Stony Skunkと僕。스토니 스컹크와나

K-HIPHOP

たまに、無性に「揺れたい」夜がある。

理屈じゃなく、ただ体が縦に揺れる音。
重いベースと、緩いリズムと、しゃがれた声。
そういう「音」を、韓国でいちばん本気で鳴らした二人組がいる。

Stony Skunk(스토니 스컹크/ストニ スコンク)。

韓国レゲエの、先頭を走ったデュオだ。
ヒップホップとレゲエをクロスオーバーさせた、ユニークで、ちょっとヤバくて、最高に自由な音楽。

正直に言う。
韓国でも、Stony Skunkを知ってる人は、そんなに多くない。
でも、レゲエが好きな人には、絶対に知っておいてほしい。

そして、この記事の最後で、とんでもない事実に行き着く。
このアングラなレゲエデュオの片割れが、後にBIGBANGも2NE1も、そして2025年に世界を席巻したあの曲も作ることになる、という事実に。

これは、二人の自由な男が、別々の道で、同じ魂を受け継いだ物語だ。


■ 基本情報

項目内容
グループ名Stony Skunk(스토니 스컹크)
メンバーSkull(スカル)
KUSH(クシ)
デビュー2003年(正規1集『Best Seller』)
解散2010年8月12日
所属YGエンターテインメント
(YG Underground)
ジャンルレゲエ / ヒップホップ(クロスオーバー)
特記事項韓国レゲエ音楽の先頭走者

■ メンバー

Skull(スカル)|本名チョ・ソンジン|レゲエの伝道師
1979年生まれ。
グループのレゲエ色を担った天声の主。
中央大学のヒップホップサークル出身で、もともとは女性ラッパーのイェソルと「DAGGAZ」というデュオで活動していた。
あのボブ・マーリーを思わせる「天性の声」が、レゲエに愛されている。
(デビュー当時はSkul1表記、後にSkullに)

KUSH(クシ)|本名キム・ビョンフン|YGの心臓部になった男
1984年生まれ。
グループのヒップホップ色を担った。
初期は「Shader」の名で、18歳の頃にキム・ジンピョのアルバムに客演するなど、ラップ畑の人だった。
そして後述するが、Stony Skunk解散後、彼は韓国ポップ史を動かす作曲家へと変貌する。

二人は、幼い頃から同じ教会に通っていた仲。
Skullが組んでいたDAGGAZが、きちんとしたアルバムを一枚も出せずに1年で解散したそのとき、教会で兄弟のように過ごしていた二人が音楽で意気投合し、Stony Skunkが生まれた。

ちなみに、本当は3人組になるはずだった。
A-Dustというラッパーを加えた3人で準備していたが、1集のとき、事務所が「2人で出せ」と強く求めて、A-Dustが外れた。
彼は今も「幻の第3のメンバー」と呼ばれている。


■ YGへ 倒産、そして「100%レゲエでいこう」

アンダーグラウンドで独特な音楽をやってきた二人は、2003年、正規1集『Best Seller』を発表する。

レゲエとヒップホップをハイブリッドにクロスオーバーさせた、新鮮で画期的なサウンド。
注目はされたが、大きな反響には至らなかった。
おまけに、追い打ちをかけるように、所属事務所が倒産してしまう。

失意のどん底。
そこに手を差し伸べたのが、YGエンターテインメントだった。

当時、YGは「YG Underground」という新事業を始めようとしていて、Stony Skunkと契約する。
ここで、伝説的なやりとりがある。

二人が、まだ発表していなかったレゲエヒップホップの音源をヤン・ヒョンソク社長に聴かせた。
すると社長はこう言った。
「前から君たちを見てたんだ。曲もいい…よし、100%レゲエでいってみよう」。

やってみたいけど、本格的にやったことはない。
不安もあった。
でも、この一言で、二人は腹を括る。
このときから、Skullの声は、僕らが知っているあの「しゃがれ声」へと変わっていった。

そして2005年、正規2集『Ragga Muffin』を発表する。


■ 「麻薬のような音楽」 届く人には、強烈に届いた

『Ragga Muffin』は、TVの音楽番組にも出て、メディア露出も増えた。
でも、レゲエという馴染みのなさのせいか、大衆には「なんとなく中途半端な音楽」という印象しか残せなかった。

