Kid Milliと僕。 키드밀리와나

K-HIPHOP

ある音楽が世界を席巻するとき、その背後には必ず「翻訳者」がいる。
いや、Kid Milliの場合は、ちょっと違う話から始めた方がいい。

韓国ヒップホップには、ときどき「分類できない人」が現れる。
ジャンルの真ん中にいるわけでもなく、外れているわけでもない。
誰の真似でもない場所に、いつの間にか立っている。
Kid Milli(키드밀리)は、まさにその「色」の塊みたいな男だ。

しかも、笑える。
個人的笑い方が好きな韓国ラッパー2大巨頭のひとり。w


■ 基本情報

項目内容
名前Kid Milli(키드밀리)
本名チェ・ウォンジェ(최원재)
生年月日1993年10月26日
デビュー2016年2月3日(アルバム『TN』)
所属Indigo Music
(인디고뮤직/インディゴミュジッ)
クルー宇宙飛行(우주비행/ウジュビヘン)
Cozyboys
ジャンルヒップホップ

■ ラッパーになる前は「プロゲーマー志望」だった

意外な事実から始めよう。

Kid Milliは音楽を始める前、プロのスタークラフト(StarCraft)選手を夢見ていた。
しかもただの夢ではなく、実際にプロゲーミングチーム「Incredible Miracle」に所属していたことがある。

スタークラフトというのは、宇宙を舞台にしたリアルタイム戦略ゲームだ。
遊戯王のようなカードゲームとは違い、画面の中で自分の基地を建て、資源を集め、兵士を生産し、相手の軍隊とリアルタイムで戦う。
一瞬の判断と、1分間に何百回もマウスとキーボードを操作する反射神経が勝敗を分ける。

韓国ではこのスタークラフトが社会現象になり、プロリーグが組まれ、優勝者が国民的スターになるほどのeスポーツ大国になった。
日本で言えば、プロ野球選手や将棋のプロ棋士を本気で目指すくらいの狭き門だ。
その世界にいた青年が、いつの間にかマイクを握り、韓国ヒップホップの最前線に立っている。
人生はわからない。


■ デビューとIndigo Music

2016年、アルバム『TN』でデビュー。所属レーベルはベテランラッパーのスウィングス(스윙스)が立ち上げたIndigo Music(인디고뮤직/インディゴミュジッ)。

そして2017年10月、釜山で開かれたパーティーのオーディションを経て、ギリボイ(Giriboy)率いるクルー「宇宙飛行(우주비행/ウジュビヘン)」に加入した。
アンダーグラウンドとオーバーグラウンドを自在に行き来する立ち位置を、ここから築いていく。


■ 音楽スタイル A$AP Rockyと「끊어치기/クノチギ」

Kid Milliのフロウは、彼の最大の武器だ。

ラップスタイルにはA$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)からの影響が指摘されている。
そして彼の代名詞が「끊어치기(クノチギ)」と呼ばれる、言葉を細かく区切って叩きつけるような独特のフロウだ。
流れるように韻を踏むのとは逆に、わざとリズムを断ち切り、聴き手の予想を外す。
この崩しの感覚が、彼を「オーバーグラウンドのヒップホップシーンで最も人気のあるラッパーの一人」かつ「ファッショニスタ」という地位に押し上げた。

意味で殴るのではなく、音の質感と間(ま)で勝負する。
後で触れるが、このフロウがあまりに独特だったために、ある事件まで起きることになる。


■ 優勝候補だった男が、3位で終わった理由(Show Me The Money 777)

彼の名を全国区にしたのが、2018年に放送された「Show Me The Money 777」だ。
日本で言えば、フリースタイルダンジョンとM-1を足して規模を10倍にしたような国民的ラップサバイバル番組。

このシーズンのKid Milliは、優勝候補だった。

セミファイナルでは対戦相手を632対153という圧倒的な票差で下し、決勝に進出。
多くの人が彼の優勝を予想していた。

ただ、道のりは順風満帆ではなかった。
途中の評価戦で、彼は歌詞を間違える場面があった。
すぐに拍子を取り戻して脱落こそ免れたものの、緊張感の漂う瞬間だった。

最終結果は、優勝nafla、2位Loopy、そしてKid Milliは3位。
優勝候補と目されながらの3位という結果は、本人にとってもファンにとっても悔しいものだったに違いない。

