G.R. Boyのシグネイチャーサウンド。
韓国ヒップホップには、2種類の「誰も真似できない人」がいる。
「うますぎて真似できない人」と、「変すぎて真似できない人」だ。
Giriboy(기리보이/ギリボイ)は、その両方を、同じ一人の中に飼っている。
Show Me The Moneyを観ている人なら、もう説明はいらないかもしれない。
SMTM 777、優勝プロデューサー。
SMTM 8、優勝プロデューサー。
SMTM 9、優勝プロデューサー。
3年連続。
やりすぎである。
歌うようにラップする「싱잉랩(シンギンレッ/シンギング・ラップ)」を早くから武器にし、誰よりも多作で、アルバム名のセンスは完全に常人の理解を超えていて、そのくせ「Beenzino(ビンジノ)以降、最も成功したアンダーグラウンド・ラッパー」とまで評価される。
しかも、後にKid Milliを迎え入れるクルー「宇宙飛行」の首領(おやぶん)でもある。
笑えて、エモくて、商売もうまい。
レゴが大好きで、ボードゲームに本気で、自分の笑い方すら芸になる。
この、つかみどころのない天才の話をしたい。
- ■ 基本情報
- ■ ギリボイという人物
- ■ デビュー前史 「Two Real」という名前だった頃
- ■ 芸名「ギリボイ」の、しょうもなくて愛おしい由来
- ■ デビューとJust Music 副社長まで上り詰める
- ■ ラーメンだけの一週間 貧しさが、歌になる
- ■ “歌うラップ”を早くから確立した功績
- ■ ディスコグラフィー アルバム名だけで天才とわかる
- ■ 宇宙飛行(WYBH)という帝国、そして経営者の顔
- ■ SMTM、そして「Beenzino以降、最も成功したアングララッパー」
- ■ なぜギリボイ”だけ”が、これだけ長く愛されるのか
- ■ 俳優・ホン・シヨン
- ■ キャラクター 笑える天才と、その信仰
- ■ 韓国でのイメージ
- ■ ディスコグラフィー(正規アルバム)
- ■ 余談
- ■ マルのひとこと
■ 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | Giriboy(기리보이/ギリボイ) |
| 本名 | ホン・シヨン(홍시영/洪時英) |
| 生年月日 | 1991年1月24日(ソウル市トボン区パンハク洞) |
| デビュー | 2011年11月18日 シングル「You Look So Good To Me」 |
| 元所属 | Just Music(2011〜2023) |
| 現所属 | Standard Friends(Zion.Tのレーベル/2024〜) |
| 自社レーベル | howtouse(2024年設立/DJ dnopfと共同) |
| クルー | 宇宙飛行(WYBH)首領、Do’main ほか |
| 事業 | ファッションブランド I4P オーナー |
| 宗教 | プロテスタント |
| ジャンル | ヒップホップ / R&B / トラップ / バラード |
| 特記事項 | SMTM 777・8・9 優勝プロデューサー / “歌うラップ”の先駆者 / 多作・自己プロデュース型の鬼 |
■ ギリボイという人物
ギリボイを一言で表すのは、難しい。
ラッパーであり、シンガーであり、ビートメイカーであり、プロデューサーであり、レーベル経営者であり、ファッションブランドI4P(アイザピ)のオーナーでもある。
名刺を作ったら、肩書きで一行が埋まる男だ。
本名はホン・シヨン。
1991年、ソウル市トボン区パンハク洞生まれ。
彼の音楽の出発点は「번개송(ボンゲソン/雷ソング)」だった。
つまり、稲妻みたいにパッと、ふざけて即興で作る曲。
それが入口だ。
ところが、作曲ソフトをいじっているうちに、プロデューサーとしての才能が一気に開花してしまう。
そこから、ギリボイ独特の「歌うようなラップ」と「センスの塊みたいなメロディライン」が生まれた。
面白いのは、彼がラッパーに転向した理由だ。
「自分は歌が下手だから」。
