「이혼서류(離婚届)」というタイトルを初めて見た時、音楽のタイトルとして使うのかと思った。
聴いたら、その「書類という冷たさ」がそのまま音になっていて、ギリボイがただのラッパーじゃないことを改めて思い知らされた。
「제설(除雪)」も、「이혼서류(離婚届)」も、「을(乙)」も、どれもが「こんな言葉を曲名にするのか」という驚きを与える。
それが毎回新鮮で、それがギリボイを聴き続ける理由の一つになっている。
このアルバムから後のギリボイが、どんどんと言葉の使い方が深まっていくことを考えると、このアルバムは入口であり、同時に到達点でもある。
「致命的なアルバム3」、その名の通り、何かに致命傷を与えた一枚だ。
そしてその致命傷は、聴いた側にも及ぶ。
気づいたら、ギリボイの言葉に深く刺さっている自分がいる。
ギリボイを初めて聴く人にも、ギリボイのファンにも、このアルバムは異なる意味で重要だ。
初めての人には「こんな音楽があるのか」という驚きを、ファンには「ここで何かが変わった」という転換点として。
「치명적인 앨범3」というタイトルをそのまま受け取ってほしい。
これは致命的なアルバムだ。
一度聴くと、それ以前に戻れない。
「별이지고있다(星が落ちていく)」のイントロから聴き始めて、最後の「호랑이소굴(虎の穴)」が終わるまで、ギリボイの声に引き連れて旅をすることになる。
その旅が終わった後、何かが変わっている。
それが「致命的」ということだ。
音楽で何かが「致命的」に変わるとしたら、それは音楽の最も純粋な力だ。
ギリボイはこのアルバムでその力を発揮した。
そして、その力は今も有効だ。
「除雪」という言葉一つでこれほどの感情を喚起できる人が、他にどれだけいるだろうか。
「離婚届」という書類でここまでの詩的なイメージを作れる人が、他にどれだけいるだろうか。
ギリボイは言葉の魔術師だが、その魔術は特別な言葉を使うのではなく、日常の言葉に特別な意味を見出すことから生まれる。
それがこのアルバムを繰り返し聴き返すたびに、新しい発見がある理由だ。
「치명적인 앨범3」、このアルバムを聴いてギリボイの世界に足を踏み入れた人は、そこから抜け出せなくなる。
それが「致命的」ということだ。
喜んで引き込まれてほしい。
ギリボイの言葉に、喜んで刺されてほしい。
このアルバムはそういう一枚だ。
韓国語がわからなくても伝わってくる何かがある。
それが音楽の普遍性で、ギリボイの言葉の力だ。
2019年12月に生まれたこのアルバムが、2025年の今も古くなっていないことが、その証拠だ。
感情に賞味期限はなく、言葉に賞味期限はない。
ギリボイが音楽に込めたものは、時間を超えて届き続ける。
「치명적인 앨범3(致命的なアルバム3)」、その致命性は永続する。
ギリボイのキャリアをこれから追いかける人にも、長年のファンにも、このアルバムは常に新しい何かを見せてくれる。
それが傑作の条件で、このアルバムはその条件を満たしている。
「치명적(致命的)」、その一言がふさわしい。
ギリボイのアルバムの中でも、この一枚は特別な重みを持って、今も僕の棚に居続けている。
▶ アーティストページ:Giriboyと僕。
▶ アーティストページ:Giriboyと僕。
2019年12月2日リリース。
「치명적인 앨범/致命的なアルバム」シリーズ第3弾。
ギリボイの作風が大きく変わる、転換点の一枚だ。
「致命的」という言葉が、ここで初めて本当の重みを持つ。
Just Music所属時代の7枚目のフルアルバム。
2019年に6枚目(6月)と7枚目(12月)を立て続けにリリースするという精力的な活動の中で生まれた作品だ。
このアルバムを境に、ギリボイはポップなユーモアから感性バラードへ、明確に軸足を移した。
- 目次
- 作品概要
- 「치명적인チミョンジョギン 앨범」シリーズについて
- アルバムの流れ
- 各曲紹介