ところが、届く人には、強烈に届いた。

ヤン・ヒョンソクは、こう評した。
「Stony Skunkの音楽は、麻薬のようだ」。

そして、こんな逸話がある。
日本のm-floのVERBALが、韓国でこのアルバムを聴いて衝撃を受け、なんと数百枚を買い込んで、日本中に配ったという。

大衆には刺さらなくても、本物が聴けば分かる。
そういう音楽だった。


■ アルバムで追う

1집『Best Seller』(2003)
レゲエの要素を混ぜた、大衆的なヒップホップに近い一枚。
この頃のSkullの声は、まだしゃがれておらず、地声に近い。

2집『Ragga Muffin』(2005)
YG移籍後、1集とは真逆の「ヒップホップ色を帯びたレゲエ」へ。
タイトル曲「Boom Di Boom Di」は、後にSkullが英語版でアメリカに渡り、ビルボードのR&B/ヒップホップ・シングルチャート上位に食い込んだ(3位という記録もある)。
韓国で彼を知る人は少ないまま、太平洋の向こうで名を刻んだ。

3집『Skunk Riddim』(2006)
完璧に近いスタイルとサウンドで、さらに深いレゲエを披露。
タイトル曲は、レゲエの伝説ボブ・マーリーの「No Woman No Cry」をリメイク。
ヒップホップの名門ガリオン(가리온)が客演した、Stony Skunk唯一の「YG外部客演曲」も収録されている。

4집『More Fyah』(2007)
レゲエの文法を保ちつつ、ヒップホップ色がさらに強まった。
そして、この4集には名曲中の名曲がある。
「홍등/ホンドゥン(紅燈)」。
遊郭で出会った一人の女性の数奇な物語を通して、性売買の現実を描いた、社会派の一曲だ。
レゲエが本来持っている「社会への眼差し」が、ここに宿っている。

この4集のあと、Skullが兵役に入る。
そして、二人の運命が、静かに分かれ始める。


■ 音楽的特徴と、レゲエという「自由」

Stony Skunkは、最初からはっきりしていた。
Skullはレゲエ色、KUSHはヒップホップ色。
その二つの感覚が、絶妙に溶け合っていた。

そして、彼らの音楽を語るうえで、避けて通れないものがある。
大麻(マリファナ)だ。

実は、グループ名の「Stony」も「Skunk」も、どちらも大麻にまつわる英語の俗語。
Stonyは大麻でほろ酔いになった状態、Skunkは香りの強い高級大麻を指す。
彼らの歌詞には、大麻をテーマにした曲が少なくない。

でも、これは不良の自慢話じゃない。
レゲエという音楽は、ボブ・マーリー以来、大麻を「自由・抵抗・平和」の象徴として扱ってきた。
レゲエと大麻は、切っても切れない文化的な関係にある。
Stony Skunkが歌ったのは、そのレゲエ文化そのものへの忠誠であり、一種のコンセプトだった。

ある意味、YG所属のアーティストの中で、最もアンダーグラウンドな音楽をやっていたのが、彼らだった。
攻めて、毒を吐いて、やりたい放題。
その自由さこそが、Stony Skunkの魅力だった。
追加セクションを書きます。


■ ヒップホップらしい余興 タブロとのディス戦

Stony Skunkを語るなら、ヒップホップらしい「ディス戦」の話も外せない。

事の発端は、クルー同士の対立だった。
当時、Tiger JKやDynamic Duoらが所属する名門クルー「Movement(ムーブメント)」と、YG勢は、あまり仲が良くなかった(▶ ドランクンタイガーと僕。)。

きっかけは、Dynamic Duoのチェジャ(최자)が、Stony Skunkと親しいMCスナイパーをディスした一曲。
これに反応したStony Skunkが、「Buffalo」という曲で、チェジャをはじめMovementのメンバーを強烈にディスし返した。
Skullのバースはチェジャを、KUSHのバースはDouble Kを撃つ、という構図だったと言われている。

