Zicoと僕。 지코와 나

韓国ヒップホップシーンで「アイドルでありアンダーグラウンドでもある」という稀有なポジションを築いたアーティストがいる。
それが지코ジコ、本名ウ・ジホ (우지호ウ・ジホ)だ。
2011年にBlock Bのリーダー兼メインラッパーとしてデビューし、グループの楽曲制作をほぼ独力で担いながら、並行してソロアーティストとしても頭角を現してきた。
フロウの多彩さ、ビートへの感度の高さ、そして場を引き込む圧倒的なステージ存在感は、K-POP界隈を超えて韓国ヒップホップファンからも高く評価されている。

2020年にリリースした「아무노래アムノレ (Any Song)」はCircle (旧Gaon) デジタルチャートで史上最長の7週連続1位を記録し、韓国中にチャレンジ動画ブームを巻き起こした。
2024年にはBLACKPINKのJENNIEとのコラボ「Spot!」がBillboard World Digital Song Salesで首位を獲得し、グローバルな人気を改めて証明している。
自ら立ち上げたレーベル KOZ Entertainment はHYBEの傘下に入り、現在も精力的に活動中だ。

本記事では、Zicoの生い立ちから現在に至るまでの軌跡を、ディスコグラフィーとともに詳しく紹介する。
K-HIPHOPへの入り口としても、すでにZicoのファンの方がより深く知るためにも、ぜひ最後まで読んでほしい。


目次
1. アーティスト概要
2. 主要ディスコグラフィー
3. Block Bのリーダーとして
4. ソロアーティストとしての確立
5. KOZ Entertainmentの設立とHYBE入り
6. 代表曲を深掘りする
7. プロデューサーとしての側面
8. マルのひとこと


アーティスト概要

項目内容
芸名ZICO (지코ジコ)
本名禹智皓 (우지호ウ・ジホ / ウ・ジホ)
生年月日1992年9月14日
出身地韓国・ソウル
身長182 cm
所属グループBlock B (2011年〜)
ソロレーベルKOZ Entertainment (2019年設立、現HYBEグループ)
職業ラッパー、シンガーソングライター、音楽プロデューサー、レーベルオーナー
デビュー2011年4月15日 (Block B)、2014年 (ソロ)
MBTIENTJ

主要ディスコグラフィー

以下はZicoのソロ名義による主なリリースをまとめたものだ。
Block Bとしての作品は含んでいない。

年タイトル種別備考
2014Tough Cookie (feat. Don Mills)シングルソロデビュー曲
2015Galleryミニアルバム (EP)ソロ初のEP
2015Boys And Girls (feat. G.Soul)シングル–
2016Bermuda Triangle (feat. Crush, Dean)シングル–
2016Break Up 2 Make Up (feat. Hanhae)シングル–
2017Televisionミニアルバム (EP)–
2017She’s a Babyシングル–
2018SoulMate (feat. IU)シングル–
2019Thinking (Part.1 & Part.2)スタジオアルバム初のフルアルバム
2020아무노래アムノレ (Any Song)シングルCircleチャート史上最長7週連続1位
2020Random Boxミニアルバム (EP)–
2022Grown Ass Kidミニアルバム (EP)–
2024Spot! (feat. JENNIE)シングルBillboard World Digital Song Sales 1位

Block Bのリーダーとして

Zicoは幼少期から音楽に親しみ、10代の頃からラップの練習を続けていたとされる。
練習生時代を経て、2011年4月15日、7人組ボーイグループBlock Bのリーダー兼メインラッパーとしてデビューした。
デビュー曲「Freeze」を含むミニアルバム「Welcome to the Block」の楽曲制作をほぼZico自身が手がけており、10代にしてすでにプロデューサーとしての才覚を発揮していた。

Block Bはデビュー当初からアイドルグループとしてはめずらしいヒップホップ色の強いサウンドで注目を集めた。
Zicoはグループの楽曲のほぼすべての作詞・作曲・プロデュースを担い、バンドの音楽的アイデンティティを形成する核として機能した。
「Nillili Mambo」「Very Good」「Her」など、キャッチーなフックとラップパートが融合したBlock Bの代表曲の多くは、Zicoの手によるものだ。

