▶ アーティストページ:Epik High
6집「e」というアルバムタイトルは、何のことかしばらくわからなかった。
後でメンバーの一人が「emotion」の頭文字だと言っていた。
感情、の一文字。
そのミニマルさがこのアルバムに合っている。
- 目次
- 01 Oceans. Sand. Trees.
- 02 Slow Motion
- 03 선물ソンムル (Gift) feat. Park Ji-yoon
- 04 No More Christmas
- 05 Maze feat. Dumbfoundead, MYK
- 07 트로트トゥロトゥ (Trot)
- 08 Emologue
- 09 Excuses feat. MYK
- 10 Moonwalker
- 11 Breathe feat. 한희정ハンヒジョン (Han Hee-jung)
- 12 Happy Birthday to Me feat. 하동균ハドンギュン (Ha Dong-gyun)
- 13 Heaven feat. MYK
- 14 Owls. Shadows. Tears.
- Disc 2 / 01 Orchestras. Spotlights. Turntables. feat. MYK
- Disc 2 / 02 Still Here feat. Dok2
- Disc 2 / 04 따라해ッタラヘ/Wannabe feat. Mellow
- Disc 2 / 05 Rocksteady feat. Kero One, Dumbfoundead, MYK, Rakaa (Dilated Peoples)
- Disc 2 / 06 Madonna feat. Mellow
- Disc 2 / 07 말로맨マロメン (Malloman)
- Disc 2 / 08 Shopaholic
- Disc 2 / 09 Supreme 100
- Disc 2 / 10 High Technology
- Disc 2 / 11 Rocksteady (Korean Version) feat. Paloalto, Dok2, Beatbox DG, Beenzino
- Disc 2 / 12 High Skool Dropout (반항하지バンハンハジ 마)
- Disc 2 / 13 흉ヒュン (Whitetip) feat. MYK, YDG, Dok2
- Disc 2 / 14 Lesson 4
- Disc 2 / 15 Organs. Screams. Televisions.
