▶ アーティストページ:Giriboyと僕。
2017年12月20日リリース。
「卒業式」。
何の卒業かは、あなた次第。
Just Musicからの独立を目前にした時期のアルバムでもある。
そういう意味では、「卒業」は比喩にとどまらない、実際の節目だった。
1st「官能的」、2nd「成人式」、3rd「機械的」、そして4th「卒業式」。
この系譜を並べると、ひとりの人間が成長していく姿が浮かび上がる。
官能から成人式、機械を経て卒業へ。
これはギリボイというアーティストの成熟の歴史でもある。
- 目次
- 作品概要
- アルバムの背景
- アルバムの流れ
- 各曲紹介
- 01 WYJB (우주정복ウジュジョンボッ/宇宙征服) feat. OLNL
- 02 졸업ジョルオッ feat. George (卒業) ★タイトル曲
- 03 Whyyoumad feat. Kim Seung-min
- 04 인체의신비インチェウィシンビ (人体の不思議)
- 05 Wewantourmoneyback feat. Young B, Kid Milli
- 06 입씨름イプッシルン feat. Sik-K (言い合い)
- 07 히키코모리ヒキコモリ (引きこもり)
- 08 Yougottheswag
- 09 VV feat. OLNL, Choi LB
- 10 TV Star feat. Kim Seung-min (바보상자스타ババサンジャスタ)
- 11 고속ゴソッ (高速)
- 12 섞어ソクオ feat. Choi LB (混ぜて)
- 13 농밀ノンミル feat. Mad Clown, OLNL, Han Yo-han (濃密)
- 総評
- 個人的ランキング
- Just Musicとの別れという文脈
- Kid Milliとの出会いの記録として
- 「引きこもり」という普遍性
- 4枚の系譜を振り返って
- 「卒業」という言葉について
- このアルバムを聴く環境について
- このアルバムを聴く文脈
- クルーと個人の間で
- ラッパーとしてのギリボイ、4thまでの成長
- マルのひとこと
目次
- 作品概要
- アルバムの背景
- アルバムの流れ
- 各曲紹介
- 総評
- 個人的ランキング
- Just Musicとの別れという文脈
- Kid Milliとの出会いの記録として
- 「引きこもり」という普遍性
- 4枚の系譜を振り返って
- 「卒業」という言葉について
- このアルバムを聴く環境について
- このアルバムを聴く文脈
- クルーと個人の間で
- ラッパーとしてのギリボイ、4thまでの成長
- マルのひとこと
作品概要
| 発売日 | 2017年12月20日 |
| 形態 | 4thフルアルバム(全15曲) |
| ジャンル | ヒップホップ |
| 所属 | Just Music |
| タイトル曲 | 졸업/卒業 |
| 客演 | OLNL / George / Kim Seung-min / Young B / Kid Milli / Sik-K / Choi LB / Mad Clown / Han Yo-han |
アルバムの背景
2017年のギリボイは、Just Musicとの関係を見直し、独立の準備を進めていた。
このアルバムがJust Music在籍中の最後の作品のひとつとなる。
そういうキャリアの文脈で聴くと、「卒業」というタイトルが一層重く響く。
学校を卒業するのではなく、自分を育てたレーベルを「卒業」する。
その感情が、このアルバムの通奏低音として流れている。
宇宙飛行のクルーも充実期を迎えていた。
Kid Milliが加入し、OLNL、Choi LBといったメンバーが揃い、このアルバムはクルーの力が最大限に発揮された作品でもある。
個人とクルー、独立と連帯という矛盾が、全15曲に渡って鳴り続けている。
アルバムの流れ
SeoulBeatsが「万華鏡のような宇宙への旅」と評したアルバム。
全15曲、宇宙飛行(WYBH)のクルーが総結集しつつ、「卒業」という人生の節目をテーマに多角的に描く。