- 01 별이지고있다ビョルイジゴイッダ(星が落ちていく)
- 02 제설ジェソル★タイトル曲
- 03 와츠롱ワチュロン feat. YUNHWAY(What’s Wrong)★タイトル曲
- 04 이때다イッテダ(今がその時だ)
- 05 집으로ジプウロ(家へ)
- 06 증오ジュンオ feat. 안병웅アンビョンウン(憎悪)
- 07 써니데이ッソニデイ feat. nafla(Sunny Day)
- 08 거지ゴジ feat. YUNHWAY, Jhnovr, JUSTHIS(乞食)
- 09 이혼서류イホンソリュ(離婚届)
- 10 을ウル feat. BIG Naughty(乙)
- 11 호랑이소굴ホランイソグル feat. Jvcki Wai(虎の穴)
- ギリボイの転換点として
- 総評
- JUSTHISとギリボイ
- YUNHWAYとの共演
- BIG Naughtyについて
- naflaとJvcki Waiについて
- 「제설(除雪)」の言葉の力
- 「치명적인チミョンジョギン 앨범3」が残したもの
- 個人的ランキング
- マルのひとこと
目次
- 作品概要
- 「치명적인 앨범」シリーズについて
- アルバムの流れ
- 各曲紹介
- ギリボイの転換点として
- 総評
- JUSTHISとギリボイ
- YUNHWAYとの共演
- BIG Naughtyについて
- naflaとJvcki Waiについて
- 「제설(除雪)」の言葉の力
- 「치명적인 앨범3」が残したもの
- 個人的ランキング
- マルのひとこと
作品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売日 | 2019年12月2日 |
| 形態 | 7thフルアルバム(全11曲) |
| ジャンル | ヒップホップ / バラード |
| 所属 | Just Music |
| タイトル曲 | 제설 / 와츠롱(What’s Wrong) |
| 客演 | YUNHWAY / 안병웅 / nafla / Jhnovr / JUSTHIS / BIG Naughty / Jvcki Wai |
| レーベル | Just Music Entertainment |
「치명적인チミョンジョギン 앨범」シリーズについて
「치명적인 앨범(致命的なアルバム)」は、ギリボイがデビュー初期からEP作品に付けてきたシリーズ名だ。
「致命的」という大げさな言葉と、若いギリボイのユーモアが混ざった命名だった。
しかしこの3作目で、そのシリーズ名が最も重くなった。
「致命的なアルバム」が、本当に何かを「致命的に」変えてしまう作品になったからだ。
笑えるタイトルとして使ってきた「致命的」という言葉が、ここで初めて音楽の内容と一致する。
シリーズ名の意味が遡及的に変わる瞬間を、ギリボイは作ってしまった。
アルバムの流れ
このアルバムを境に、ギリボイは変わった。
それまでのビョンマッ(병맛/おふざけの気配も強いユーモア)とウィットに富んだ作風から、감성バラードの方向へ大きく舵を切る。
タイトル曲が2つある。
叙情的なバラード「제설」と、トラップ系の「와츠롱」。
正反対の2曲がタイトルを張る構成が、この転換期のアルバムの二面性を象徴している。
ひとつのアルバムで「過去のギリボイ」と「新しいギリボイ」が同居しているような感覚だ。
全11曲という、ギリボイのアルバムの中では比較的ボリュームのある構成。
「별이지고있다(星が落ちていく)」という詩的な幕開けから、「호랑이소굴(虎の穴)」という攻撃的な締めまで、長い旅をするようなアルバムだ。
各曲紹介
01 별이지고있다ビョルイジゴイッダ(星が落ちていく)
タイトルそのままに、落下と衰退のイメージでアルバムが始まる。
星が落ちる、という映像が、何かの終わりを予感させる静かな幕開け。