また、グループが所属事務所との契約トラブルを経験した際も、Zicoはリーダーとしてメンバーをまとめ、Block Bが自分たちの音楽を続けるための道筋をつけた。
この経験は後のレーベル設立という意思決定にもつながっていると考えられる。

グループ活動と並行しながら、Zicoはソロや他アーティストとのコラボレーションも積極的に行い、アイドルグループのリーダーという枠に収まらない独自のポジションを築いていった。
K-POP界とヒップホップ界の双方でリスペクトを受けるという、当時の韓国音楽シーンでは非常にまれな存在へと成長していく。

Block Bとしての代表曲には「Nillili Mambo」「Very Good」「Her」「Jackpot」などがある。
これらはどれもZicoが中心になって制作した楽曲で、アイドルポップとヒップホップを融合させた独特のサウンドが大きな特徴だ。
特に「Very Good」は国内外で幅広い人気を集め、Block Bの名前をK-POP以外のリスナー層にも広めるきっかけとなった曲のひとつだ。
Block Bはグループとして現在も活動を続けており、メンバーそれぞれがソロや他の形で活動しながらも、定期的にグループとしての動きを見せている。

ソロアーティストとしての確立

2014年、ZicoはBlock B活動と並行してソロシングル「Tough Cookie」をリリースし、ソロデビューを果たした。
Don Millsをフィーチャーしたこの曲は、挑発的なリリックとハードなビートで韓国ヒップホップファンに強い印象を残した。

2015年にはソロ初のミニアルバム「Gallery」を発表し、本格的なソロ活動をスタートさせた。
同年にリリースした「Boys And Girls (feat. G.Soul)」や「Life Is Ninano」など、ポップ寄りのアプローチも取り入れながら、より幅広いリスナーへのアプローチを図っていく。

2016年の「Bermuda Triangle」は特に話題になった一曲だ。
Crush、Deanという当時の韓国R&B/ヒップホップシーンを代表するアーティストとのコラボレーションは、Zicoが同世代のトップアーティストたちから認められていることを示すものとして受け止められた。
この3人の組み合わせはトレンドをリードする存在として今も語り継がれている。

2017年のミニアルバム「Television」ではさらに音楽の幅を広げ、ダンスポップ寄りのトラックからエモーショナルなバラードまで多彩なアプローチを見せた。
同年リリースの「She’s a Baby」は軽快でキャッチーなサウンドで広い支持を得た。

2018年にはIUをフィーチャーした「SoulMate」をリリース。
IUといえばK-POP界最大級の人気を誇る実力派シンガーであり、このコラボはZicoの活動の幅がさらに広がったことを象徴するリリースとなった。
柔らかいメロディラインにZicoのラップが絡む構成は、既存のリスナー層とは異なる新しいファン層を引き込むことにも成功した。
この曲はKOZ設立前夜に近い時期のリリースであり、Zicoがメインストリームとアンダーグラウンド双方に橋を架ける存在として確立されつつあることを強く印象づけた。

そして2019年、ついに初のフルアルバム「Thinking」を2部構成でリリースする。
ソロデビューから5年、Block Bでの活動も並行しながら積み上げてきた経験と技術が凝縮された作品で、音楽的な幅広さとZicoというアーティストのアイデンティティが一枚のアルバムの中で整理された形で提示された。
「Thinking Part.1」では内省的でシリアスな側面が強く出ており、「Thinking Part.2」ではより軽快でポップな面も見せるという二面性の構成は、Zico自身の多面的な音楽観を反映している。
このアルバムを機に、Zicoはソロアーティストとしての評価が一段階上がったと多くのメディアが指摘した。

KOZ Entertainmentの設立とHYBE入り

2019年1月10日、Zicoは自身のレーベル「KOZ Entertainment」を設立した。
KOZは「King of the Zungle」の略称であり、自分の音楽に対して完全なコントロールを持つという強い意志が込められたネーミングだ。

独立レーベルを立ち上げることで、Zicoは楽曲制作から発信まで、すべてのクリエイティブな判断を自分自身の手に委ねることができるようになった。
レーベルオーナーとして他のアーティストのマネジメントやプロデュースにも関わるようになり、アーティストとしての枠を超えた存在感を示していく。