実験的なトラックと個人的な感情表現が高い次元で共存しており、「引きこもり」「人体の不思議」といった尖ったタイトルと、切ない卒業ソングが同じアルバムの中に並んでいる。
このデコボコがギリボイらしい。
また、後にKid Milliとの出会いを記録する「Wewantourmoneyback」もここに収録されている。
このアルバムを聴いてから宇宙飛行の歴史を振り返ると、ここがひとつの出発点だったと気づく。
各曲紹介
01 WYJB (우주정복ウジュジョンボッ/宇宙征服) feat. OLNL
「宇宙征服」でアルバムが開幕する。
クルー・宇宙飛行らしい、壮大な幕開け。
快楽と喜び、関係のサイクルを宇宙旅行の比喩で描く。
OLNLはギリボイの宇宙飛行クルーの中でも最も長い付き合いのひとりだ。
このアルバムの冒頭でOLNLを迎えることで、「ここからが宇宙飛行のアルバムだ」という宣言になっている。
タイトル「WYJB」はWe Young Bad Hoz(宇宙飛行の別名)の変形だ。
宇宙を征服する気概と、若さの無敵感が詰まったオープニングトラック。
02 졸업ジョルオッ feat. George (卒業) ★タイトル曲
祝祭的な「卒業」ではなく、哀愁と諦念の「卒業」だ。
「もう先へ進まなければならない」という不敵な自信ではなく、すこし寂しそうな横顔で歌われる卒業ソング。
それがギリボイの正直さだ。
Georgeの柔らかい歌声がギリボイのラップと対話し、卒業という場面の複雑な感情を立体的に描く。
嬉しいはずの卒業が、なぜか少し泣きたい気持ちになる。
それがリアルな卒業の感触だ。
前に進むことの寂しさを、ここまで正直に歌えるアーティストはそう多くない。
Just Musicからの独立を前に、この曲を書いたギリボイの気持ちを思うと、聴き方が変わる。
03 Whyyoumad feat. Kim Seung-min
毒々しい恋愛の繰り返しを描くサイケデリックなトラック。
「なんで怒ってるの」と問いかけながら、原因は自分にある、という自覚も同居している。
Kim Seung-minの鋭い声が、この問いに毒を加える。
「なんで怒ってるの」と聞きながら、怒らせた原因をわかっている。
そのずるさを自覚しながら問い続ける、という構図がギリボイのラブソングの暗部を見せている。
サイケデリックなサウンドが、その歪んだ感情を増幅させる。
04 인체의신비インチェウィシンビ (人体の不思議)
医学的・解剖学的なイメージで親密さを描く実験的トラック。
「人体の不思議」という博物館的なタイトルで、こんな内容にできるのか、という驚き。
体の仕組みを使って感情を語る、というアプローチは大胆だ。
心拍数、体温、神経の反応。
科学的な言葉が、恋愛の感覚と重なる瞬間がある。
ギリボイはそこに気づいて、曲にした。
「機械的なアルバム」と名付けた前作のテーマが、ここでもまだ続いている気がする。
身体を機械として見ると、愛することもプログラムのように見えてくる。
05 Wewantourmoneyback feat. Young B, Kid Milli
「金を返せ」。
ここにKid Milliがいる。
後に宇宙飛行に加入するKid Milliとの、記録としての一曲。
アグレッシブなヒップホップトラックで、アルバムの中で対照的な激しさを提供する。
Young BとKid Milliという若いラッパーたちを迎えて、ギリボイはここで年長者として立っている。
「金を返せ」というテーマのアグレッシブさが、三者の若さを象徴している。
後にKid Milliが宇宙飛行の核となるラッパーへと成長することを知ると、この一曲の意味が変わってくる。
出会いとは、こういう形で記録されるものだ。
06 입씨름イプッシルン feat. Sik-K (言い合い)
Sik-Kとの掛け合いで描く、恋人との口げんか。
どちらも意地を張って、でも本当は折れたい。
このドラマが上手い。
Sik-Kの独特のフロウがギリボイと絡み合って、口げんかのリアルな感触を生み出す。
言い合いの中に「仲直りしたい」という感情が透けて見える。