星が輝くのではなく「落ちていく」という方向性が、このアルバム全体のムードを設定している。
上昇や輝きではなく、静かな落下と終焉。
しかし「落ちる星」にはロマンもある。
流れ星は、落ちるからこそ美しい。
このアルバムが描く「転換」は、終わりであり同時に始まりでもある。
そのダブルミーニングがこのイントロに込められている。
02 제설ジェソル★タイトル曲
「除雪」、雪を除く作業。
積み重なったものを、丁寧に取り除いていく。
叙情的な韓国バラードの感性を取り込んだ一曲で、静寂と孤独の中で何かを整理しようとする姿がある。
「제설」というタイトルに、これだけの感情を込められるのが、ギリボイだ。
「除雪」という言葉は、冬の朝の地味な作業を指す。
雪が降った翌朝、誰かが黙々と雪をかいて道を作る。
派手でもなく、見返りもなく、ただ必要だからやる。
その「黙々とした整理」が、関係の終わりやある時代の終わりの比喩として機能している。
「除雪」でなければ出てこない詩的なイメージを、ポップミュージックに持ち込む。
これがギリボイの言葉の使い方だ。
03 와츠롱ワチュロン feat. YUNHWAY(What’s Wrong)★タイトル曲
「제설」と対を成すもう一方のタイトル曲。
トラップ系のビートに乗せた、攻撃的な問いかけ。
「何が悪いんだ」という言葉は、怒りでもあり、問いでもある。
このふたつのタイトル曲が同じアルバムに収まっているのが、転換期の記録としてリアルだ。
YUNHWAYは当時の韓国ヒップホップシーンで注目されていたアーティスト。
「What’s Wrong(ワチュロン)」という英語表現を韓国語の発音で表記するタイトルも、ギリボイらしいセンスだ。
除雪という静けさとWhat’s Wrongという攻撃性、この2つのタイトル曲が同じアルバムで共存することが、ギリボイの複雑さを表している。
04 이때다イッテダ(今がその時だ)
「今がその時だ」という確信の瞬間を歌う。
迷いながらも踏み出す、あるいは踏み出してしまった後の覚悟。
「転換期」というこのアルバムのテーマを、最も直接的に表した曲かもしれない。
「今だ」と思う瞬間、その感覚の鋭さを音楽にしている。
05 집으로ジプウロ(家へ)
「家へ帰る」こと、その単純な行為に込められた疲れと安堵。
外の世界での戦いを経て、帰る場所を求める静かな曲。
「家」という言葉が、単なる物理的な場所ではなく、自分が自分でいられる場所として機能している。
このアルバムの中で、最も「休息」に近い感触の曲だ。
06 증오ジュンオ feat. 안병웅アンビョンウン(憎悪)
「憎悪」。
ギリボイのラブソングの多くが「好き」と「嫌い」の間を漂うが、この曲は珍しく「憎悪」という言葉を正面に置く。
안병웅とのコラボで、重さが増している。
안병웅は韓国インディーシーンで活躍するシンガーで、感情の深い部分を掘り起こす声の持ち主だ。
「愛」の反対側にある「憎悪」を正直に歌うこと、それはギリボイが感情表現においていかに妥協しないかを示している。
ネガティブな感情も、それが本物である限り、音楽にする価値がある、という姿勢がこの曲に表れている。
07 써니데이ッソニデイ feat. nafla(Sunny Day)
「晴れた日」というタイトルの裏に、内省的なムードが漂う。
naflaとのコラボで、晴れているのに晴れない気持ちを歌う。
ギリボイのアルバムに明るいタイトルが出てきたら、だいたい疑ってかかるほうがいい。
naflaはJust Musicの看板アーティストのひとりで、このコラボは同レーベルの兄弟的な関係性を反映している。
晴れた日に感じる空虚感、それはギリボイが得意とする「ズレ」の感覚だ。
世界は明るいのに、自分の中は薄曇り。
Sunny Dayというタイトルがそのギャップをより鮮明にしている。
08 거지ゴジ feat. YUNHWAY, Jhnovr, JUSTHIS(乞食)