2020年11月、KOZ EntertainmentはHYBEコーポレーション (当時BigHit Entertainment) に買収されることが発表された。
HYBEはBTSが所属する国内最大規模の音楽エンターテイメント企業であり、KOZはHYBEのレーベルの一つとして運営されることになった。
この買収によりZicoは引き続きKOZの代表として活動しながら、HYBEの巨大なインフラを活用できる環境を手に入れた。

HYBE入り後も、ZicoはKOZのクリエイティブな方向性を維持しながら積極的なリリースを続けている。
2020年の「Any Song」、2022年のミニアルバム「Grown Ass Kid」、そして2024年の「Spot!」と、ヒットを連発している現状を見れば、この選択が音楽活動の面でも成功していることは明らかだ。

「Grown Ass Kid」は2022年にリリースされた4枚目のミニアルバムで、タイトルが示す通り「大人になった自分」というテーマが全体に流れている作品だ。
20代から30代への移行期において自分自身の変化を音楽で表現したこのEPは、リスナーに対してZicoの成熟したアーティスト像を提示する一枚となった。
HYBE傘下となったことでレーベルの規模は大きくなりながらも、Zicoの楽曲が持つ個性や尖りは失われておらず、大きな組織の中でも自分のスタンスを貫くことができている様子がうかがえる。

代表曲を深掘りする

Zicoの楽曲の中でも、特に大きな話題を集めた3曲について詳しく見ていこう。

아무노래アムノレ (Any Song) – 2020年

「아무노래アムノレ」は、日本語で「なんでもいい歌」という意味を持つ楽曲だ。
軽快なピアノのリフをベースにしたアップテンポのトラックで、「なんでもいいからとにかく踊ろう」というシンプルで普遍的なメッセージが込められている。
2020年1月のリリース直後から爆発的な人気を獲得し、Circleデジタルチャートで7週連続1位という当時の韓国音楽チャート史上最長記録を樹立した。

この曲が社会現象になった最大の要因は「Any Song Challenge」と呼ばれたSNSチャレンジだ。
Zicoが自ら踊るビデオをSNSに投稿したことがきっかけとなり、一般ユーザーからK-POP各グループのメンバー、俳優や有名人まで、数えきれないほどの人々が参加する巨大なバイラル現象になった。
「Any Song Challenge」は2020年前半の韓国ポップカルチャーにおける最大のトレンドの一つとして記録されている。

曲としての完成度もさることながら、SNSとの親和性を意識したプロモーション戦略が見事にはまった事例として、韓国音楽業界でも語り継がれている。
Circleチャートは同曲を2020年上半期の最多ストリーミング曲として認定した。

Spot! (feat. JENNIE) – 2024年

2024年4月26日にKOZ Entertainmentからリリースされた「Spot!」は、BLACKPINKのJENNIEとのコラボレーション曲だ。
ファンキーでエネルギッシュなビートに、ZicoとJENNIEのキャラクターが絶妙に絡み合う一曲で、リリース直後から韓国内外で大きな話題となった。

「Spot!」はリリース後に韓国のストリーミングチャートのトップを3週間維持し、Billboard World Digital Song Salesでも1位を獲得した。
これはZicoにとってBillboardチャートでの初の首位獲得であり、ソロアーティストとしてのグローバルな影響力を証明するマイルストーンとなった。
JENNIEの世界的な人気と、Zicoの長年積み上げてきた音楽的実力が合わさった結果が、この大きな成功として結実した形だ。

Bermuda Triangle (feat. Crush, Dean) – 2016年

2016年にリリースされた「Bermuda Triangle」は、Zico、Crush、Deanという当時の韓国R&B/ヒップホップシーンを代表する3人が揃ったコラボ曲だ。
スモーキーで気だるいムードのトラックに、それぞれのアーティストの個性が鮮明に表れており、リリース当時から「完璧なコラボ」と称賛された。

この3人の組み合わせは2010年代半ばの韓国R&BとヒップホップのNewEraを象徴するものとして、韓国音楽シーンの転換点を示す楽曲として今も語り継がれている。
Zicoにとっても、アイドルグループのメンバーとしてではなく、ヒップホップアーティストとして純粋に認められたという意味で、ソロキャリアにおける非常に重要な一曲として位置づけられている。