所属したJust Musicでも、最初はボーカルトレーニングを付けられたほど。
ところがそのボーカルの先生が、こう言ってレッスンを打ち切った。
「君は、歌が下手なのが魅力だよ」。
この一言が、ギリボイの全部を表している。
弱点が、そのまま個性になる男なのだ。
ふざけているようで、本気。
本気なようで、どこか脱力している。
この絶妙なバランスが、彼の最大の魅力だ。
■ デビュー前史 「Two Real」という名前だった頃
ギリボイには、改名前の活動名がある。
「투리얼(Two Real/トゥリオル)」。
絵を描くのが好きで、もともとの夢は漫画家だったという少年が、高校の頃にネットでラップ動画を観て「俺もやってみよう」と思い立つ。
インストゥルメンタルに即興で「雷ソング」を乗せて遊び、やがて「自分で曲を作りたい」と作曲を学び始めた。
その曲が、ラッパーのUgly Duck(アグリーダック)の耳に届く。
Ugly Duckが、Swings(スウィンス)に彼を推薦した。
当時、ギリボイには別のクルーからの誘いもあった。
だが彼は、立ち上がったばかりのSwingsのレーベル「Just Music」を選ぶ。
理由のひとつが、ファンだったSwings本人から直接声をかけられたこと。
無名時代にSwingsからもらったサインを、今も大切に持っているという。
そしてもうひとつ、選んだ理由が「レーベルの名前が気に入ったから」。
Just Music 「ただ、音楽を」。
このシンプルさに惹かれた、というのが、いかにもギリボイらしい。
■ 芸名「ギリボイ」の、しょうもなくて愛おしい由来
ここで、どうしても挟みたい話がある。
「ギリボイ」という名前の由来だ。
知人の兄貴分が、ネットのメッセンジャー(NateOn)で彼と話している時に、適当に付けた。
最初は、特に意味なんてなかった。
ところが、インタビューで「名前の由来は?」と聞かれる機会が増える。
何か答えないと格好がつかない。
そこで彼は、後から意味を付けた。
「길이 보이네/ギリ ボイネ」。
「道が、見えてきたな」。
つまり、何をやっても前途洋々、という意味。
完全な後付けである。
ところが本人いわく、意味を付けてから「本当に道が見え始めた」らしい。
名前に呪われるどころか、名前に運を引き寄せた。
このエピソードだけで、もうギリボイのことが好きになってしまう。
■ デビューとJust Music 副社長まで上り詰める
2011年11月18日、ギリボイはデジタルシングル「You Look So Good To Me」でデビューした。
ここから、長い快進撃が始まる。
彼はやがてJust Musicの副社長を務めるまでになり、レーベルの屋台骨として、そして韓国ヒップホップシーンの重要人物として、その存在感を確立していった。
2018年には、Just Music内で「収入1位」を記録したと言われている。
多作で、しかも曲の大衆性も高い。
当然と言えば、当然の結果だった。
■ ラーメンだけの一週間 貧しさが、歌になる
ギリボイの音楽には、ずっと「哀愁」が流れている。
どれだけふざけたタイトルをつけても、どこか寂しい。
その理由を知るには、彼の20代前半を見る必要がある。
21歳の頃、ギリボイは保証金100万ウォン、家賃20万ウォンの、小さな部屋に住んでいた。
日本で言えば、敷金10万円ちょっと、家賃2万円。
それくらいの、本当にギリギリの部屋だ。
ラーメンだけで食いつなぐ。
一週間、まともに体を洗えない日もあった。
20歳のときには、マクドナルドでハンバーガーを作るアルバイトもしていた。
この時代を、彼は『高校ラッパー3(고등래퍼3)』のメンターとして出演した際に、若い出場者たちへ向けて打ち明けている。
「俺も、そういう時代があったよ」と。
そして、決定的な場面がある。
2018年、SMTM 777の決勝。
自分がプロデュースしたnafla(ナフラ)が優勝した、その瞬間。
ギリボイは、悲しげに泣いた。
嬉し泣きではなかった。
それまでの、しんどかった時代が、ぶわっと込み上げてきたからだという。