喧嘩している自分を客観的に見ながら、それでも止まれない。
その人間くさい矛盾を、ふたりで音楽にしてしまう才能が羨ましい。
07 히키코모리ヒキコモリ (引きこもり)
日本語がそのままタイトルになっている。
社会から引きこもる視点のモノローグ。
自己否定の重さと、それでも外に出られない理由が、重いビートの上で正直に語られる。
「히키코모리」という日本語が韓国でも通じるほど、引きこもりは普遍的な現象になっている。
ギリボイがこのタイトルを選んだのは、ユーモアではなく、共感の手を差し伸べる行為だと思う。
引きこもることを責めるのではなく、そこにいる自分の内側を歌う。
パニック障害を経験したギリボイが書くこの曲は、「外に出られない」人間への、静かな連帯だ。
08 Yougottheswag
スウェグ(swag)を持っている相手への賛辞と嫉妬が混ざり合う一曲。
「スウェグがある」という言葉は、韓国ヒップホップでは一種のステータスだ。
それを持っている相手を称えながら、自分にはないかもしれないという焦りも滲む。
軽快なトラックの裏に、そういう自己参照が潜んでいる。
ギリボイらしい、笑えて少し苦い一曲だ。
09 VV feat. OLNL, Choi LB
クルーとの共作。
宇宙飛行としての連帯と、個人としての声が重なる。
VVというタイトルは「Very Very」の略とも「Victory Victory」とも読める。
ギリボイ、OLNL、Choi LBというクルーの核が集まって作ったトラックは、どこを切っても宇宙飛行の匂いがする。
3人の声が絡み合うとき、個人の輪郭がクルーの輪郭に溶けていく。
それがこのクルーの強さであり、ギリボイがここに属することを選んだ理由だと思う。
10 TV Star feat. Kim Seung-min (바보상자스타ババサンジャスタ)
「바보상자/バカ箱」はテレビの韓国語俗称。
テレビスターへの皮肉と、それでも求めてしまう存在への複雑な感情。
画面の向こうへの憧れと、そのむなしさ。
「バカ箱のスター」という名付け方が、テレビというメディアへの愛と軽蔑を同時に表している。
ギリボイ自身がSMTMで「テレビスター」になった経験があるからこそ、この曲の内側にあるものが重い。
有名になることへの憧れと、有名になることへの懐疑。
Kim Seung-minの鋭い声が、その矛盾を強調する。
11 고속ゴソッ (高速)
高速で流れ去る感情と時間。
疾走感のあるビートが、過ぎ去るものへの惜しみを加速させる。
「高速」という言葉は高速道路を連想させる。
一度乗ったら、途中で止まれない。
ただ前に進み続けるしかない。
卒業のアルバムに「高速」が入るのは、そういう必然があるからだと思う。
止まれない速さで過ぎていく時間の中で、人は卒業し続ける。
12 섞어ソクオ feat. Choi LB (混ぜて)
混ぜる、という行為のメタファー。
感情を、サウンドを、関係を混ぜる。
Choi LBとのコラボで、二人の声が混ざり合う。
「混ぜる」行為は、純粋なものを失う行為でもあり、新しいものを生む行為でもある。
卒業とは、それまでの自分に別の要素を「混ぜて」、新しい自分になることかもしれない。
タイトルのシンプルさに、そこまでの深みが詰まっている。
13 농밀ノンミル feat. Mad Clown, OLNL, Han Yo-han (濃密)
クルーが勢揃いした濃密なクロージングトラック。
ヒップホップとしての連帯を、これだけの顔ぶれで締める。
アルバムの卒業式を、みんなで祝う感覚。
Mad Clown、OLNL、Han Yo-hanというラッパーたちが一堂に会した、文字通り「濃密」な一曲だ。
各自の個性が衝突しながら、でも不思議とまとまっている。
それがクルーの力だ。
バラバラな個性が、同じ場所に立つことで新しい何かになる。
卒業というのは、そういうことかもしれない。
個人として何かを卒業しながら、みんなと一緒に新しいものへ向かう。
総評
「卒業式」というタイトルは、一つの時代の終わりを示している。
「引きこもり」「人体の不思議」「宇宙征服」「金を返せ」、これだけ雑多なタイトルが並ぶアルバムは、そうそうない。