- マルのひとこと
目次
- マルのひとこと
「1분 1초/1分1秒」はこのアルバムの中で一番切ない曲だと思う。
「어딜 봐도 네 모습이 보이고/どこを見ても君の姿が見えて」
「숨길/スムギル 수가 없어/隠しようがない」
「baby, 단 1분 1초도/ただ1分1秒も」
I can’t let go。
タルの柔らかいボーカルと、TabloとMithraのラップの対比が、忘れたいのに忘れられない感情を音にしている。
恋愛依存の苦しさを「隠せない」「忘れられない」という反復で体現した曲。
頭ではわかっているのに、体が動かない。
そういう経験をしたことがある人には、一発で刺さる。
「It’s Cold(춥다)」も、このアルバムの空気を決定づけた。
「누군가의 품에/プムエ 안겨있을 때도/誰かに抱かれているときでさえ」
「맘의/マムウィ 구멍을 막아보려 해도/心の穴を塞ごうとしても」
「바람은/バラムウン 계속 들어와/風はずっと入り込んでくる」
Lee Hiの「춥다/寒い」という一語の繰り返し。
物理的な温かさでは埋まらない心の空洞を、たった一言で表してしまった。
01 Oceans. Sand. Trees.
Disc 1「[e]motion」を開幕する、自然の三要素を並置したイントロダクション的楽曲。
海、砂、木。
これらは感情の原風景として機能し、言葉ではなくイメージで聴き手をアルバムの世界へ引き込む。
[e]が目指した「感情の実験」の最初の一手として、サウンドスケープを丁寧に構築している。
フレーズの断片が重なりながら空間を埋めていく構造は、アルバム全体を貫く実験精神の予告編だ。
Tabloの声が自然の中を歩くように流れ、リスナーは「ここから始まる旅」の気配を感じ取る。
02 Slow Motion
スローモーションの映像を見るように、一瞬一瞬を引き伸ばして感じることを求める一曲。
日常が猛スピードで過ぎ去っていく中で、意図的に速度を落とし、見過ごしていたものを発見する。
そのような聴取体験を音楽的に具現化している。
ビートそのものもゆっくりとした呼吸感を持ち、歌詞とサウンドが一体となっている。
エピカイの楽曲の中でも特に瞑想的な部類に属し、Disc 1「[e]motion」のコアにある「感情を丁寧に扱う」という姿勢を体現する。
忙しなく消費される音楽文化への静かな抵抗でもある。
03 선물ソンムル (Gift) feat. Park Ji-yoon
パク・ジユンの温かみのある歌声が全体を包む、[e]の中で最も親密な一曲。
贈り物というテーマを通じて、誰かの存在そのものが人生における奇跡であることを語る。
ラップと歌が交互に現れる構成は、言葉による理解と感覚による理解の両方を手渡すようだ。
パク・ジユンは2000年代の韓国ポップシーンを代表するアーティストで、彼女の参加がこの曲にふくよかな感情の重みを与えている。
エピカイの重たい社会性とは異なる側面(純粋な感謝と愛情)を正面から描いた、Disc 1の安らぎの場所だ。
04 No More Christmas
クリスマスを拒絶するタイトルが印象的なトラック。
商業化されたホリデーシーズンへの皮肉かもしれないし、「もう一緒に祝う相手がいない」という喪失の表明かもしれない。
どちらにも読める多義性がある。
エピカイはこのような社会批評と個人的痛みの交差を得意とし、この曲でも二つの層が重なっている。
サウンドはクリスマスらしい明るさとは対照的に、くすんだトーンで展開する。
祝祭を讃えるのではなく、その外側に立つ者の視点から描くことで、孤立感と疎外感を鮮明に浮かび上がらせた一曲。
05 Maze feat. Dumbfoundead, MYK
迷宮。
出口のない回廊を彷徨う感覚を、Dumbfoundead(韓国系アメリカ人ラッパー)とMYKがTabloと共に描く。
三者がそれぞれ異なるアクセントと文化的背景を持ち、迷路の「多様な壁」を象徴するような国際的な布陣だ。
人生における選択の複雑さ、音楽業界の不透明さ、アイデンティティの混乱。
これらが「迷宮」というイメージに収斂する。
Dumbfoundeadは特に自身の移民的バックグラウンドを投影し、所属する場所を持たない感覚をラップに乗せる。
エピカイが築いてきた韓国と北米をつなぐ架け橋的ポジションが、このコラボレーションに凝縮されている。
07 트로트トゥロトゥ (Trot)
韓国の伝統的大衆音楽「トロット」とヒップホップを融合させた実験的作品。
トロットは1930年代から愛される演歌的な歌謡ジャンルで、現代の若者文化からは距離を置かれがちだった。
しかしエピカイはこのジャンルをあえて取り込み、世代間の断絶を軽やかに飛び越える試みを行う。
[e]が「ヒップホップの実験」を標榜したアルバムである以上、このような越境は必然的だった。
トロット特有の揺れるメロディーラインとラップの組み合わせは奇妙でありながら懐かしく、聴き手の文化的記憶を揺さぶる。