ここから、火がつく。

2008年、Epik Highのタブロ(Tablo)が「Eight by Eight」で反撃(客演はMovementのメンバーで固められていた)。
2012年、SkullがSwingsを迎えた「Buffalo 2012」で、タブロを再びディス。
するとタブロが「THE CYPHER 2012」で、「ポロロ(子ども向けアニメ)がお前の友達だ」と返す。
さらにSkullは、タブロがプロデューサーを務める『Show Me The Money 3』に客演で登場し、「タブロも俺を止められない」と、目の前でディスをかましてみせた。

…なんとも、自由でヤバい二人組らしい。

でも、この話には、最高のオチがある。

ぐるぐる巡って、ディスし合っていたタブロとEpik Highは、KUSHのいるYGに加入することになる。
そしてSkullは、後のインタビューでこう明かした。

「タブロをディスるために、タブロの音楽をめちゃくちゃ聴いた。
そうしたら、本気で好きになって、ファンになっちゃった」。
「ディス戦って、手紙が来たら返事を返すような感じ。恨みとか悪感情なんて、まったくない」。

攻めて、毒を吐いて、最後は笑って握手する。
ヒップホップって、こういうところが粋なんだと思う。
Stony Skunkは、音楽でも、ディスでも、最後まで「自由でちょっとヤバい二人組」だった。


■ 解散、そしてそれぞれの道

Skullの除隊が近づくにつれ、多くのレゲエファンが新しいアルバムを待ち望んだ。

しかし、その期待とは裏腹に、SkullとYGの契約が満了。
SkullはYGを離れ、2010年8月12日、Stony Skunkは事実上の解散を迎えた。

でも、ここで終わらないのが、この物語の美しいところだ。
二人は、別々の道で、Stony Skunkの魂を受け継いでいく。

Skull ―― 韓国レゲエの、伝道師として

Skullは自ら「사자 레코드/サジャ レコドゥ(Lion Records)」を設立。
実力派ぞろいのレーベル「ブランニュースタダム」と組み、本格的に国内活動を始めた。
ソロ正規1集『KING O’ IRIE』をはじめ、数々の作品を発表。

そして、お茶の間に名前を知らしめたのが、ハハ(하하)とのコンビだ。
『無限挑戦』で共演したのをきっかけに、二人は「레게 강 같은 평화/レゲ ガン ガトゥン ピョンファ(レゲエ川のような平和)」というプロジェクトを組み、今も活発に活動している。
韓国でレゲエといえばSkull。
その地位を、彼は守り続けている。

KUSH ―― YGの、心臓部として

一方のKUSHは、芸名を「E.nock」に変え、歌手活動をやめてYGの作曲家・プロデューサーになった。

ここからが、本当にとんでもない。


■ 「Soda Pop」までの、壮大な伏線回収

KUSHが作曲・プロデュースした曲を、少しだけ並べてみる。

  • 2NE1「I Don’t Care」「박수쳐/パクスチョ」「Lonely」
  • BIGBANG「TONIGHT」「WE LIKE 2 PARTY」「봄여름가을겨울/ボンヨルンガウルギョウル」
  • G-DRAGON「Hello」「HOME SWEET HOME」
  • TAEYANG「나만 바라봐/ナマン バラブァ」「VIBE(feat. Jimin of BTS)」
  • Zion.T「양화대교/ヤンファテギョ」
  • BLACKPINK、iKON、izna…

そして、2025年、世界を席巻したNetflix映画『K-POP Demon Hunters(ケイポップ・デーモンハンターズ)』。
あの「Soda Pop」「Your Idol」も、KUSHの手によるものだ。

冷静に考えてほしい。

誰も知らないアングラのレゲエデュオで、大麻のことを歌っていた男が。
YGの心臓部に入り込み、2NE1を、BIGBANGを、BLACKPINKを作り。
ついには、世界中が口ずさむK-POPの2025年最大の現象まで作ってしまった。

Skullがレゲエの「天声」を守り、KUSHがヒットメーカーの才能を爆発させる。
1集で「SkullはReal Reggae、KUSHはReal Hiphopに自信がある」と歌った二人は、その言葉どおり、それぞれの頂点へたどり着いた。