でも聴き通すと、全部がギリボイの「卒業」に向かっている気がしてくる。
哀愁と実験性と、クルーへの愛着が、15曲にわたって鳴り続ける。
Just Musicという場所で育ったギリボイが、その場所を卒業しようとしている。
その緊張と寂しさと覚悟が、このアルバムの全曲に染み込んでいる。
一枚のアルバムがひとりの人間の決断の記録になっている。
そういうアルバムが好きだ。
「官能」「成人式」「機械」を経て「卒業」。
この4枚の系譜を通しで聴くと、ひとりの人間が成長し、苦しみ、立ち上がり、次へ進む物語が見える。
その物語の第4章として、このアルバムは完璧な仕事をしている。
個人的ランキング
1位 졸업 feat. George
2位 히키코모리
3位 농밀
Just Musicとの別れという文脈
ギリボイはこのアルバムの後、Just Musicを離れ独立することになる。
Swingsのもとで育ち、「官能的なアルバム」から「卒業式」まで4枚のフルアルバムを作った。
師匠との別れは、どんな師弟関係でも複雑なものだ。
感謝と寂しさと、自分への期待と、相手への申し訳なさ。
それらが混ざり合った感情が、このアルバムの「卒業」に重なっている。
もちろん、ギリボイはそれを直接歌っているわけではない。
でも「祝祭的な卒業ではなく、哀愁と諦念の卒業」として描かれた「졸업」を聴くと、そういう個人的な感情が滲んでいる気がする。
歌詞に書いていないことが、音に宿っていることがある。
このアルバムはそういう音楽だ。
Kid Milliとの出会いの記録として
「Wewantourmoneyback」にKid Milliが参加していることは、後から振り返ると大きな意味を持つ。
Kid Milliはこの後、韓国ヒップホップシーンを代表するラッパーのひとりになる。
彼が宇宙飛行に加わり、ギリボイとの関係が深まっていく。
その出発点がこの一曲だ。
ヒップホップの歴史は、こういう「出会いの記録」の積み重ねでもある。
あの曲でこのふたりが会った、あのアルバムでこのクルーが生まれた。
そういう点と点が後で線になる。
だからアルバムを時系列で聴くことに意味がある。
このアルバムは、韓国ヒップホップのひとつの系譜における重要な点だ。
「引きこもり」という普遍性
「히키코모리」という曲が、日本語をそのままタイトルにしていることには特別な意味がある。
引きこもりという概念は、もともと日本語で語られ始めた社会現象だ。
それが韓国にも広がり、韓国語ではなく日本語のままタイトルに使われている。
そのことが、この問題の普遍性を示している。
ギリボイ自身のパニック障害の経験も重なって、「外に出られない」ことへの共感が、この曲には込められている。
卒業を目前にしながら、世界から逃げたくなる気持ち。
そのリアルさが、このアルバムに深みを加えている。
「引きこもり」という言葉が、日韓の境界を越えて共鳴することの意味を、このアルバムは示している。
4枚の系譜を振り返って
「官能的なアルバム」「成人式」「機械的なアルバム」「卒業式」。
この4枚を並べると、一人の人間の成長の軌跡が見える。
官能から始まり、大人になり、機械的になろうとして、卒業する。
その物語は、誰もが経験するような普遍性を持ちながら、ギリボイという個人の固有性で満たされている。
4枚通して聴くことを、一度やってほしいと思う。
それぞれの変化と、それぞれの連続性が見えてくる。
1stで笑わせ、2ndで切なくさせ、3rdで考えさせ、4thで寂しくさせる。
この4枚の旅が、ギリボイというアーティストを理解する最良の方法だ。
「卒業式」は終わりではなく、次の章への入り口でもある。
この後のギリボイがどうなっていったかも、合わせて聴いてほしい。
「卒業」という言葉について
日本語で「卒業」と言うとき、高校や大学の卒業が真っ先に浮かぶ。
でも韓国語の「졸업」にも同じニュアンスがある。
ある段階を終えて次へ進む、という意味だ。
ギリボイがこの言葉を選んだのは、Just Musicという段階の終わりを意識していたからかもしれない。