ここまで知ってから、もう一度彼のラブソングを聴いてほしい。
「必要なときだけ、俺を使っていいよ」と歌う、あの卑屈さ。
あれは、ただのキャラ作りじゃない。
ずっと自分を安く見積もってきた人間の、本物の手触りなのだ。
笑えるアルバム名は、たぶん、鎧だ。
貧しさも、寂しさも、全部ユーモアでくるんで差し出す。
それがギリボイの、表現の仕方なのだと思う。
■ “歌うラップ”を早くから確立した功績
ギリボイの音楽史的な功績を一つ挙げるなら、「歌うラップ」を韓国で早い段階から自分のものにしたことだ。
ラップとボーカルの境界線を、自在に行き来する。
韻を踏みながら、メロディに乗せる。
今でこそ韓国ヒップホップに当たり前にある手法だが、その感覚的なメロディラインを早くから前面に出していたのが、ギリボイだった。
そして面白いのが、彼のスタイルの変遷だ。
初期は、跳ねるようなビートに、ウィットに富んだ(時に「병맛/ビョンマッ=おふざけ」とも言われる)歌詞を乗せる作風だった。
ところが2017年あたりから「トレンディなトラップ」に手を出し、2019年の『치명적인 앨범 III(致命的なアルバム III)』を境に、感傷的で柔らかいバラードへと大きく舵を切る。
その振れ幅は、驚くほど広い。
ジャジーなブームバップやトラップから、優しいバラードラップ、ラップのないボサノヴァ調のポップ、ロックバラード、ポップバラード、R&Bまで。
ボーカルとラップの境界を越えて、あらゆる表情を見せる。
正直、「ヒップホップの人」という枠には、まったく収まらない。
■ ディスコグラフィー アルバム名だけで天才とわかる
ギリボイを語るうえで、絶対に触れたいものがある。
正規アルバムのタイトルセンスだ。
多作なうえに、その名前がいちいちおかしい。
順に見ていこう。
『육감적인 앨범(ユッカンジョギン エルボン/官能的なアルバム)』(2014年・1집)
記念すべき正規1作目。
タイトルからもう、只者ではない。
なぜこのタイトルにできるのか理解できない。
中身、全然官能的じゃないんですけどもね…。
『성인식(ソンインシッ/成人式)』(2015年・2집)
「大人になること」がテーマの一枚。
二十歳で出すならまだしも、あなた、もう二十歳超えてますやん。
『기계적인 앨범(キゲジョギン エルボン/機械的なアルバム)』(2016年・3집)
「官能的な」の次が「機械的な」。
この対比のセンス。
まあ、別に機械的でもないんだけどな。
『졸업식(ジョロッシッ/卒業式)』(2017年・4집)
人生の節目をアルバム名にする癖が、ここでも。
何の卒業かは、あなた次第。
『공상과학음악(コンサングァハグマッ/空想科学音楽)』(2018年・5집)
SFを、そのまま音楽のテーマに。
実験性が増していく時期。
『100년제전문대학(ペンニョンジェジョンムンデハッ/100年制専門大学)』(2019年・6집)
もはや意味を考えるだけ無駄な、最高にバカバカしくて愛おしいタイトル。
100年通う専門大学って、何。
『치명적인 앨범 III(致命的なアルバム III)』(2019年・7집)
作風がバラード寄りへと大きく変わる、転機の一枚。
ふざけたタイトルの裏で、音楽はどんどん深くなっていく。
『9컷(クコッ/9カット)』(2020年・8집)
『avante(アヴァンテ)』(2021年・9집)
『소설 쓰고 자빠졌네(ソソル ッスゴ ジャッパジョンネ/小説書いてコケた)』(2023年・10집)
タイトル選手権があれば、優勝候補。
直訳すると「小説を書いて、すっ転んだ」。
これは「ありもしない話をベラベラ並べやがって」みたいな、自虐とツッコミが混じった韓国語の言い回し。
このセンスが、まさにギリボイ。
そしてこれが、10年以上在籍したJust Music時代の、ひとつの締めくくりになった。
『제가 말주변이 없어서(チェガ マルジュビョニ オプソソ/私は口下手なので)』(2025年4月10日・11집)
独立後、Standard Friendsからの最新正規作。
“口下手”を看板に掲げる男が、音楽では誰よりも雄弁。