プロデューサーとしての側面

Zicoはラッパーとしての活動と同時に、プロデューサーとしても高い評価を受けている。
Block Bのほぼ全楽曲を手がけてきたことは前述したが、それに加えてソロ楽曲や他アーティストへの楽曲提供、フィーチャリング参加も数多く行ってきた。

作詞・作曲・プロデュースを一人でこなせるアーティストは、K-POP業界では依然として少数派だ。
多くのアイドルグループでは楽曲制作を専門のクリエイターに依頼するのが一般的であるため、Zicoのようにグループリーダーを務めながら楽曲制作も担うというスタイルは、韓国エンターテイメントの中でもひときわ目立つ存在感を放っている。

KOZ Entertainmentを設立してからは、所属アーティストのプロデュースにも携わるようになった。
自分が音楽を作るだけでなく、次世代のアーティストを育て、音楽シーンに送り出すという役割を担いはじめていることは、Zicoのキャリアの新たな章の始まりを示している。

ラッパーとしてのフロウのバリエーションも特筆すべきポイントだ。
高速ラップから朗々としたメロディラップ、さらにはポップシンギングまで、Zicoは楽曲ごとにアプローチを変えながら一貫したアイデンティティを保っている。
このスタイルの柔軟性こそが、彼がK-POP界とヒップホップ界の両方で長期間にわたって存在感を示し続けられている理由のひとつだろう。

音楽だけでなく、ビジュアルディレクションやMVのコンセプト決定にも深く関わると言われており、アーティストとしての表現を細部まで自分でコントロールするというスタンスは、彼の音楽に対する真摯な姿勢を物語っている。

韓国ヒップホップシーンにおいて、「アイドル出身のラッパー」が真剣に受け止められるようになったことには、Zicoの存在が大きな役割を果たしていると指摘する声は多い。
彼が証明したのは、アイドルグループのメンバーであることとヒップホップアーティストとして評価されることは矛盾しないということだ。
そのスタンスは後に続く多くのK-POP発ラッパーたちにとって、ひとつの道標となっている。

Zicoはラジオやトークショーなど露出の多いメディアでも積極的に自己表現を行い、音楽以外の面でもキャラクターを確立している。
ユーモアのセンスと自信に溢れたトークは多くのファンに愛されており、アーティストとしての実力と人間的な魅力の両面でファンを惹きつけてきた。
また、自身の音楽ルーツや影響を受けたアーティストについても積極的に語っており、韓国ヒップホップの歴史や系譜に対する深いリスペクトが感じられる。
こうした姿勢がヒップホップコミュニティからの信頼を勝ち取り、アイドル出身でありながらも「本物のラッパー」として認められるきっかけになったと言えるだろう。

Zicoは現在もBlock Bのメンバーとして、そしてKOZ EntertainmentのCEOとして、さらにはソロアーティストとして、複数の顔を持ちながらシーンで活躍し続けている。
2024年の「Spot!」の成功が示すように、10年以上のキャリアを経てもなお進化を続けるZicoの次の一手から、目が離せない。

K-HIPHOPを語るうえでZicoは避けて通れない存在だ。
アイドルシーンとヒップホップシーンという、ともすれば相容れないと思われてきた二つの世界の橋渡し役を担ってきた彼の軌跡は、韓国音楽の歴史の中でひとつの大きな流れとして刻まれている。
ラッパー、プロデューサー、レーベルオーナーという複数の役割を同時にこなしながら、それぞれで高い水準を維持してきたという事実は、Zicoが単なる人気アーティストではなく、韓国音楽産業のクリエイティブな推進力の一端を担う存在であることを示している。
これからどんな音楽を生み出し、どんなアーティストをKOZから世に送り出していくのか、引き続き追いかけていきたいアーティストだ。

マルのひとこと

僕が初めてZicoをちゃんと聴いたのは「Bermuda Triangle」だったんだけど、あの3人が同じトラックに乗ってるのを聴いたとき、「韓国の音楽ってここまで来てるんだ」と素直に驚いた。
「Any Song」のチャレンジ動画を見ながら、音楽がSNS経由で人を動かす瞬間ってこういうことか、とあらためて実感した一曲でもある。
ラッパーとして突き抜けながらレーベルオーナーとしても存在感を放つ、そのスケールの大きさがZicoをずっと追いかけ続けたい理由の一つだ。

コメント