しかも、KUSHがプロデュースする曲には、今もダンスホール調のレゲエの香りが濃く滲む。
Stony Skunkとしてのアイデンティティを、彼は形を変えて、ずっと引き継いでいる。
後にKUSHは、1TYM出身のTeddyとともにYG傘下のレーベル「The Black Label」を立ち上げる(▶ 1TYMと僕。)。
アングラのレゲエが、巡り巡って、今のK-POPの中心に流れ込んでいる。


■ K-POP史における位置づけ

Stony Skunkの功績は、二つある。

ひとつは、韓国に「レゲエ」という音楽を、本気で根付かせたこと。
ヒップホップにドランクンタイガーがいたように、レゲエにはStony Skunkがいた(▶ ドランクンタイガーと僕。)。
マイナーなジャンルを、一流のクオリティでやり切った先頭走者だった。

もうひとつは、KUSHという作曲家を世に送り出したこと。
YGは、Stony Skunkを通じてレゲエのプロデュースのノウハウを得て、それが2NE1をはじめとする後輩たちのサウンドに影響を与えた。
ダンスホール調のあのグルーヴは、もとをたどればStony Skunkに行き着く。

売れたグループではなかったかもしれない。
でも、残したものは、とてつもなく大きい。


■ おすすめ楽曲

2집タイトル曲「Boom Di Boom Di」

あなたが僕を置いていくと歌う、この歌。
あなたが僕を置いていくのなら、僕は眠れないでしょう。

4집「행복해요(幸せです)」

あなたよ、僕を離れて行って、そのまま幸せでいてください。
あなただけ、ただそんなふうに、あなたが幸せになればいいんだ。

4집「웃기만 하네요(笑っているだけ)」

何事もなかったかのように、あなたは笑ってばかりだね。
ぶくぶく腫れたあなたの瞳が、物語ってるね。あなたの痛みを、今のあなたを。

(歌詞は意味を日本語に訳したもの。原曲はSpotify/YouTubeで)


■ ディスコグラフィー(主要作)

タイトル特記記事
1집Best Seller2003デビュー・レゲエ混じりのヒップホップ準備中
2집Ragga Muffin2005YG移籍・「Boom Di Boom Di」準備中
3집Skunk Riddim2006「No Woman No Cry」・ガリオン客演準備中
4집More Fyah2007「홍등」・最終作準備中

■ 余談

グループ名の「Stony」も「Skunk」も、実は大麻にまつわる俗語。
名は体を表す、とはこのことだ。

歌手のパク・ヒョシンが、Skullの大ファンを公言している。
意外な組み合わせだが、声の説得力でつながっているのかもしれない。

Skullは長年レゲエをやり、ジャマイカとの交流も多いため、ジャマイカのパトワ(方言)を操れる。
『無限挑戦』では、ジャマイカ観光省の次官とフリートークが成立したほど。

幻の第3メンバーA-Dustとは、KUSHが今も交流があり、2017年の曲に客演で参加している。


■ マルのひとこと

結局のところStony Skunkは、思ってる以上に自由で、そしてちょっとヤバい二人組だったのかもしれない。

Bob Marleyを彷彿とさせる天声と、天性のヒットメーカーが、ビシッと決める。
二人が合わさると、聴いててニヤッとしてしまうような、なんとも言えない”ちょうどいい反応”が出ているのだろう。

攻めてみたり、思い切り毒を吐いてみたり。
やりたい放題。
それが魅力。

正直、Stony Skunkを知ってる人は韓国でもそんなに多くない。
でも、レゲエを好きな人たちには知ってほしい存在だ。

僕はこう思う。
世の中に”聴くべき音楽”は数あれど、たまにこういう”音”を無性に欲する瞬間が来る。
Stony Skunkは、まさにそれなんじゃないかなって。
ただ体が揺れるやつ。

だからここまで読んでくれたあなたへ。
レゲエ好きのみなさん。
興味を持ってくださった皆様。
今すぐSpotifyでもYouTubeでも飛んで聴いてほしい。

Ragga Muffinに疑いなし。

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