デビューから10年以上、いまだに正規アルバムを更新し続けている。
これだけ多作で、しかも質が落ちない。
これ自体が、ひとつの才能だ。
■ 宇宙飛行(WYBH)という帝国、そして経営者の顔
Kid Milliの記事を読んでくれた人なら、覚えているかもしれない。
Kid Milliが2017年に加入したクルー「宇宙飛行(우주비행/ウジュビヘン/WYBH)」。
その首領(リーダー)が、ギリボイだ。
つまりギリボイは、自分のプレイヤー活動だけでなく、次世代の才能を集めて育てる「親分」でもある。
宇宙飛行には、Kid Milliをはじめ、DJ SQ、ハン・ヨハン、OLNLら個性的な面々が集い、2010年代後半の韓国アンダーグラウンドの一大勢力になった。
経営者としての顔も多彩だ。
かつてはSwingsと共同で「WEDAPLUGG(ウェダプラグ)」を立ち上げていたが、これは現在は解散している。
2023年末、10年以上連れ添ったJust Musicと円満に別れて完全独立。
2024年2月、Zion.Tが作ったレーベル「Standard Friends」に新たな根を下ろし、同年7月にはDJのdnopfと組んで自分のレーベル「howtouse(ハウトゥユーズ)」も設立した。
さらにファッションブランド「I4P」も運営している。
プレイヤー、プロデューサー、親分、経営者。
ギリボイは、いくつもの顔を同時に生きている。
■ SMTM、そして「Beenzino以降、最も成功したアングララッパー」
2014年、ギリボイはMnetの「Show Me The Money」シーズン3に出演し、その名を一気に広めた。
だが彼の真価は、番組の順位ではない。
その後の、継続的な商業的成功にこそある。
ギリボイは「Beenzino(ビンジノ)以降、最も成功したアンダーグラウンド・ラッパー」と評価されることがある。
Beenzinoといえば、おしゃれでジャジーな作風と、アルバム『24:26』の記録的セールスで知られる存在。
“アングラ出身で、大衆的成功も手にした”系譜の、ひとつの頂点だ。
その名前と並べて語られること自体が、ギリボイの実力の証明になっている。
全盛期には、正規アルバムの収録曲が全曲メロン(MelOn)チャートにランクインするほどの人気を誇った。
アンダーグラウンド出身でありながら、大衆的な成功も手にする。
その両立は、誰にでもできることではない。
そして冒頭でも触れた通り、プロデューサーとしてはSMTM 777・8・9で3年連続の優勝プロデューサー。
自分が前に出るだけでなく、ステージの裏で勝たせる力も、韓国トップクラスなのだ。
影響を受けた人物として、彼はPharrell Williams、Verbal Jint、The Black Skirts(검정치마/ゴンジョンチマ)、そしてSwingsの名を挙げている。
作曲家を志すきっかけになったのは、Roller Coaster出身でSMのプロデューサーとなったHitchhiker(ヒッチハイカー)。
意外なところでは、神話(SHINHWA)からの影響も公言している。
■ なぜギリボイ”だけ”が、これだけ長く愛されるのか
韓国ヒップホップには、一発当てて消えていったラッパーが星の数ほどいる。
なのに、なぜギリボイはデビューから10年以上、誰にも飽きられずに生き残っているのか。
理由は、たぶん3つある。
ひとつ、多作であること。
正規アルバムだけで11作。
EPやシングルを含めれば、その数は膨大だ。
自分で作詞も作曲もこなすから、制作のスピードが異常に速い。
ふたつ、変わり続けること。
おふざけのアップビートから、トレンディなトラップ、そして感傷的なバラードへ。
同じ場所に、決して留まらない。
ファンが「次は何をやるんだ」と、毎回ワクワクできる。
みっつ、自分が売れるだけで終わらないこと。
宇宙飛行というクルーで後輩を育て、レーベルを経営し、シーンそのものを耕してきた。
プレイヤーとしての旬は、いつか過ぎる。
でも「作る人」「育てる人」「経営する人」は、旬が過ぎない。