2009年当時この試みは挑戦的に受け取られたが、後のKポップにおけるジャンル融合の先例ともなった。
08 Emologue
「Emotional Monologue(感情的独白)」を縮めた造語タイトルを持つ、Tabloの独り語り。
Disc 1「[e]motion」の中核となるトラックで、感情を観察し言語化することへの強迫的な衝動を、ラップではなく散文的な語りに近い形式で表現する。
過剰なビートを排し、声と言葉だけで聴き手の内側に直接届こうとする。
自分の感情を解析し続けることの消耗と、それでも止まれない創作者の性。
このテーマはTabloの後の作品でも繰り返し現れ、「Emologue」はその原型となった。
韓国ヒップホップにおける最も私的なモノローグ作品の一つだ。
09 Excuses feat. MYK
MYKと共に「言い訳」の構造を解剖する一曲。
人は変化を恐れるとき、先延ばしにするとき、他者を傷つけたとき。
様々な場面で言い訳を生産し続ける。
TabloとMYKはその行為を俯瞰から観察しながら、自分たちもその連鎖から逃れられないという自己矛盾を正直に認める。
MYKはバイリンガルのラッパーとしてエピカイとのコラボを多く手がけており、この曲でも英語と韓国語を交差させながらテーマを多角的に照射する。
言い訳をやめることよりも、言い訳を理解することの方が先にある。
という認識が、曲全体の底流にある。
10 Moonwalker
2009年6月25日に急逝したマイケル・ジャクソンへのオマージュ。
[e]が同年9月にリリースされたことを考えると、このトラックはMJの死から間を置かずに制作されたと見られる。
「ムーンウォーカー」はMJの代名詞的なダンスムーブであると同時に、月面を歩くという宇宙的なイメージを持つ言葉でもある。
TabloはMJを単なるポップアイコンとしてではなく、孤独の中で完璧を追求した一人の人間として描く。
世界中に愛されながらも本質的に孤立していたアーティスト。
そのパラドックスはエピカイ自身の経験とも重なる。
哀悼でありながら、偉大さと孤独の共存に対する深い共感が込められた一曲。
11 Breathe feat. 한희정ハンヒジョン (Han Hee-jung)
呼吸する、ただそれだけを命令形で告げるタイトル。
한희정の柔らかく揺れるボーカルがTabloのラップを包み込み、「生きることの最小単位」に焦点を当てた一曲。
深呼吸できているなら、まだ生きている。
その単純な事実に、絶望の縁に立つ者への力強いメッセージが込められている。
한희정は韓国のインディーポップ界を代表するアーティストで、彼女のフォーキーなサウンドがエピカイの都市的ヒップホップと交差する瞬間が、この曲の最も美しい部分だ。
「Pieces Part One」での「Be」と対になるような、存在肯定の一曲として機能している。
12 Happy Birthday to Me feat. 하동균ハドンギュン (Ha Dong-gyun)
自分自身に捧げる誕生日の歌という逆説的な構成。
하동균の甘美なテノールで歌われる「おめでとう」は、しかしどこか空洞感を伴う。
また一年が過ぎた。
何かが変わったか、何かを達成したか、それとも何も変わらないまま年だけ重ねたのか。
祝福と自省が同居するバースデーソングだ。
하동균はSBSスター系のメインストリームボーカリストとして知られ、彼の参加がこの曲に大衆的な親しみやすさをもたらしている。
エピカイがしばしば取り上げる「時間の経過と変化の不在」というテーマを、誰もが経験する誕生日という普遍的フォーマットで表現した。
13 Heaven feat. MYK
Disc 1の締めくくりに向かう一曲。
MYKと共に「天国」という概念を問い直す。
宗教的な意味での来世ではなく、生きている間に触れることのできる瞬間的な幸福、他者との繋がりの中に見出される救い。
そのようなより世俗的な「天国」を語る。
「Oceans. Sand. Trees.」で始まったDisc 1の旅が、ここで一つの高みに至る。
苦しみの感情([e]motion)を丁寧に掬い上げながら歩んできた旅の到達点として、「Heaven」は過度に甘くならず、地に足のついた希望として機能する。
14 Owls. Shadows. Tears.
フクロウ、影、涙。
Disc 1を閉じる夜の三要素。
フクロウは夜行性の知恵の象徴であり、影は見えないものの存在を示し、涙は感情の物理的な表出だ。
この三つを並置することで、Disc 1「[e]motion」が取り組んできた感情の世界を静かに総括する。
長大なDisc 1の最後の光景として、このトラックは音楽を止め、沈黙の手前でリスナーを置き去りにするような効果を持つ。
「Oceans. Sand. Trees.」で自然から旅を始め、「Owls. Shadows. Tears.」でより内省的な自然のイメージに辿り着く。
その円環がDisc 1を一つの作品として完結させる。