ただ、キドミリの場合、順位より「あの独特のフロウが全国に知れ渡った」ことの方が大きい。
淡々としているようで、よく聴くと変拍子のように崩してくる。
聴き手の予想を少しずつ裏切るそのラップは、優等生的なうまさとは違う中毒性を持っていた。


■ VINXENとのディス戦 フロウを真似された男

Kid Milliのフロウがどれほど独特だったか。それを逆説的に証明したのが、VINXEN(빈첸/ビンチェン)とのディス戦だ。

VINXENは「고등래퍼(高校ラッパー)」で有名になった若手ラッパーで、いわゆる「バッファリング」と呼ばれる独特のフロウで注目を集めた。
ところがリスナーの間で、「このフロウ、Kid Milliのに似てないか?」という指摘が相次いだ。

VINXENが김심야(キム・シミャ)、Kid Milli、NO:ELといったラッパーたちのフロウをコピーしているという論争が起き、Kid Milliがこれを指摘してディスると、VINXENが反論。
こうしてディス戦が始まった。

ヒップホップにおいて「フロウを真似される」というのは、ある意味で勲章でもある。
それだけそのスタイルがオリジナルで、影響力を持っていたということだからだ。誰も真似できないフロウは、真似する対象にすらならない。


■ 宇宙飛行とクルー文化

韓国ヒップホップを理解するうえで、「クルー」という存在は欠かせない。
日本で言えば、BAD HOP!? Nitro Microphone Underground!? King Gidra!?
アムトゥン、同じ思想や美学を持つ仲間が集まった「派閥」かつ「家族」のようなものだ。

Kid Milliは、ギリボイ(Giriboy)が作ったクルー「宇宙飛行(우주비행/ウジュビヘン/WYBH)」のメンバー。
2017年10月20日、釜山のoutputで開かれた宇宙飛行のパーティーで、ギリボイの審査を経て加入した。

さらに、김심야(キム・シミャ)が率いるグループ「XXX」との関係も深く、韓国アンダーグラウンドヒップホップの才能が集まる中心にいる。
彼の楽曲タイトルやリリックには、こうしたクルー仲間やシーンへの目配せがしばしば隠されている。
表のヒットチャートだけ追っていると見えない、シーンの地下水脈。
Kid Milliはその両方を知る数少ない存在だ。


■ 「honmono」日本語と韓国スラングの二枚重ね

Kid Milliの代表曲のひとつに「honmono(혼모노/ホンモノ)」がある。
2017年8月5日リリース、Black Nut(블랙넛/ブレッノッ)をフィーチャリングに迎えた、アルバム『Maiden Voyage Ⅱ』のタイトル曲だ。

この曲名がうまい。

「honmono」は日本語の「本物」から取られている。だが韓国で「혼모노/ホンモノ」というと、実は「オタク」「ギーク」を指すスラングとしても使われる。つまりこの一語に、日本語の「本物」と、韓国の「オタク」という二つの意味が重ねられている。

ディンゴ(Dingo)のフリースタイル映像も、その言葉に合わせてとことんオタクっぽく、ギークな世界観で作られた。本物であること、そしてオタクであること。その両方を肯定するこの曲は、Kid Milliを代表する一曲になった。

ラブライブめっちゃ好きだよねほんと。
スウィンスマネージャーにした時にラブライブのセリフ言わせてたの面白かったw
モエモエwメイドカフェでサチョゲン(4000円)はKid Milliにしか歌えないマジで。

日本語をタイトルに選び、母国のスラングと掛け合わせる。
この言語感覚こそ、Kid Milliが「フロウでファッションを表現する」と言われるゆえんだ。


■ Cozyboysは「音楽クルーじゃなくて酒クラブ」

Kid Milliを語るうえで外せないのが、彼の所属するもう一つのクルー「Cozyboys」だ。

ところが本人いわく、Cozyboysは音楽クルーではなく「酒を飲むクラブ」らしい。
グループチャットの名前まで酒に関連したものだという。
韓国ヒップホップのクルーというと硬派なイメージを持つかもしれないが、その実態が「飲み仲間」だというこの脱力感。
これがKid Milliの魅力でもある。