ギリボイが長く愛されるのは、彼が早くから”プレイヤーの先”を生きていたからだ。
■ 俳優・ホン・シヨン
ギリボイには、もうひとつの顔がある。
本名「ホン・シヨン」名義での、俳優活動だ。
MBCのバラエティ『全知的おせっかい視点(전지적 참견 시점)』で「俳優になる夢があり、2年間演技を習っている」と明かして話題になった彼は、有言実行する。
2022年7月、ショートフィルム『사람냄새 이효리』で、イ・ヒョリらと共演して俳優デビュー。
同年12月にはMBCドラマ『金婚令、朝鮮婚姻禁止令(금혼령)』に出演。
2024年には話題作『江南 B-Side(강남 비-사이드)』にも顔を出している。
ラップでも、歌でも、芝居でも。
表現できるものなら、何でもやってみる。
このフットワークの軽さも、ギリボイの魅力だ。
■ キャラクター 笑える天才と、その信仰
ギリボイのもうひとつの武器は、その唯一無二のキャラクターだ。
おふざけとも取れるユーモア、自虐、独特の脱力感。
アルバム名のセンスにも表れている通り、彼は「真剣にふざける」ことができる、稀有なアーティストだ。
ライブでMCに詰まると、なぜか唐突に「僕、ギリボイです」と自己紹介を始める。
会場がどっと沸く。
ファンは、これが大好きだ。
海外メディアからは「#feelings(感情)を語り、ヒップホップを置き去りにするラッパー」とも評された。
かっこいいだけでも、面白いだけでもない。
その両方を、同じ温度で出せる。
メディアで見せる軽くてふざけた姿とは裏腹に、実際のギリボイは、口数の少ない、人見知りの強い、静かな性格だ。
SMTM 3で一気に注目された反動も、大きかった。
急に増えた世間の関心と、心ない誹謗コメント。
もともと繊細だった彼は、その頃にパニック障害(공황장애/ゴンファンジャンエ)を抱えることになる。
明るくふざけて見えて、その内側はずっと、ひりひりしていた。
そのアンバランスごと、彼の音楽になっている。
近年、オ・ウニョンのカウンセリング番組『금쪽상담소』では、自分の怒りについても率直に語った。
普段はぐっと我慢するけれど、一度沸点を超えると、自分でも抑えがきかなくなる。
壁を蹴ってしまうこともある。
そんな自分の激しさを、長いあいだ持て余し、ストレスを感じてきたのだ、と。
弱さも、危うさも、隠さない。
それを笑いに変えて差し出せるのが、ギリボイの強さでもある。
意外に思うかもしれないが、ギリボイは敬虔なプロテスタントの家庭で育った信仰の人でもある。
SMTM 8では、同じく敬虔なクリスチャンであるBewhY(ビワイ)と同じチームになり、母親がとても喜んだ、というエピソードもある。
ふざけた顔の裏に、ちゃんと芯がある。
鋭いメロディセンスと、間の抜けたユーモア。
エモいラブソングと、バカバカしいアルバム名。
敬虔な信仰と、脱力した佇まい。
この矛盾が全部、同じ一人の中に同居しているのが、ギリボイという人間そのものだ。
🎬 [MV/YouTube埋め込み:マルお気に入りの一曲]
■ 韓国でのイメージ
韓国でギリボイは、「唯一無二の鬼才」「シーンの親分」として、深い尊敬と愛情を集めている。
歌うラップで後輩に与えた影響は大きく、宇宙飛行というクルーを通じてシーンそのものを育ててきた功績もある。
同時に、その脱力したキャラクターとアルバム名のセンスで、「面白い人」としても愛されている。
実力と人気、影響力とユーモア。
その全部を兼ね備えた存在として、韓国ヒップホップにおいて特別な位置を占めている。
そして近年の感傷的なバラード路線が高く評価されていることからもわかるように、彼は「変わり続けられる」アーティストだ。
同じ場所に、留まらない。
だからこそ、デビューから10年以上経っても、誰も彼に飽きない。
■ ディスコグラフィー(正規アルバム)
| タイトル | 年 | 記事 |
|---|---|---|
| 육감적인 앨범 (官能的なアルバム) | 2014 | 準備中 |
| 성인식 (成人式) | 2015 | 準備中 |
| 기계적인 앨범 (機械的なアルバム) | 2016 | 準備中 |