豪華な4人によるポッセカット。
「거지」という自己卑下の言葉を、これだけの面々が集まって歌う。
社会の底辺にいる感覚と、それでも手を放さないプライドが、重いビートの上で鳴り続ける。
JUSTHISはこのアルバムの客演陣の中でも特に個性的なラッパーで、哲学的かつ辛辣なリリックが持ち味だ。
「乞食」という自己規定を4人でシェアすることで、個人の敗北感が集合的な連帯になる。
「100년제전문대학」の「痛い」と同じ構造だが、こちらはより攻撃的だ。
09 이혼서류イホンソリュ(離婚届)
「離婚届」。
関係の終わりを、書類という具体的なものに置き換えた一曲。
感情ではなく手続きとして終わっていく、その冷たさと静けさが切ない。
「離婚」という法的な手続きを歌にすること、しかもそれが「届」という書類の形で提示されること。
感情的な別れではなく、行政的な別れ。
書いてハンコを押して提出するという手続きの無機質さが、終わりの冷たさを際立てる。
このタイトルを思いついた時点で、ギリボイはこの曲に勝っていた。
10 을ウル feat. BIG Naughty(乙)
韓国語の「甲乙(갑을)」は、上下関係・権力の非対称性を示す。
「乙(을)」は弱い側だ。
BIG Naughty(서동현)と共に、従属的な立場の感覚を真正面から歌う。
BIG Naughtyは当時10代の新鋭ラッパーで、後に韓国のヒップホップシーンを代表するアーティストへと成長する。
「갑을 관계(甲乙関係)」は、韓国社会の至る所に存在する権力の非対称性を指す言葉として広く使われている。
職場でも、恋愛でも、誰かが「甲(強い側)」になり、誰かが「乙(弱い側)」になる。
その「乙」であることの感覚を、音楽として鳴らす。
11 호랑이소굴ホランイソグル feat. Jvcki Wai(虎の穴)
Jvcki Waiとの攻撃的なクロージングトラック。
「虎の穴」という危険な場所に自ら飛び込む覚悟(あるいはすでにそこにいる宣言)でアルバムを締める。
Jvcki Waiはカリスマ的な女性ラッパーで、そのアグレッシブなスタイルがこの曲の「虎の穴」という世界観に完璧にはまっている。
「星が落ちていく」という静かな幕開けから、「虎の穴」という攻撃的なクロージングへ。
この対比がアルバム全体を構成する大きなアーチだ。
転換期のアルバムに相応しい、覚悟を持った締め方だ。
ギリボイの転換点として
このアルバムが「before/after」を分ける一枚だと言われる理由は、サウンドだけでなく、ギリボイの言葉の使い方が変わったからだ。
「除雪(제설)」「離婚届(이혼서류)」「乙(을)」という言葉の選択に、それまでのポップなユーモアとは異なる重さがある。
SFとファッションで現実から逃げようとした前作から、現実の痛みをそのまま音楽にする姿勢へ。
「致命的なアルバム」というシリーズ名が、ここで最も文字通りの意味を持つ。
何かに「致命傷」を与えるか、与えられるか。
このアルバムでギリボイは、自分のそれまでのスタイルに、自ら致命傷を与えた。
総評
ギリボイのディスコグラフィーにおける「before/after」を分けるアルバムがあるとしたら、それがこの7집(7枚目)だ。
笑えるアルバム名を卒業し、「致命的」という言葉を本当に使い始めた。
「除雪」というタイトルで感情を整理し、「離婚届」という書類で別れを書く。
ここからギリボイのバラードが、本格的に深くなっていく。
ふたつのタイトル曲が持つ方向性の違い、「静」と「動」の11曲、そして「星が落ちていく」から「虎の穴」への旅。
ギリボイのキャリアを理解する上で、このアルバムは外せない一枚だ。
JUSTHISとギリボイ
「거지(乞食)」で参加したJUSTHISは、韓国ヒップホップシーンで最も哲学的・文学的なラッパーの一人として知られる。
