありながら宇宙を目指す、という逆説がある。
足がついている、でも視線は上を向いている。
その姿勢がギリボイの音楽にも表れていて、個人の日常的な感情を歌いながら、スケールは宇宙まで広がっていく。
このクルーの存在が、ギリボイの音楽に奥行きを加えている。
全15曲の意義
3rdアルバムで15曲というのは、かなりの意欲作だ。
コンテンツが飽和している時代に、15曲全部聴かせる力がなければ意味がない。
このアルバムはそれを達成している。
一曲も「聴かなくていい曲」がない。
個性的な15曲が、有機的に連なっている。
朝から夜明けまで、パニックから恋愛まで、クルーから個人まで。
全15曲が一日の記録のようでもある。
起きて、困って、ループして、長くなって、パニックになって、朝を迎えて、ZOAになって、飛行して、一日中考えて、可愛いと思って、強がって、数字を見て、番組を見て、夜明けに眠れなくなる。
そういう一日が、このアルバムには詰まっている。
「機械的」というタイトルの謎
「機械的なアルバム」というタイトルが、どこから来たのかを考え続けている。
ひとつの解釈は、感情を機械のように制御したかった、という願いだ。
パニック障害で感情に振り回される自分が、機械のように感情をコントロールできたら、という逆説的な願望。
でも実際には一切そうなれなかったから、このタイトルは皮肉として機能している。
もうひとつの解釈は、音楽制作への向き合い方だ。
機械的に、工場のように、一定のクオリティで曲を作り続ける。
アーティストが売れた後に直面する「次の作品のプレッシャー」を、「機械的に作る」という姿勢で乗り越えようとした。
そういう決意としてのタイトルかもしれない。
どちらの解釈も、ギリボイという人物をよく表している。
「一日中」について特別に
ギリボイが「最も愛着のある曲」と語る「하루종일/一日中」について、もう少し語りたい。
この曲の特別さは、シンプルさにある。
テーマは「好きな人を一日中考えてしまう」という、誰もが経験したことのある感情だ。
それ以上でも以下でもない。
でも「それ以上でも以下でもない」ことを、これだけ豊かなサウンドと言葉で表現できるのが、ギリボイの才能だ。
DJ SQのプレイ、Han Yo-hanの歌声、ギリボイのラップが重なるとき、その「一日中」の感覚がリアルに再現される。
ループするビート、繰り返す感情、その音楽的な選択が完璧にテーマと合致している。
愛着があるというより、この曲はギリボイが自分の音楽の理想に最も近づけた曲なのかもしれない。
そう思って聴くと、また違う感触がある。
2ndから3rdへの変化
2ndアルバム「成人式」と比べたとき、3rdで最も変わったのは「スケール」だ。
2ndが9曲で一つの感情のグラデーションを描いたとすれば、3rdは15曲で感情の全スペクトルを描こうとしている。
その野心が、このアルバムの強さであり、時に散漫にも感じさせる要因だ。
でも聴き続けると、その散漫さが人間の一日のリアルさと重なってくる。
整理された感情など存在しない。
一日の中でパニックになり、笑い、恋愛し、宇宙を夢見る。
それがリアルだ。
サウンド面では、2ndのジャズR&Bから、より多様な音楽的要素が取り込まれた。
実験的なトラックと、ポップなラブソングが同居する。
「一日中」の温かさと「パニック」の重さが、同じアルバムにある。
この多様性こそが、3rdをギリボイのキャリア屈指の一枚にしている。
聴き直す楽しさ
15曲のアルバムには、一度目と二度目で印象が変わる曲がある。
「2000/90」はその典型だ。
初めて聴いたとき、タイトルの意味がわからず流してしまう人もいる。
でも2000万ウォンと90万ウォンという数字の意味を知ってから聴くと、ぐっとくる。
「言えば長くなる」も、最初は短い曲として聴こえるが、何度も聴くうちに「言いたかったこと」の大きさが想像できる。
15曲を通して聴くだけでなく、一曲ずつ深く聴く楽しみもある。
ギリボイの歌詞は、聴けば聴くほど発見がある。
日本語訳で気づかなかったニュアンスが、韓国語で聴くとわかる。
そういう多層性が、このアルバムを長く楽しめる作品にしている。
「機械的なアルバム」と名付けながら、聴く側の感情を何度も揺さぶる。
それがギリボイの、機械的でない部分だ。
「タイトル曲」の選択について
「예쁘잖아/かわいいじゃないか」がタイトル曲に選ばれたことは、理にかなっている。
15曲の中で最も直接的で、最も入口として機能するからだ。
「一日中」の方が完成度が高いとも言えるが、「かわいいじゃないか」の方が一聴目のインパクトがある。
タイトル曲とは「一番好きな曲」ではなく「一番アーティストを伝える曲」だということを、この選択が示している。
「かわいいじゃないか」から入って「一日中」に辿り着いたとき、ギリボイの奥深さが伝わる。
その動線が、このアルバムの設計だ。
3rdアルバムの位置
1stで産声を上げ、2ndで成人式を迎えたギリボイが、3rdで「機械的」と名乗った。
その系譜の中で、このアルバムは「葛藤の記録」として機能している。
機械になれなかった人間の、正直な記録だ。
15曲全部聴き終わったとき、「機械的」というタイトルへの皮肉が完全に腑に落ちる。
この体験そのものが、このアルバムの最大の魅力だと思っている。
マルのひとこと
「2000/90」を聴くたびに、数字の冷たさと感情の温かさが同時に来る。
別れた後、部屋の契約数字だけが残るという表現を思いついたギリボイが、少し羨ましい。