| 졸업식 (卒業式) | 2017 | 準備中 |
| 공상과학음악 (空想科学音楽) | 2018 | 準備中 |
| 100년제전문대학 (100年制専門大学) | 2019 | 準備中 |
| 치명적인 앨범 III (致命的なアルバム III) | 2019 | 準備中 |
| 9컷 (9カット) | 2020 | 準備中 |
| avante (アヴァンテ) | 2021 | 準備中 |
| 소설 쓰고 자빠졌네 (小説書いてコケた) | 2023 | 準備中 |
| 제가 말주변이 없어서 (私は口下手なので) | 2025 | 準備中 |
■ 余談
宇宙飛行(WYBH)の首領であり、Kid Milliをこのクルーに迎え入れた張本人。
うりぬんの ▶ Kid Milliと僕。 と繋がる話だ。
SMTM 8では、敬虔なクリスチャン同士でBewhYと同じチームに。
うりぬんの ▶ BewhYと僕。 もあわせてどうぞ。
干支は、午年(말띠/マルッティ)。
1991年生まれなのに、誕生日が旧正月より前なので、暦の上では1990年の午年扱いになる、という韓国あるある。
愛犬は、クリームプードルの「돌돌이(ドルドリ)」。
ファンミーティングを開いたら、司会のラッパーより돌돌이のほうが有名だった、という愛されエピソードがある。
レゴが大好きで、レゴコリアから定期的に協賛を受けるレベル。
さらにボードゲームのオタクで、「自分の世界観を詰め込んだボードゲームを作りたい」と本気で語っている。
ロールモデルは、C Jamm(씨잼/ッシジェン)とZion.T。
そのZion.Tのレーベルに、今いる。
憧れの人の家に、住まわせてもらっているようなものだ。
Swings(スウィングス)との関係が、また面白い。
ふたりはかつて、同じ家で暮らしていた。
周りは「気性の荒いSwingsを、おとなしいギリボイが受け止めて暮らしてるんだろうな」と思っていた。
ところが、実際は逆。
家賃も払わず、掃除もせず、Swingsが冷蔵庫に隠しておいた食べ物を勝手に食べる。
そんなギリボイを、Swingsのほうが受け止めて暮らしていたという。
極めつけが、タバコの火の話だ。
会社のみんなでプールに遊びに行ったとき。
Swingsがふざけてギリボイを抱え上げ、水に放り込もうとした。
その瞬間、ギリボイはタバコの火を、Swingsの手の甲にジュッと押し付けた。
普通、ブチギレる場面だ。
でもSwingsは、怒るより先に、その場で大爆笑したらしい。
「こいつ、まさか本当にやるとは」と。
おとなしそうな顔をして、たまにとんでもないことをやる。
この予測不能さも含めて、ギリボイなのだ。
Swingsが今も笑って語る、ふたりの名エピソードである。
そして地味に最高なのが、「귀리보이/クィリボイ(オート麦ボーイ)」というオート麦飲料のCMモデルに起用された話。
귀리(オート麦)とギリボイ。
名前が似てるだけで仕事が来る男。
■ マルのひとこと
ギリボイを聴いていると、「かっこいい」と「面白い」は両立するんだな、と当たり前のことに改めて気づかされる。
『소설 쓰고 자빠졌네(小説書いてコケた)』なんてアルバム名をつけておいて、中身のラブソングでこっちを泣かせてくる。
このギャップが、ずるい。
ふざけているように見せて、誰よりも音楽に本気。
脱力しているように見せて、誰よりも多作で、誰よりも自分の手で作っている。
そして、自分が売れるだけじゃなく、宇宙飛行というクルーで後輩を育てた。
Kid Milliも、そのひとり。
プレイヤーとしての天才が、親分としても優秀。
こんな人、なかなかいない。
韓国ヒップホップを「難しそう」「とっつきにくい」と思っている人にこそ、ギリボイから入ってほしい。
あのアルバム名で笑って、ラブソングで泣いて、気づいたら抜け出せなくなっている。
うりぬん、彼の笑顔を、これからも見守っていきたい。



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