その難解で密度の高い歌詞は、一度聴いただけでは意味が掴めないことも多いが、繰り返し聴くうちに言葉の重なりが見えてくる。
ギリボイとJUSTHISという組み合わせは、互いの個性を引き立て合う化学反応があった。
「거지(乞食)」という曲で、JUSTHISの深い絶望感とギリボイのユーモアが交差する。
「乞食」を自称することの自虐と誇りが入り混じった、複雑な感情を音楽にした一曲だ。
社会の底辺にいる感覚を、これだけの才能を持つラッパーたちが集まって歌うことの逆説的な強さが、この曲の核だ。
YUNHWAYとの共演
このアルバムで2曲(「와츠롱(What’s Wrong)」と「거지(乞食)」)に参加したYUNHWAYは、当時の韓国インディーヒップホップシーンで注目されていたアーティストだ。
メインストリームのヒップホップとは一線を画したサウンドと、独特の世界観を持っている。
「와츠롱」でのギリボイとの掛け合いは、攻撃的でエネルギッシュで、このアルバムで最もスリリングな瞬間の一つだ。
「거지」ではさらに多くのラッパーと並んで参加し、ポッセカットとしての厚みを出している。
このアルバムの客演陣の構成は、ギリボイのネットワークの広さを示している。
Just Musicの同僚(nafla)、後輩(BIG Naughty)、個性派の外部アーティスト(YUNHWAY、JUSTHIS、Jvcki Wai)という多様な組み合わせが、11曲の中に豊かなテクスチャーを生んでいる。
BIG Naughtyについて
「을(乙)」でギリボイとコラボしたBIG Naughtyは、本名서동현、2000年生まれの天才型ラッパーだ。
10代でデビューし、「Show Me The Money 9」に出演して一躍注目を集めた。
2019年当時はまだ10代後半だったが、その歌詞の成熟度はすでに段違いだった。
ギリボイが若い才能を見抜く目を持っていることを、このコラボは証明している。
「甲乙(갑을)関係」という概念は韓国社会において非常に重要なキーワードだ。
職場での上下関係、取引先と発注先の力関係、そしてあらゆる人間関係に潜む権力の非対称性。
ギリボイが「乙(을)」という立場から歌い、BIG Naughtyがそれに共鳴する。
世代を超えた「弱者」の連帯が、この曲に流れている。
naflaとJvcki Waiについて
このアルバムにはnaflaとJvcki Waiという、異なるタイプの個性が参加している。
naflaはJust Musicの同期的な存在で、ギリボイとのコラボはこれが複数回目だ。
落ち着いたフロウと内省的な歌詞が持ち味で、「써니데이(Sunny Day)」での共演は、晴れた日の空虚感を二人で静かに共有するような一曲だ。
Jvcki Waiは女性ラッパーとして韓国シーンに強烈な存在感を放つアーティストだ。
攻撃的でカリスマ的なスタイルが「虎の穴(호랑이소굴)」というアルバムのクロージングに完璧にはまっている。
静かな「星が落ちていく」で始まり、Jvcki Waiとの「虎の穴」で締めるこのアルバムのダイナミクスは、計算し尽くされている。
「제설(除雪)」の言葉の力
「제설(除雪)」というタイトルの発明性について、もう少し掘り下げたい。
雪を除く作業は、日常の中で最も地味な労働の一つだ。
前夜に降り積もった雪を、黙々とスコップで除けていく。
誰かが見ているわけでもなく、華やかでもなく、ただ必要だからやる。
その作業を別れの比喩として使うこと、それがギリボイの詩的センスの核だ。
積み重なった感情を、一つずつ丁寧に除けていく作業。
泣くわけでもなく、叫ぶわけでもなく、ただ静かに整理していく。
「除雪」という日常の作業が、感情の整理という内面の行為と重なる。
このタイトルだけで、曲の内容がわかる。
それほど的確な言葉だ。
「치명적인チミョンジョギン 앨범3」が残したもの
このアルバムは、ギリボイのキャリアを「治前」と「治後」に分ける分水嶺だ。