Disc 2 / 01 Orchestras. Spotlights. Turntables. feat. MYK
Disc 2「[e]nergy」の幕開けを告げる、舞台的イメージの三要素。
オーケストラ、スポットライト、ターンテーブル。
クラシック音楽とクラブ、二つの舞台装置が一つのフロアに集まる光景だ。
Disc 1の私的で内省的な感情世界から打って変わり、ここからは外に向かうエネルギーが主役となる。
MYKのバイリンガルな発声が異文化の橋渡しをしながら、楽曲に高揚感を生む。
エピカイが掲げた「ヒップホップの実験」の、もう一つの側面(パフォーマンスとしての音楽)がここから展開される。
Disc 2 / 02 Still Here feat. Dok2
Dok2を迎え、「まだここにいる」という宣言を繰り返す一曲。
批判され、否定され、業界の変化に飲み込まれそうになりながらも、自分たちはまだ立っているというアーティストとしての矜持を歌う。
Dok2のシャープなフロウがTabloの言葉に鋭利な刃を与える。
Dok2は2000年代後半の韓国アンダーグラウンドヒップホップを代表するラッパーであり、彼の登場がDisc 2のエネルギーレベルを一段引き上げる。
「まだここにいる」という言葉のシンプルさが、長年の戦いを潜り抜けてきた者の重みを帯びる。
Disc 2 / 04 따라해ッタラヘ/Wannabe feat. Mellow
[e]のリードシングル。
「따라해」は「真似しろ」という命令形で、ウォナビー(なりたがり屋)文化への痛烈な皮肉を込めつつも、キャッチーなメロディーラインでポップな装いを持つ。
Mellowのフックが耳に残り、当時の韓国音楽チャートで高い支持を得た。
他人の真似をすることで自分を失っていく現代社会のパターンを、あえて「やってみろ」と挑発することで批判する逆説的アプローチ。
エピカイのシングルらしく、批評性と大衆性を両立させた一曲であり、アルバム全体の商業的な入り口として機能した。
Disc 2 / 05 Rocksteady feat. Kero One, Dumbfoundead, MYK, Rakaa (Dilated Peoples)
韓国、アメリカ、そしてアジア系ディアスポラのラッパーが一堂に会す国際的な大シファー。
Kero One、Dumbfoundead、MYK、そしてDilated PeoplesのRakaaというキャスティングは、2009年時点での韓国ヒップホップの国際的ネットワークを象徴している。
「Rocksteady(揺るぎない)」というタイトルが示す通り、どんな状況でも基盤を保ち続けることを誓う。
各ラッパーのアクセント、言語的背景、文化的参照点が異なりながら、同じビートの上で共鳴する様子は、ヒップホップが国境を越えて人々をつなぐ力の具体例だ。
後に韓国語バージョンも制作されたことが、この楽曲の重要性を物語っている。
Disc 2 / 06 Madonna feat. Mellow
「マドンナ」というタイトルはキリスト教的な聖母像とポップカルチャーの女王という二重の含意を持つ。
Mellowのフックが甘く絡む中、Tabloは崇拝と執着、理想化される女性像への複雑な感情を語る。
完璧な存在への憧れと、その不可達性。
愛することと偶像化することの違いを問う一曲だ。
「따라해」に続くMellowとの二度目のコラボレーションで、Disc 2のポップな核のひとつを形成している。
サウンドはメロウなR&Bビートを基調とし、ヒップホップと歌の境界を意図的に曖昧にしながら展開する。
Disc 2 / 07 말로맨マロメン (Malloman)
「말로만」は韓国語で「言葉だけで(行動を伴わない)」という意味を持つ。
口だけで動かない人物、約束を言葉で連発しながら何も実現しない者。
その姿を「말로맨」というキャラクターに仮託して批判する。
日常的な言い訳と空約束の文化を、ユーモアを交えながら切り取る。
社会批評でありながら、口の達者なラッパー自身の自己言及的なアイロニーも感じられる。
言葉を武器にする職業として、言葉の空虚さについて語るという二重性が、この曲を単純な批判以上の深みに押し上げている。
Disc 2 / 08 Shopaholic
消費主義と買い物依存症を題材にした社会派ナンバー。
「買う」という行為で感情的空虚を埋めようとする現代の消費文化を観察し、購買衝動の背後にある「何かが足りない感覚」を解剖する。
エピカイらしく、説教調にならず、むしろ当事者の視点から内側の論理を追いながら描く。
Disc 2が持つ「外向きのエネルギー」の中で、この曲は都市生活における孤独と充填の試みを描く社会的スケッチとして機能する。
軽快なビートと皮肉の効いた歌詞のコントラストが、聴き手の笑いと反省を同時に引き出す。
Disc 2 / 09 Supreme 100
「至高の100」というタイトルが示す自信と自負心。