でも「卒業」にはもう一つの意味がある。
「この感情を卒業する」「この関係を卒業する」という使われ方だ。
恋愛の終わり、青春の終わり、そういう個人的な「卒業」もこのアルバムには散りばめられている。
タイトル曲「졸업」を聴くと、その「卒業」が祝祭でも悲劇でもなく、ただ静かに終わる何かとして描かれている。
前を向いている、でも少し後ろを見ている。
その目線が、大人になってからの「卒業」の正直な感触だ。
このアルバムを聴く環境について
このアルバムは、深夜に一人で聴くのに向いている。
全15曲、静かな部屋でヘッドフォンをつけて聴く。
「宇宙征服」で気持ちが上がり、「卒業」で少し落ち着き、「引きこもり」で内側に向かい、「高速」で流され、「濃密」でまた上がって終わる。
その波の乗り方が心地良い。
または、長距離の移動中に流しておくのも良い。
電車や車の窓から景色が流れていくとき、このアルバムの疾走感とよく合う。
「高速」というタイトルの曲があることも、その感触を強める。
どこかへ向かいながら聴くアルバム、というのがこの4thに対する僕の印象だ。
Just Musicを離れて新しい場所へ向かうギリボイの姿が、そこに重なる。
このアルバムを聴く文脈
「卒業式」は、ギリボイのJust Music時代のひとつの集大成だ。
1stから4thまでの4枚を通して聴いてから改めてこのアルバムに戻ると、各曲のテーマが1stからの積み重ねの上にあることがわかる。
「引きこもり」のテーマは、1stのある種の自己卑下から続いている。
「卒業」の哀愁は、「成人式」の曖昧な感情から発展している。
「宇宙征服」は、3rdの宇宙飛行シリーズの延長線上にある。
それぞれの曲が、4枚の歴史の中で意味を持っている。
独立後のギリボイの音楽も、この4枚の土台の上に立っている。
Just Musicという環境が、ギリボイの音楽性を育てた。
そしてその環境を「卒業」することで、次の段階へ進んだ。
このアルバムを最後に、ギリボイは新しい自分の場所を作ることになる。
だからこの4thは、終わりであり、始まりの直前でもある。
そういうアルバムを、僕は愛おしいと思う。
「卒業式」の全15曲を通して聴いたとき、終わりに感じるのは「終わり」ではなく「次」だ。
「濃密」という最後のトラックで、クルーと一緒に盛大に締めたギリボイは、その後どこへ向かったのか。
この後のギリボイの音楽を聴けば、答えが出る。
でもこのアルバムだけでも、一つの旅として十分に完結している。
それが良いアルバムの条件だと思う。
クルーと個人の間で
このアルバムで印象的なのは、クルーとしての曲と個人としての曲のバランスだ。
「宇宙征服」「VV」「濃密」というクルー曲と、「卒業」「引きこもり」「高速」という個人の曲が、交互に配置されている。
クルーの熱量に温められながら、個人の感情に戻っていく。
その往復が、全15曲を飽きずに聴かせる構造になっている。
ギリボイは個人として孤独を歌えるし、クルーとして連帯を歌える。
その両方を同じアルバムで実現しているのが、この4thの特別さだ。
ラッパーとしてのギリボイ、4thまでの成長
1stアルバムのラップと、4thのラップを比べると、同じ人物とは思えないほど変わっている部分がある。
言葉の選択が精密になり、リズムの乗り方が洗練された。
でも変わっていないものもある。
それは「自分の感情に正直であること」だ。
どれだけ技術が上がっても、ギリボイは常に自分の内側から言葉を出し続けた。
その軸の一貫性が、このアーティストへの信頼を生んでいる。
「卒業式」でJust Musicを卒業した後のギリボイがどうなったか、それを知っている人はこのアルバムを聴きながら「まだここにいる」と思う。
卒業前の、最後の日々の記録。
そういう時間が、音楽として残っていることの価値を、僕はいつも感じている。
マルのひとこと
「卒業」のタイトル曲を聴くと、前に進む寂しさというものが確かにあると思う。
大げさでもなく、喜びでもなく、「仕方ない、行こう」という感触。
それがギリボイの正直さだと、僕は思っている。