「治」はもちろん「致命的」の「致」だ。
笑えるシリーズ名として使っていた「致命的」という言葉が、このアルバムで本当の重みを持つ。
この7집以降、ギリボイのアルバムからビョンマッ的なユーモアは後退し、より内省的なバラードと日常の観察が前面に出てくる。
「9컷(9カット)」での完成度の高いバラード路線も、「avante」での逆説的な前進も、「소설 쓰고 자빠졌네」での日常の断片も、全部この7집で蒔かれた種が育ったものだ。
ギリボイを追いかけるなら、この「치명적인 앨범3」は外せない。
個人的ランキング
1位 제설
2位 이혼서류
3位 을 feat. BIG Naughty
マルのひとこと
「이혼서류(離婚届)」というタイトルを初めて見た時、音楽のタイトルとして使うのかと思った。
聴いたら、その「書類という冷たさ」がそのまま音になっていて、ギリボイがただのラッパーじゃないことを改めて思い知らされた。
「제설(除雪)」も、「이혼서류(離婚届)」も、「을(乙)」も、どれもが「こんな言葉を曲名にするのか」という驚きを与える。
それが毎回新鮮で、それがギリボイを聴き続ける理由の一つになっている。
このアルバムから後のギリボイが、どんどんと言葉の使い方が深まっていくことを考えると、このアルバムは入口であり、同時に到達点でもある。
「致命的なアルバム3」、その名の通り、何かに致命傷を与えた一枚だ。
そしてその致命傷は、聴いた側にも及ぶ。
気づいたら、ギリボイの言葉に深く刺さっている自分がいる。
ギリボイを初めて聴く人にも、ギリボイのファンにも、このアルバムは異なる意味で重要だ。
初めての人には「こんな音楽があるのか」という驚きを、ファンには「ここで何かが変わった」という転換点として。
「치명적인 앨범3」というタイトルをそのまま受け取ってほしい。
これは致命的なアルバムだ。
一度聴くと、それ以前に戻れない。
「별이지고있다(星が落ちていく)」のイントロから聴き始めて、最後の「호랑이소굴(虎の穴)」が終わるまで、ギリボイの声に引き連れて旅をすることになる。
その旅が終わった後、何かが変わっている。
それが「致命的」ということだ。
音楽で何かが「致命的」に変わるとしたら、それは音楽の最も純粋な力だ。
ギリボイはこのアルバムでその力を発揮した。
そして、その力は今も有効だ。
「除雪」という言葉一つでこれほどの感情を喚起できる人が、他にどれだけいるだろうか。
「離婚届」という書類でここまでの詩的なイメージを作れる人が、他にどれだけいるだろうか。
ギリボイは言葉の魔術師だが、その魔術は特別な言葉を使うのではなく、日常の言葉に特別な意味を見出すことから生まれる。
それがこのアルバムを繰り返し聴き返すたびに、新しい発見がある理由だ。
「치명적인 앨범3」、このアルバムを聴いてギリボイの世界に足を踏み入れた人は、そこから抜け出せなくなる。
それが「致命的」ということだ。
喜んで引き込まれてほしい。
ギリボイの言葉に、喜んで刺されてほしい。
このアルバムはそういう一枚だ。
韓国語がわからなくても伝わってくる何かがある。
それが音楽の普遍性で、ギリボイの言葉の力だ。
2019年12月に生まれたこのアルバムが、2025年の今も古くなっていないことが、その証拠だ。
感情に賞味期限はなく、言葉に賞味期限はない。
ギリボイが音楽に込めたものは、時間を超えて届き続ける。
「치명적인 앨범3(致命的なアルバム3)」、その致命性は永続する。
ギリボイのキャリアをこれから追いかける人にも、長年のファンにも、このアルバムは常に新しい何かを見せてくれる。
それが傑作の条件で、このアルバムはその条件を満たしている。
「치명적(致命的)」、その一言がふさわしい。
ギリボイのアルバムの中でも、この一枚は特別な重みを持って、今も僕の棚に居続けている。
▶ アーティストページ:Giriboyと僕。