エピカイがヒップホップのバースト精神を正面から打ち出した楽曲で、自分たちの音楽の質と業界内のポジションへの確信を言葉にする。
韓国ヒップホップのピラミッドの頂点を宣言するような攻撃性が全編を貫く。
「Shopaholic」や「Madonna」の批評的姿勢から一転、このトラックではエピカイ自身の誇りと自己主張が前面に出る。
Disc 2のエネルギーが最大化する瞬間の一つであり、ライブでの高揚感も想起させるアグレッシブな一曲。
Disc 2 / 10 High Technology
テクノロジーの高度化が人間関係と感情にもたらす変化を問う2009年の問題提起。
スマートフォン以前の時代における携帯電話・インターネット・デジタルメディアの急速な普及が、コミュニケーションを便利にする一方で何かを失わせているのではないかという懸念が底流にある。
15年以上後の今読み返すと、この問いは一層切実だ。
テクノロジーが人間の感情を媒介する方法を変え続けている時代において、エピカイの2009年の観察は先見的だった。
電子音と有機的なビートを組み合わせたサウンド設計も、テーマと呼応している。
Disc 2 / 11 Rocksteady (Korean Version) feat. Paloalto, Dok2, Beatbox DG, Beenzino
英語バージョンに続き、韓国のアンダーグラウンドラッパーたちで構成された国内版サイファー。
Paloalto、Dok2、Beatbox DG、そして若きBeenzinoが揃う布陣は、2009年当時の韓国ヒップホップシーンの精鋭集結を意味した。
特にBeenzinoにとってこのような形での登場は、彼が後に辿る道筋を早期に示すものでもある。
英語版と比較しながら聴くと、同じ「揺るぎなくあれ」というテーマが異なる文化的コンテクストの中でどう表現されるかが浮かび上がる。
韓国語の響きとフロウが生む固有の緊張感が、英語版とは別の魅力を生んでいる。
Disc 2 / 12 High Skool Dropout (반항하지バンハンハジ 마)
サブタイトル「반항하지 마」は「反抗するな」という命令形。
高校中退(High Skool Dropout)という行為が反抗の象徴である一方、「反抗するな」と命じることで生まれる逆説が核心にある。
システムに従い続けることの空虚さと、そこから逸脱することの代償。
その二項対立をユーモラスかつシリアスに描く。
エピカイ自身が既成の音楽産業の枠に収まらないことを選んできたアーティストであることを踏まえると、この曲は彼ら自身の来歴への自己言及でもある。
「正しくドロップアウトするための方法」を逆説的に語る、知的なヒップホップの一曲だ。
Disc 2 / 13 흉ヒュン (Whitetip) feat. MYK, YDG, Dok2
「흉」は傷跡、欠点、醜さを意味する言葉。
「Whitetip」はホワイトチップシャーク(白鰭サメ)を連想させる副題で、水面下の危険と傷の痕跡というイメージが重なる。
MYK、YDG(양동근)、Dok2という三者が参加し、それぞれの「欠落」や「傷」を言葉にする。
完璧さを偽ることをやめ、傷だらけの自分のまま立つという宣言がこの曲の主題だ。
エピカイのアルバムで繰り返されてきた「不完全さの肯定」というテーマが、このトラックでより荒々しく、よりリアルな形で表れている。
Disc 2 / 14 Lesson 4
エピカイの「Lesson」シリーズ第4弾。
各アルバムに一つ置かれるこのシリーズは、ヒップホップを「学問」として捉えるエピカイの哲学の体現だ。
教訓(Lesson)という言葉を逆手に取り、音楽が社会のあり方を問い直す場であることを宣言する。
第4の教訓として何が語られるかは、アルバム全体を経て辿り着いた場所から問い直す。
[e]が実験した感情(emotion)とエネルギー(energy)の旅の末に得られた洞察。
それが「Lesson 4」として結晶化している。
シリーズを通じて聴くことで、エピカイの思想的深化が見えてくる。
Disc 2 / 15 Organs. Screams. Televisions.
内臓、叫び声、テレビ。
[e]を閉じる最後のイメージ三連。
「Oceans. Sand. Trees.」で始まったアルバムが、有機的な自然のイメージから、肉体の内側と暴力的なメディアのイメージで終わる。
この変化がアルバム全体の旅を示している。
自然の純粋さから、人間社会の複雑さと生々しさへの降下。
テレビは情報と感情を一方向に垂れ流すメディアとして、叫びは生命の根源的表現として、臓器は存在の物理的現実として並置される。
30曲にわたる実験の末に、エピカイが最後に投げ出す三つの言葉は、問いかけであり、宣言でもある。
マルのひとこと
「High Technology」を2009年に書いたTabloが、今この時代を見たらどう思うだろうと考えることがある。
テクノロジーが感情を変えるという予感は、あの頃すでに正しかった。