■ ファッションという、もう一つの言語

Kid Milliはラッパーであると同時に、ファッションへのこだわりでも知られる。

愛するブランドはVetements、Gucci、Stone Islandなど。
さらにCozyboysの仲間パク・ジニョンと共に「nondisclothes」というファッションブランドまで立ち上げている。

彼のラップは、よく「ファッションのよう」と評される。
意味で殴りに来るのではなく、語感・音の質感・間(ま)そのもので世界観を作る。
何を言っているかより、どう響くか。
服を選ぶときの「理屈じゃない好き」に近い感覚だ。


■ バラエティでも引っ張りだこ

近年はバラエティ・YouTubeコンテンツでも存在感を発揮している。

Car, the Garden(카더가든/カドガドゥン)のアバター合コン企画への出演をきっかけにYouTube出演が急増し、「パギムチギャン(파김치갱)」のレギュラー、「ビビムポップ(비빔팝)」のパネラーとしても活躍。
ラップの鋭さと、素のゆるさ。その振れ幅が、彼をシーンの「愛されキャラ」にしている。

これは必見。
名言は「わー、パンだ!」「俺、パン狂いなんだㄲㄲ」
名シーンは皿に鼻をつけて食べるとこww
字幕もなんとかついてるんで、意味わからなくても見てほしい。Kid Milliがきっと好きになる。


■ 「30歳でAdult Milliに改名」する約束はどうなったか

ラジオ番組「2時脱出カルトゥショー(두시탈출 컬투쇼)」に出演した際、Kid Milliはパーソナリティのキム・テギュンと、ある約束を交わした。
「30歳になったら、芸名をKid Milli(子どものMilli)からAdult Milli(大人のMilli)に変える」と。

結論から言うと、30歳を過ぎた今も、彼はKid Milliのままだ。約束は守られなかった。
だが誰も困っていないし、本人も気にしていない。
このゆるさが、Kid Milliという人間そのものである。


■ ディスコグラフィー(主要作)

作品種別リリース記事
TNデビューアルバム2016準備中
Maiden Voyage1st EP2017準備中
Maiden Voyage ⅡEP2017準備中
AI, THE PLAYLIST1stフルアルバム2018準備中
Beige 0.5アルバム2020準備中
Beigeアルバム2023準備中
LOVESICKアルバム2026.03.27準備中

2026年3月には最新作『LOVESICK』をリリース。デビュー10年目を迎えてなお進化を続けている。


■ メンバー(ソロアーティスト)

Kid Milli(키드밀리)|笑い方が特徴的な八方異才
本名チェ・ウォンジェ。ラップ・ファッション・バラエティ、どこを切っても「色」を持つ八方異才。笑うときに途切れ途切れに笑う独特の笑い方から、韓国のファンの間では「Kid Milliは笑うときもフロウが出る」と言われるほど。

▼ 公式Instagram
https://www.instagram.com/kidcozyboy/


マルのひとこと

たまには、こういう現代のラッパーで息継ぎを。

Kid Milliのいいところは、鋭い眼差しでめちゃくちゃかっこいいラップをするくせに、バラエティに出ると一気に隙だらけになるところだ。
カドガドゥンのアバター合コン企画でのあのゆるさ、レギュラー番組での素のリアクション。
ステージでマイクを握るときの姿とは、まるで別人だ。

そして彼には「honmono」という曲がある。日本語の「本物」と、韓国で言うところの「オタク」を一語に重ねた、あの曲。
本物であることと、何かに本気でのめり込むこと。
その二つは、きっと同じことなんだと思う。
鋭いラップも、間抜けなバラエティも、全部ひっくるめてKid Milliは「ほんもの」だ。

彼もタトゥーが目立つように。
HIPHOPというジャンルにおいて韓国は言葉の部分で、日本語より有利な部分がある。
言葉の表現が多様であるがゆえ韓国ヒップホップは怖い、難しい、と思っている人にこそ、Kid Milliから入ってほしい。
ほんものは、案外こういうゆるい笑いの顔をしてやってくる。

うりぬん、そのほんものに触れていきたい。

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